香典返し | 金額相場や人気の品物、挨拶状の書き方などのマナーを解説
頂いたらお返しをする事は、どんな場面においても礼儀ですよね。それは葬儀の場においても同じです。
香典は故人や遺族への弔意として贈られてきたものです。故人への気持ちとしていただいたものには、故人に代わって丁寧に応える必要があります。今回は香典返しについて説明します。

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目次
香典返しとは
香典返しとは葬儀の際に香典を贈ってくださった参列者の方に対する、喪主や遺族からの返礼品やそのしきたりのことをいいます。
香典返しは香典を頂いたことに対してのお礼ではありますが、せっかく贈るのであれば「生前の付き合いへの感謝」「滞りなく弔事を終えたことの報告」など気持ちも込めて準備をしましょう。お葬儀が終わった後は、手続きや気持ちの整理などで毎日が慌ただしく進みます。「香典返しをうっかり忘れてしまっていた」なんてことが無いように気を付けてください。
会葬御礼品との違いに注意
会葬御礼品と香典返しは似ているので混同される方も多いですが、意味合いが異なります。
会葬御礼品は「通夜や葬儀に参列した事へのお礼」として渡されるものです。参列へのお礼なので、香典の有無に関わらず一人ひとりに会葬礼状と共に渡されます。大体1,000円程度の物が用意されることが多いです。
一方で香典返しは香典(お金)を頂いたことに対する返礼なので、香典を持参した方にのみ渡します。香典として包まれていた金額に見合ったものが用意されます。
会葬御礼品と香典返しは全く別物なので、どちらか片方で良い訳ではありません。
香典を受け取る場合はどちらも用意しましょう。
▼会葬御礼について詳しく知りたい方はコチラ
香典返しをおくる時期
香典返しには「無事に弔事を終えることができた報告」の意味があるため、仏式では三十五日や四十九日など忌明けを終えた後に贈るものとされてきました。このように忌明け後に香典返しを行う方法を「忌明け返し」や「後日返し」といいます。
一方で、最近では通夜や葬儀にて香典を出されたらすぐに返す方法が増えてきました。このように通夜葬儀の場で香典返しを行う方法を「即日返し」といいます。
即日返し
即日返しの方法は、地域によって様々です。
香典を受け取ったらすぐに香典袋を確認し金額に見合った品を返す方法と、金額に関わらず一律の品を返す方法があります。
香典袋の中をその場で確認するにはそれなりに時間がかかってきますので、手間取ってしまい参列者に迷惑をかけることがあります。また、金額に見合った品を返すために、香典返しの品を数種類用意する手間もかかります。
一律の品を返す方法は、2,000円~3,000円程度の香典返しを準備します。一般的に香典返しはいただいた香典の半分の金額でお返しをすることがマナーであるため、親族などから高額の香典をいただいた場合は「香典返しの金額が足りない」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
通常、高額の香典をいただいた場合は、後日別で金額に見合う品物をお返しをすることになります。葬儀当日にお渡しした品物と合わせていただいた香典の半額となるようにすれば問題ありません。
即返しの方法には地域性がありますが、葬儀後の手間を省くことができることに変わりはありません。
即日返しのメリット
近年は通夜や葬儀の場で香典返しを行うことが増えてきています即日返しのメリットとしては、その後の負担が減る点です。葬儀後の精神的にも体力的にも疲れている状態で、香典を整理し、お品を選び、発送手続きをすることは、遺族にとって負担といえます。
忌明け返し
香典返しの一般的な方法は、忌明け法要後にお返しをする方法です。
香典を頂いたらその場でお返しを行う即日返しは、用意された品を返すことになるため、人によっては不要な物になったり、多少の香典金額の差があっても同一の品になったりしますが、忌明け返しは、一人ひとりに見合った品をじっくり考えて選ぶことができます。
かつては手渡しで渡していましたが、現代は郵送で、挨拶状を添えて渡します。即日返しと比べて手間が増えますので、対応可能かどうかを考慮してお返しの方法を決めましょう。
仏教の場合
仏教の場合は、故人が亡くなってから三十五日もしくは四十九日後に行われる忌明け法要から、一か月の間に香典返しを行います。香典返しの表書きには「志」と書きます。
「香典」は部供用後で、仏前に供えるお香を意味しています。「香典返し」という言葉も仏式のみで使用します。これから解説しますが、キリスト教、神道、その他の宗教では「香典返し」という言葉は使用しませんのでご注意ください。
キリスト教の場合
キリスト教では香典は贈りません。香典の代わりに「御花料」というものがあり、香典返しのように返礼品を行うことが多いです。
カトリックの場合故人が亡くなってから三十日後に行われる追悼ミサの後、プロテスタントでは故人の死後一か月後の昇天記念日の後に贈ります。のしには「志」もしくは「偲び草」と書きます。
神道の場合
神道においても香典はありません。通夜や葬儀では「御玉串料(おたまぐしりょう)」の受け渡しをします。そして御玉串料に対して、香典返しのように返礼品を贈ります。
時期としては、故人が亡くなってから五十日後に行われる「五十日祭」の後、一か月以内にお返しを贈るのが一般的です。表書きには一般的に「偲び草」が使用されています。
▼香典返しを贈る時期について詳しく知りたい方はコチラ
香典返しの金額相場
「香典返しは半返し(半分返し)」と、昔からいわれてきました。金額相場は、香典の半分が一般的ですが、3分の1でも良いとされています。半分にするか3分の1にするかは、相手との関係性によって金額を考えればよろしいかと思います。
