特養と有料老人ホームの違いについて入居方法や介護サービスなどを詳しく解説!【高齢者住まいアドバイザー監修】
介護保険施設や高齢者施設にはさまざまな老人ホームが混在しています。
あまり介護について知識のない方にとって、これらの老人ホームの違いを明確にし、希望する老人ホームを選択することは難しいことでしょう。
この記事では、老人ホームのなかでも知名度の高い「有料老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」の違いについて詳しくご説明します。
目次
特養と有料老人ホームそれぞれの特徴の違いとは
有料老人ホームと特別養護老人ホームは、同じ「老人ホーム」という名称で、なんだか内容の違いがはっきり分からないという方も多いと思います。
そこで、まず簡単に図を使って 2 つのホームの違いをご紹介します。
※ここでは、介護サービスが最も手厚い「介護付き有料老人ホーム」を指しています。
上記の図で大まかに両施設の違いを理解して頂けたかと思います。
次は、実際に入居した場合に、是非参考にして頂きたい両施設の特徴について解説していきます。
特徴を抑えることにより、入居後の生活をより具体的にイメージすることができるでしょう。
特別養護老人ホームの特徴とは
特養は『終の棲家』と言われ、主に高齢者が充実した介護サービスを受けるための介護保険施設です。
最大の特徴は費用が比較的安価で、全国的に料金が統一されていることにあります。
最近は地域密着型特養と呼ばれる小規模な特養が全国各地に出来ており、待機期間も短くなってきています。
しかし、特養は病院ではないので、行われる医療行為は自宅でできる簡単な傷の手当程度であることを押さえておきましょう。
有料老人ホームの特徴とは
有料老人ホームには3種類あり、この中でどれを選ぶかによって生活の内容も違ってきます。
特に介護サービスの提供が手厚い「介護付き有料老人ホーム」の場合は、施設で生活しながら同施設の職員により直接介護を受けることができるのが特徴です。
一方、 住宅型有料老人ホームと健康型有料老人ホームでは、これまで以上に豊かで充実した生活を送れるような設備が整っており、比較的元気な高齢者が利用するケースが多いのが特徴です。
特養と有料老人ホームの入居条件
両施設の特徴を理解して頂いたと思いますが、次にどのような方が入居することができるかをお伝えしていきます。
特別養護老人ホームの入居条件
介護保険施設であるため、要介護状態の方であることが絶対要件です。
さらに、原則として要介護3以上でなければなりません。
原則ですので、例外的に要介護1や2でも家族の状況等により入居することが可能です。
そのような場合は別紙として申し込み用紙を提出する必要があります。
有料老人ホームの入居条件
上記の表の通り、自立の方も含めて介護保険の対象となる要介護1以上の方が対象です。
よって、幅広い身体状況の方が入居することができます。
自立とは、介護保険を受けるために、要介護認定を申請したにも関わらず『非該当』という結果が出た方も指します。
簡単な食事を自分で作ったり、お風呂や簡単な掃除も自分ひとりでなんとか行なえる方も該当します。
つまり、元気で活動性の高い高齢者も入居することができるので、豊かな老後を送ることを目的にされる方にも最適という特徴があります。
特養と有料老人ホームの費用目安
©gearstd/stock.adobe.com
都心部では高級老人ホームなどとして人気のある有料老人ホームと、庶民的で比較的安価だとされる特養の費用について解説していきます。
特別養護老人ホームの費用
特別養護老人ホームは入所の際の一時金は不要です。
よって月々の費用のみで構いません。
例えば要介護5でユニット型個室の場合、月々の料金は13万円程度になるでしょう。
要介護1で多床室の場合なら7万円程度となり、利用する方の状況と部屋のタイプによって金額に差があることが分かります。
介護保険施設である特養は、「介護保険負担限度額」の対象になりますので、段階ごとに更に負担額は減少します。
この制度を知らない方が、入居の際に職員に教えてもらい市役所に申請に行ったら、月3万円弱程安くなったという事例もあります。
有料老人ホームの費用
有料老人ホームは入居一時金(ない施設もあります)と月々の料金が必要です。
入居一時金 を 支払うことができなければ入居はできません。
また、月々の費用が特養と比べて2倍程かかる有料老人ホームもありますので注意が必要です。
