家族葬で香典を辞退をするときのマナー【専門家が解説】
少子高齢化や価値観の多様性など、様々な社会的要因を背景に、家族葬などの小さな葬儀を選ぶ方は年々増えてきています。
家族葬を執り行う場合、香典を辞退するケースが多くありますが、香典を辞退する際にはどのようなマナーに注意すべきでしょうか。
今回は、家族葬において香典を辞退するときのマナーについて解説していきますので、ぜひ、参考にしてくださいね。

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目次
香典を辞退する方が増えている
これまでの葬儀のスタイルから、家族葬をはじめとした小さな葬儀へと葬儀のスタイルも変化してきています。
これに伴い、これまで一般的だった風習も変化しつつあり、香典に対する考え方も変わってきました。
従来、葬儀で香典を持参することは当たり前でしたが、最近では、辞退する方が増えています。
香典を辞退する理由には様々ですが、もっとも大きな理由として、ご遺族の負担や参列者への負担を軽減したいという想いが多いです。
ただし、葬儀は親族なども含めて多くの方の想いや考えが入り込みます。
香典を辞退するかどうかは、家族のみならず親族も含めてしっかりと相談したうえで決めるようにしましょう。
香典をおくる意味は?
では、そもそも香典をおくることにどのような意味があるのでしょうか。
現代の香典は、ご遺族の金銭的な負担を助けるためにおくることがはじまりといわれています。
古来の葬儀では、遺族が喪に服している間、近隣住民の方が参列者などに対して食事を振舞ったりするなど、遺族を助ける役割を果たしていました。
相互扶助の考えのもとで葬儀が行われていましたが、食事を用意する近隣住民の金銭的な負担が大きいことから、次第に現代のようにお金でご遺族を助けるという意味で香典をおくる習慣が生まれ、現代でもその形を残しているのです。
そして、お金で助けてもらったことに対するお礼の気持ちから香典返しという習慣も生まれました。
香典辞退を伝えるときのポイント

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では、香典を辞退する旨をを伝える際にはどのようなポイントがあるのか確認していきましょう。
香典を辞退することは問題ありませんが、そもそも辞退する意思がしっかり伝わらない場合、香典を用意してくださった参列者の方に迷惑がかかってしまいます。
しっかりとポイントを押さえて、香典を辞退する意思を伝えるようにしましょう。
訃報や葬儀の案内状に記載しておく
香典を辞退する意思を伝えるには、訃報の連絡や葬儀の案内状に記載しておくのが一般的です。
訃報の連絡や葬儀の案内状は、葬儀へ参列いただく方全てに送付するので、香典を辞退する意思を一括して参列者の方に伝えることができます。
案内状などとは別に、個別に連絡をすることの手間を考えると、もっとも手軽で伝わりやすい方法といえるでしょう。
なお、訃報の案内や葬儀の案内状を記載する際には、句読点を使わないことがマナーです。
そもそも句読点は、文章を読みやすくする役割がありますが、葬儀等に参列される方は教養のある方達で、句読点がなくても文章をしっかり読めます。
句読点を振ることが逆に失礼にあたるため、句読点は使わないことがマナーとされています。
以下で、訃報の例文をご紹介しますので参考にしてみてください。
例文
祖母〇〇〇〇 儀 〇月〇日に逝去いたしました
ここに 謹んで ご通知申し上げます
生前の祖母の希望により葬儀 告別式は家族葬で執り行うことにいたします
誠に勝手ではございますが 生前の祖母の意志により 御香典 御供花 御供物などのお気遣いは 固く辞退させていただきます
失礼ながら 書中をもってお知らせ申し上げます
差出人住所 〇〇〇〇
差出人名 〇〇〇〇
当日受付でも辞退を伝える
葬儀などの当日に、受付でも香典を辞退する旨を伝えるようにすると確実です。
当日に伝える方法には、受付にて口頭で伝える方法と看板を設置する方法があります。
一般的には、看板を設置して会場入り口で周知しつつ、受付でも口頭で伝える方法がとられています。
葬儀社では、辞退を伝えるための看板を用意してくれますので、迷った場合には葬儀社に相談してみると良いでしょう。
なお、香典を辞退する意思を伝えても、参列者の中には香典を持参する方もいらっしゃいます。