例えば、目上の方から多額の香典を貰った場合には、「葬儀費用の足しにしてください」という意味も込められているため、3分の1のお返しで差し支えありません。一家の大黒柱が亡くなった場合には「生活の維持に使ってください」という意味から、3分の1程度のお返しで問題ないと思います。
▼香典返しの相場金額に関するマナーを知りたい方はコチラ
香典返しに贈るもの
香典返しで、よく贈られるものは地方や風習によって異なりますが、「不幸を後に残さない」という考え方で、使用することでなくなる消耗品が良く選ばれているようです。
また、白いものも白装束を連想するため良く選ばれています。相手の年齢、家族構成、好みに合わせて選びましょう。また、故人を連想させる物を選ばれるのも宜しいでしょう。
お金で返すのはNG
香典に対して現金でお返しをすることは失礼にあたると言われています。特に目上の方に対して現金を返すことは、頂いた物をそのまま返す行為となり「あなたの厚意は受け取れません」と受け取られることがあります。
また、現金で返すことによって、何割をお返ししたのか具体的な金額が分ってしまします。相手からしてみれば、気持ちの良いものではありません。商品券を贈るのも同様の意味で避けた方が無難です。
香典返しに人気の商品
「不祝儀を残さない」という考え方から、後に残らない食べ物としてお茶やコーヒー、海苔、両未了などが良く使われています。日持ちする物であることもポイントです。日用雑貨を選ばれる場合にも「使用したらなくなるもの」として、タオル、石鹸、洗剤なども人気です。
しかし、このような日用雑貨は、貰いすぎて余っている場合もあります。喜んでいただけるように素材やデザインの良い物を選びましょう。好きな物を選べるカタログギフトは人気です。様々な価格のカタログがあるため、香典の額に応じて対応できるようになっています。
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香典返しで避けるべきもの
お酒などの嗜好品や、お祝いのイメージが強い鰹節や昆布は香典返しにはふさわしくないといわれています。かつては香典返しに割れ物は「別れ」を連想させるためにタブーとされていましたが、現在は配送技術も進歩し、割れてしまうことはない為問題ないとされています。
香典返しにかける「掛け紙(のし)」のマナー
香典返しの、のし紙(掛け紙)や水引、表書きの書き方などにもマナーがあります。お祝いの時と混同しやすいので、違いをしっかりと理解しておきましょう。
香典返しの「のし紙(掛け紙)」についてのマナーをご紹介します。
香典返しには掛け紙(のし)をかける
香典返しには掛け紙をして贈ることがマナーです。ここで注意したいのは、「掛け紙」と「のし」の違いです。
香典返しには、熨斗(のし)が印刷されていない掛け紙を使用します。熨斗とは、アワビを延ばした「熨斗鮑」からきており、お祝い事に使用します。
弔事用のし紙は、黒白の結び切りの水引が用いられています。結び切りは、「簡単にほどけない」ことから「繰り返されない」という意味が込められています。
掛け紙(のし)の書き方
掛け紙(のし)には水引の上側に表書き、水引の下側に名前を記載します。
表書きには仏教であれば「志」「粗供養」などと記載しますが、地域によって違いもあるため確認しておくと安心です。神道やキリスト教は「志」「偲び草」などが表書きとなります。
名前は、通常「喪家の苗字+家(例:山田家)」と記載しますが、喪主名をフルネームで記載したり、結婚して苗字が変わっている場合は旧姓で記載したりもします。香典返しに名前がないと、誰からの何の贈り物なのか相手が分からないため、必ず名前を記載します。
▼掛け紙の名前の書き方について詳しく知りたい方はコチラ
内のしと外のし
贈り物を包装する際には「内のし」と「外のし」があります。内のしは、包装紙の内側にのしが入るような包み方、外のしは包装紙の上にのしをかける包み方です。
香典返しを郵送する場合は、品物が傷つかないように内のしとし、直接会って手渡しする場合は外のしをかけます。
▼香典返しの掛け紙に関するマナーを詳しく知りたい方はコチラ
香典返しには挨拶状を添える
香典返しの挨拶状には、「弔事を無事に終えられた報告」や「お世話になったお礼」などの気持ちを込めます。弔事の挨拶状には、使用してはいけない言葉などのマナーを気にしながら書かなくてはなりません。ギフトショップでは、香典返しと共に挨拶状の手配もお願いできることが多いので、利用すると良いでしょう。
挨拶状の例文
謹啓
先般 亡〇(続柄)〇〇(故人名)の葬儀に際しましては御多用中にも関わらず ご会葬を頂きかつご丁重なるご厚志を賜り誠に有難く 厚く御礼申し上げます お陰様をもちまして〇月〇日に四十九日の法要を滞り無く営ませて頂きました つきましてはご芳志のお礼と致しまして心ばかりの品をお届けさせて頂きます 何卒ご受納くださいますようよろしくお願い申し上げます 本来であれば拝眉の上で御礼申し上げるべきところ 略儀にて失礼とは存じますが 書中をもってご挨拶申し上げます 敬白 令和〇年〇月〇日 喪主 〇〇〇〇 |
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香典返しの渡し方
香典返しは郵送する場合と直接会って手渡しする場合の2通りの渡し方があります。
郵送する場合は、四十九日法要が終わった忌明け後2週間以内に相手へ届くように手配します。遅くとも忌明け後1ヶ月以内には届くようにしましょう。
香典返しを郵送でなく手渡しする場合は、葬儀や法要などで香典をいただいた際に渡すか、忌明け後に訪問してお渡しします。
香典をお渡しする際は、香典をいただいたお礼や四十九日法要が無事に終了したことなどを伝えましょう。
▼香典返しの渡し方について詳しく知りたい方はコチラ
会社の方への香典返しは必要?