月々の料金は、高額で30万円以上する施設も存在し、その内訳ですが、食事、部屋代、管理費、介護サービス(介護付き有料老人ホームのみ)などがあります。
都市部や人口密集地では、より快適で豊かな生活を送ることを目的として建設されている施設が多く、高級老人ホームとして富裕層をターゲットにしています。
よって、地方の田舎よりも費用は高い傾向にありますし、施設の数も多い傾向にあります。
特養と有料老人ホームの介護サービスの違い
ここでは両施設の介護サービスの違いについて触れていきます。
特に有料老人ホームでは、介護サービスについてトラブルになることが多いので、よく抑えておきましょう。
特別養護老人ホームの介護サービス
©beeboys/stock.adobe.com
特養では施設での生活において、介護を必要とする場面では所属の職員が直接介護をしてくれます。
要介護度によって介護のサービスに若干違いはありますので、以下参考のための記載しておきます。
【要介護1~2の場合】
- 杖歩行やシルバーカーでの移動の見守り支援
- 食事の見守り
- 入浴の見守り
【要介護3の場合】
- ベッドから車椅子に移ったりする際の見守りや軽介助
- トイレでズボンやパンツを下ろしたりする
- 入浴で手の届かないところを洗ったりする
【要介護4の場合】
- 食事の一部介助
- 車椅子を押して移動する
- オムツ交換
【要介護5の場合】
- 体位変換
- 食事の全介助
- リクライニング車椅子での使用や移動
このように段階に応じて介護を受ける内容が変わり、その方に最も最適な支援を受けることができます。
有料老人ホームの介護サービス
© japolia/stock.adobe.com
介護保険制度の対象のなる介護付き有料老人ホームはそこで働く職員が直接、食事介助、排泄介助、入浴介助などをしてくれます。
一方、介護保険制度の対象外となる住宅型・健康型有料老人ホームは、その建物で勤務する職員から直接介護を受けることができません。
よって、介護が必要になれば、担当のケマネジャーとケアプラン作成の相談をし、それに基づいて外部からの介護保険の在宅サービス(訪問介護やデイサービスなど)を利用するか、老人保健施設やグループホームなどの介護保険制度の対象となる施設に移らないといけません。
特養と有料老人ホームの設備の違い
実際に入居すると、施設内の設備によって印象が変わります。
有料老人ホームは元気な高齢者も利用しますので、特養とは随分違った印象を持つ人が多いです。
特別養護老人ホームの設備
一般的な方が生活をするほどの設備しかありません。
居室以外では、共有スペースの食堂やホール、浴室、機能訓練室など最低限必要なものがあり、そのなかで、一日の生活を送っています。
ただ、施設によってその数に違いがあります。
例えば、入浴の頻度を多くするために一つの建物に複数の浴室を設置している施設もあります。
また、少人数で食事を摂ってもらうためにコンパクトな食堂が複数ある場合もあります。
中には食堂と一緒にミニキッチンがあり、出来立ての食事やおやつを提供できる取り組みをしていたりすることもあります。
有料老人ホームの設備
老後を豊かに、趣味に力を入れて楽しめるような設備になっています。
最大の特徴は余暇活動を充実させるための設備です。
麻雀ルームやカラオケルームがあるのは決して珍しくありません。
中には、温泉を直接引いているホームもあったり、高齢者向けのスポーツジムまで充実させているところもあります。
両施設の違いはその他にも
両施設の比較の最後に、両施設の性質的な違いについても触れていきたいと思います。
退所となるタイミングに違いがある
有料老人ホームは老後の生活を豊かにするとが主な目的となり、
「どうせ引越しするなら見守り程度の安心も欲しい!」
と考える方が主に入居されます。
よって見守り程度の介護が必要な生活ではなく、日常から介護が必須になるような生活になってしまうと、退所しなければいけないこともあります。
一方、特養では本人や家族の希望があれば、施設内で看取りケアを行うことができますので、最期まで過すことができます。
ゆえに「死亡=退所」となるケースが多いのが特徴です。
職員の性質に違いがある
有料老人ホームは、比較的元気で活動性の高い高齢者が多いため、職員は直接身体に触れるような介護を行う機会が少ない傾向にあります。そのため、介護技術面よりも接遇に関する質が高いといえます。