その場合、一度はお断りをしつつ、それでも「どうしても受け取って欲しい」とおっしゃる場合には快く受け取りましょう。
香典を辞退することをはっきりと伝える
香典を辞退する意思ははっきりと伝えなければいけません。
上述したとおり、香典を辞退する意思を伝える方法はたくさんありますが、その意思をはっきりと伝えなければ意味がなくなってしまいます。
また、ご遺族側がその意思を曖昧にしてしまうと、参列者を迷わせてしまうことにもなり兼ねません。
香典を辞退することは失礼になりませんので、ご遺族の意思として辞退することが決まったら、どのような方法でもはっきりと伝えるようにしましょう。
香典に限らず、供物や供花を辞退する際にもその意思をはっきり伝えて、参列者が迷うことなく葬儀に参列できるよう配慮しましょう。
きちんと理由を述べる
一般的に、葬儀にて香典を持参することは当たり前とされています。
そのため、香典を辞退することに対して抵抗を感じる方も中にはいらっしゃいます。
香典を辞退する際には、その理由をしっかりと伝えることも重要になってくるでしょう。
ご遺族側で話し合った結果、参列者に経済的な負担をかけたくないことや故人の意思であったり、香典を辞退する理由は様々です。
なぜ香典を辞退するのか、その理由がはっきりと伝わるだけで参列者の方も納得したうえで葬儀に参列することができます。
したがって、香典を辞退する理由を伝えることは、ご遺族側のマナーともいえます。
葬儀社にも意向を伝えておく
香典を辞退する意思は、葬儀社にもしっかり伝えておくようにしましょう。
葬儀を執り行う際には、葬儀社のスタッフが段取りや司会なども担当してくれるのが一般的です。香典を辞退する意思を伝えることで、葬儀社が参列者の対応をしてくれます。
香典を辞退する意思が伝わっていないと、葬儀の進行にも影響が出てしまいますので、しっかりと伝えておくことは非常に重要です。
辞退の旨を伝えておくことで葬儀社も迷うことなく葬儀をスムーズに進行してくれますので、しっかりと遺族の意向を伝えておきましょう。
文面・言葉遣いに気をつける
香典を辞退する意思を伝える際には、文面や言葉遣いにも配慮が必要です。
文面で伝える際には、香典を辞退することは「遺族の意思」または「故人の意思」であることを明確にしましょう。
香典辞退の理由が不明瞭であれば、参列者に香典辞退の意思が伝わらない場合もあります。
また、丁寧な言葉遣いで文面を作成することも非常に大事です。
最近では、案内状などの作成を代行してくれる業者もあります。作成の際に香典を辞退する意思を伝えておくことで、きちんとした言葉遣いで文面を作成してくれます。
どのような文面が相応しいかは以下の「家族葬で香典辞退を伝える文例」で紹介していますので、参考にしてみてください。
会社からの香典も辞退できる
会社からの香典も、親族からの香典と同様に辞退することは問題ありません。
ただし、会社からいただく香典には、故人の上司や親しい同僚などからいただく個人名義のものと会社の福利厚生としていただくものがあります。
故人の会社の関係者や上司などからの香典は、一般の参列者と同様なので、香典を辞退しても何も問題はありません。
香典を受け取った場合には、他の参列者と同様にお返しを用意することとなります。
これに対して、会社の慶弔規程に基づいて「死亡見舞金」が香典として支払われるケースがあります。
この場合、「死亡見舞金」は会社の福利厚生の一環として支払われるため、お返しは不要です。
家族葬で香典辞退を伝える文例

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ここまで、家族葬で香典を辞退する場合の伝え方や伝える時のポイントについて解説してきました。
では、伝え方やポイントを踏まえたうえで、具体的にどのような文章にすれば良いか確認していきましょう。
以下では、香典辞退を伝える具体的な文例をご紹介していきます。
香典を辞退する意思をどのように伝えれば良いか分からないという方は、以下の文例を参考にしてみてください。
【文例1】親しい方へ
まずは、親しい方へ伝える場合の文例をご紹介していきます。
伝えるべきポイントは、「家族葬として実施すること」「香典を辞退すること」の2点が明確に伝わるようにすることです。
また、親しい方であっても丁寧な日本語で文章を作成するように心がけましょう。