故人や遺族の勤務先から頂いた香典にもお返しが必要なのでしょうか。「取引先から贈られた場合は?」「代表取締役社長から贈られた場合は?」
会社名義で頂いた場合、個人名義で頂いた場合に分けて解説します。
会社名義で香典をいただいた場合
送り主が勤務先などの会社名である場合には、福利厚生費として経費に計上される場合が多く、その場合には香典返しの必要はありません。
ただし、会社名であっても社長や役員が個人的に贈った場合にはお返しの必要があります。会社の制度として贈られたものなのか、個人的に贈られたものなのか分からない場合には、香典返しを贈るのが無難です。
わからない場合には、返礼品は家庭で使用するようなものは避け、皆で食べられるお菓子などにするのが良いでしょう。
個人名義で香典をいただいた場合
社長や部長、同僚などから個人名義で頂いた場合にはお返しの必要があります。「社員有志一同」等、複数人からの連名だった場合には、基本的には一人ひとりにお返しをします。
ただし、香典を人数で割った一人当たりの金額が少額になる場合には、分け合って食べられるお菓子などを持参し感謝の気持ちを伝えても良いでしょう。一人当たりの金額が3千円以上であれば、一人一人に香典返しを行うのが適切です。
香典返しをしなくていい場合はある?
香典を頂いたら香典返しをするのがしきたりですが、しなくてもいいケースもあります。
不祝儀袋に「香典返しは辞退させていただきます」などと明記されている場合には、香典返しを贈る必要はありません。気遣いにより辞退されている場合には、ご厚意に沿ってお返しをしないのが正しい判断です。また、故人の遺志で「香典は寄付にする」場合も、香典返しはしなくてもかまいません。公的機関や民間企業で香典返しを受け取らない規則になっている場合もあります。
香典返しは辞退でも、忌明けに礼状を贈り「遺児の養育費に充てた」「故人の遺志で寄付をした」等、用途を報告するのがマナーです。
香典返しの辞退
通常、葬儀で香典をいただいた際は、3千円など少額の香典でも必ずお返しすることがマナーです。しかし、参列者から香典を辞退されることもあります。
ここでは、参列者が香典返しを辞退する方法と、遺族が香典返しを辞退された場合の対処法について解説します。
香典返しを辞退する方法
「遺族の負担を減らしたい」「香典が小額なので、香典返しはいただかなくてよい」などの理由で香典返しを辞退する場合は、葬儀で香典を渡す時にその旨を伝えるようにします。
具体的には、「誠に勝手ではございますがお返しのご遠慮は不要でございます」など香典返しが不要と書いた一筆箋を香典袋にいれます。合わせて、受付の方にも口頭で香典返しが不要であることを伝えます。香典返しを葬儀当日に渡される場合もありますが、こちらは受け取らず、会葬御礼のみ受け取りましょう。
▼香典返しを辞退する方法や、一筆箋の例文を知りたい方はコチラ
香典返しを辞退されたら?
香典返しを辞退された場合は、無理にお返しをしようとするのではなく、お礼状を送れば問題ありません。会社の方であればメール、親しい方であれば電話などでもよいでしょう。ただし、どうしても気になる方はお中元やお歳暮などでお返しをするという方法もありますので、参考にしてみてください。
▼香典返しを辞退された場合の対応やお礼状の例文を知りたい方はコチラ
まとめ
香典返しに関しての基本的なマナーを説明しました。細かいマナーはありますが、香典返しは「感謝を伝える贈り物」です。相手が喜ぶことを考えて商品を準備し、故人に代わって感謝を伝えることで、より良い人間関係を築くきっかけにもなります。手間をかけられない場合には即返しを利用し、無理のない範囲で行いましょう。