一方、介護保険施設である特養は国家資格である介護福祉士の所持率が高いので、一定の知識や技術を持って職員が職務に従事しています。
国も、介護福祉士が多く勤務する場合は余分に加算がある制度を導入しています。
参考:介護労働の現状
参考:介護保険最新情報
特養と有料老人ホームそれぞれの注意点
一通り、有料と特養の違いを見ていただきましたが、両施設とも入居するにあたって踏まえておかなければならないことがあります。
良い施設選びをするためにも、以下の点にお気を付けください。
有料老人ホームに入居するにあたって注意すべきこと
有料老人ホームで一番大切なことは、費用に関することです。
入居後すぐに必要な費用だけでなく、5年後、10年後、20年後まで見据えた場合、自分の支払い能力があるかを判断しなければなりません。
有料老人ホームに入居後、「想定外の費用が必要となった」「こんなにかかると思うなんて…」という話を耳にすることがあります。
ですので、医療費も含めて自分の身体状態の変化とともに、どれぐらい費用が必要になるか考えて、それにあった有料老人ホームを探すことが大切です。
費用面に関してある程度見通しがたったら、自分のライフサイクルの合ったホームを探していきます。
特別養護老人ホームに入居するにあたって注意すべきこと
特養の場合は近年全国的に増えていますが、まだまだ待機期間は長く、申し込みをして即入居というケースはあまりありません。
施設によっては、要介護1や2の段階でも受付をしてくれる場合もありますので、将来的に施設介護を希望するのであれば、なるべく早い段階で申し込みをすることをおすすめします。
申し込み(自治体の担当者による聞き取り調査)の際には、ご家族は入居者本人の心身状況を十分に把握しておき、正確な情報を担当職員に伝えられるように準備しておきます。
特に
「具体的にどのようなことに困っているのか」
「家族の介護力はどれぐらいあるか」
など、施設介護の必要性が高いことをアピールできるように準備しておきましょう。
特養と有料老人ホームのデメリットを比較
上記に加えて、両施設のデメリットについても確認していきたいと思います。
デメリットもあらかじめ知っておくことで、いい施設選びに繋げることができます。
有料老人ホームのデメリット
最大のデメリットは、最期まで環境を変えずに生活しにくく、状況によっては退去しないといけないことです。
また、退去すること以外にも、
「この先自分はどうなるのだろうか…」
「どのタイミングで出て行かないといけないのだろうか…」
と考える精神的な負担も発生する場合があります。
折角立派な設備が充実していても、その設備自体を利用できる心身状況でなければ、費用がもったいないと考える方もいらっしゃるのです。
入居後間もない頃は、充実した設備を積極的に利用することになると思いますが、いつまでも継続するとは限りません。
あくまでも、心身ともに健康でなければ充実した設備を楽しむことはできないのです。
特別養護老人ホームのデメリット
ユニット型個室がありプライベートが確保しやすいと言っても、集団生活であることには変わりがありません。
認知症の方の大声や気になる行動など、多少のことは我慢しなければなりません。
逆に、自分がそのような状況になったら、他の人に迷惑を掛けてしまうことも考えられるので、最終的には『お互い様』と割り切ることも大切です。
身体に直接触れる介護をメインにされている施設ですので、職員との相性が悪ければ生活が苦痛になる可能性があります。
また、最近は入居者個々の生活リズム・ライフスタイルに合わせた支援を行なってくれる施設も増えていますが、どうしても全体の一日の流れに従わなければならないところもあります。
例えば、「お風呂は夕食後が一番!」と考えていても、職員の数や安全面から日中にしか入浴ができないところが多いです。
まとめ
定年退職後に生活を豊かに充実させたいという目的で入居する有料老人ホームですが、特養は介護をメインにした生活の場であり、生活に必要な設備しかありません。
そのため、費用にはかなりの差があります。
有料老人ホームは都心部では富裕層をターゲットにしている一方、特養は庶民的な施設であることが分かります。
入所要件や介護サービスにも違いがあるので、しっかり理解してから自分に合う施設に入居できるようにしましょう。
また、一般的に老人ホームというと有料老人ホームを指すことが多いですが、介護施設は有料や特養だけではありません。気になった方は、下の記事 を参考に、他の介護施設についても調べてみてください。