以下に、文例を記載しますので参考にしてみてください。
なお、文章に定型文などはありません。
最近ではインターネットで検索してもたくさんの文例が出てきますので、参考にしてみても良いかもしれません。
【文例】
〇月〇日 祖母〇〇〇〇 儀 病気療養中のところ 逝去いたしました
故人の生前の希望により葬儀・告別式は家族葬にて執り行うことといたします
尚 誠に勝手ではございますが 故人の遺志により 御香典 御供物 御供花の儀は固くご辞退申し上げます
生前に賜りましたご厚情に心より御礼申し上げます
失礼ながら 書中をもってお知らせ申し上げます
喪主〇〇
【文例2】会社へ
次に、会社へ伝える場合の文例をご紹介します。
まず会社へ連絡する際には、香典や供花、供物を辞退するのかどうか、会社がしっかり判断できるように明確に伝えることがもっとも重要です。
必要であれば、電話とメールなど複数の手段で伝えると良いかもしれません。
文章で伝える際には、「家族葬であること」「香典は辞退すること」をしっかりと記載しつつ、弔問を避けるために葬儀会場や葬儀の日時などはあえて記載しないことがポイントとなります。
故人の生前の遺志により 葬儀・告別式は家族葬にて執り行うことといたします
つきましては 故人の遺志により ご香典 ご弔電などのお気遣いは辞退させていただきます
生前に賜りましたご厚情に心より御礼申し上げます
失礼ながら 書中をもってお知らせ申し上げます
喪主〇〇
香典を辞退したのに受け取ってしまった場合
ここでは、香典を辞退したのに受け取ってしまった場合について解説していきます。
香典辞退の意思を伝え、香典の受け取りを拒否した場合でも、何度も断ることができずに受け取ってしまうケースも出てきます。
香典を辞退したのに受け取ってしまった場合、どのように対応すれば良いかを確認していきましょう。
香典返しをしましょう
まず、香典を受け取った以上、一般的な葬儀と同じように香典返しを用意して対応しましょう。
香典を辞退しても香典を持参する方はいらっしゃいます。
そのご好意を受け取ったのであれば、従来の香典の風習に立ち返り半返しによって対応する必要があります。
香典返しの品物にはタオルや洗剤などが多く選ばれていましたが、近年では、カタログギフトを選ぶ方が増えてきています。
カタログギフトであれば、ご遺族が香典返しを選ぶ手間もかかりませんし、受け取る側も品物を選べるのでお互いにとって良いお返しとなるでしょう。

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挨拶状も添えましょう
香典返しを送る際には、挨拶状もしっかり添えて送ることがマナーです。
挨拶状では、香典をいただいたことへのお礼だけでなく、四十九日法要が無事に済んだことの報告も兼ねてお送りします。
挨拶状を作成する際には、しっかりとマナーを守ってきちんとした文章で作成するように心がけます。
マナーや文章に自身がない場合には、葬儀社などに相談することで挨拶状を作成してくれますので、葬儀社に相談してみるのも良いでしょう。
供花や供物の受け取りについても伝えましょう
香典を辞退する際には、供花や供物の受け取りについても伝えるようにしましょう。
香典が辞退されても、せめて供花や供物を贈りたいと考える参列者もいらっしゃいます。
供花や供物の受け取りについて明確にしていないと、想像以上に供花や供物が届いて対応に困ってしまうことにもなり兼ねません。
一般的には、香典を辞退する場合、供花や供物も辞退することがほとんどですが、供花や供物の取り扱いについてもしっかり伝えるようにしましょう。
なお、「ご厚意辞退申し上げます」という表現には、香典や供花、供物などを一切遠慮させていただくという意味があります。
案内状などで伝える際に使用すると良いでしょう。
まとめ
今回は、家族葬において香典を辞退する場合について解説してきました。
香典を辞退することは特に問題はありませんが、辞退する場合の方法や辞退する旨を伝える方法、伝え方など様々なマナーがあります。
しっかりと伝えないと、参列者を迷わせてしまったり、対応に困ってしまうことにもなり兼ねません。
今回の記事を参考に、家族葬にて香典を辞退する場合のマナーなどを確認してみてください。
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