在宅介護に限界を感じる…施設介護に移すタイミングはいつ?メリット・デメリットを徹底比較!

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在宅介護は利用者にとって縁の深い環境で、さまざまな介護サービスを受けさせてあげることができるという特徴がありますが、家族の精神的・肉体的疲労は計り知れないものです。
例えば、90代の親に介護が必要になった場合、その子供達は65歳前後です。
そうなると、高齢者が高齢者が介護をする『老老介護』という社会問題にもなっているように、心身ともにかなりの負担になることは間違いありません。
60代の時に親の介護が必要になり、その後のことを考えると、
「この介護がいつまで続くのだろうか…」「お金が足りるのか…」「体力的に限界…」
といったような不安に襲われたりストレスに押し潰されそうになるでしょう。
そこで重要になってくるのは「施設で介護をおこなっていただく」ということです。
現在は昔に比べて、「介護施設に任せるのは放棄だ」と言われる風潮はなくなってきました。
「介護のことは介護のプロに」そう言われるようになった現代だからこそ、「在宅介護」と「施設介護」の特徴、メリットを分かったうえでそれぞれの介護の方法を選択していくことが必要になってきます。
この記事では、「在宅介護」「施設介護」の費用の違いや特徴についてまとめています。
在宅介護を始めて、辛くなってきている方、不安を抱えている方のご参考になれば幸いです。
目次
在宅や施設でおこなわれる介護にはどのようなものがあるか?
在宅介護と施設介護では、実際にどのようなサービスが各事業所によっておこなわれているかを解説していきます。
在宅介護でおこなわれるサービス
以下は介護職員や看護師など、専門職の方が利用者宅に訪問し、提供するサービスです。
- 訪問介護
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 夜間対応型訪問介護(地域密着型)
- 定期巡回・随時対応型訪問看護(地域密着型)
- 居宅療養管理指導
次に、利用者が送迎車を使い、事業所や施設に出向いて受給するサービスが以下になります。
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
訪問、通所、宿泊などの機能が備わった複合的な介護サービスが以下になります。
- 小規模多機能型居宅介護(地域密着型)
以下は利用者が自身の住民票を、特定施設に移し、新たな住処として住居しながら受ける介護サービスです。
- ※特定施設入居者生活介護
最後に、介護保険を利用して、受けられるその他の介護サービスが以下の通りです。
- 居宅介護支援(ケアプランの作成等)
- 福祉用具貸与
- 福祉用具販売
- 住宅改修
※「特定施設入居者生活介護」とは有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅などが提供しているサービスです。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは利用者が住んでいた家でおこわれる在宅介護ではなく、有料老人ホームなどに引っ越し、その先で在宅介護を受けるという仕組みになっています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
施設介護でおこなわれるサービス

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施設介護でおこなわれるサービスは以下の通りです。
在宅介護と施設介護で発生する費用の違い
ここではそれぞれ1割負担で10年間介護を実施した場合、どれぐらいの費用が必要になるのかを解説していきます。
(実際は介護が必要な10年間で在宅と施設を行き来するので、同じサービスを受け続けるということは稀です。参考までにご覧ください。)
在宅介護でおこなわれるサービス
在宅介護の場合、1ヶ月で使える費用の上限額(支給限度額)が決まっています。
今回は支給限度額までサービスを利用した場合の概算をしてみます。
最初の2年間は要支援1、3年目~4年目は要支援2、5年目~6年目は要介護2、7年目~8年目は要介護4、9年目~10年目に要介護5の状態になったと仮定します。
限度額についてはこちらをご覧下さい。
参考:介護保険の支給限度額とは
期間 | 要介護度 | 1ヶ月あたりの料金 | 合計金額 |
---|---|---|---|
1年目~2年目 | 要支援1 | 0.5万円 | 12万円 |
3年目~4年目 | 要支援2 | 1万円 | 24万円 |
5年目~6年目 | 要介護2 | 2万円 | 48万円 |
7年目~8年目 | 要介護4 | 3万円 | 72万円 |
9年目~10年目 | 要介護5 | 3.5万円 | 84万円 |
10年間の合計:240万円
240万円という数字はあくまでも参考程度にお捉え下さい。
在宅介護を、要介護5で4~5年間おこなえばその分割高になります。
注:「特定施設入居者生活介護」を提供している有料老人ホームを利用する場合は、他の在宅介護サービスを利用する場合と費用が異なってきます。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の利用を考えている方は、以下の記事をお読みください。
施設介護での費用
施設介護で代表的な施設である特別養護老人ホームで10年間、介護を受けた場合の概算を出してみます。
特別養護老人ホームに入居できるのは、原則要介護3以上ですので、最初の3年間は要介護3、4年目~7年目は要介護4、8年目~10年目は要介護5とします。
以下は施設生活に伴う居住費と食事代も含めての概算です。
期間 | 要介護度 | 1ヶ月あたりの料金 | 合計金額 |
---|---|---|---|
1年目~3年目 | 要介護3 | 10万円 | 360万円 |
4年目~7年目 | 要介護4 | 11万円 | 528万円 |
8年目~10年目 | 要介護5 | 12万円 | 432万円 |
10年間の合計:1,320万円
1320万円という数字もあくまでも参考程度にお捉え下さい。
実際には要介護2の状態で、7~8年介護を受けた後、転倒・転落などをして骨折、手術などをし、その後要介護5になるケース等もあり、さまざまなパターンで費用の変動はあります。
ここではざっくりと目安費用について説明しましたが、具体的に何にどれくらいお金が必要になるのか、どういう点に気をつけて費用を支払えばいいかについて以下の記事でより詳しく説明していますので参考にしてみてください。
在宅介護の4つのメリット
先ほどの内容により在宅介護の方が圧倒的に金額を抑えられることがご理解頂けたと思います。
在宅介護のメリットは費用が低いことだけではありません。
ここでは費用面以外でのメリットも解説していきます。

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①家族がいつも近くにいてあげることができる
利用者本人の精神的安定につながる場合が多いです。
また、家族もいつも傍で介護をするので安心です。
②環境を変えずに生活ができる
住み慣れた地域で在宅介護をおこなうケースが多く、近所付き合い等は継続することができます。
③主治医を継続することができる
施設介護になれば主治医を変更しないといけない場合が多いですが、在宅での生活を継続させることで主治医はいつまでも継続でき安心です。
④家族のタイミングで食べ物を食べさせてあげられる
人間は高齢になっても食べる楽しみはとても大きなものです。
施設に入所してしまえば、食べ物の差し入れを一切禁止しているところもあります。
施設では差し入れが可能な施設でも、そのつど職員に連絡しないといけない煩わしさもあります。
在宅介護の5つのデメリット
また、ここでは在宅介護のデメリットについても解説します。
①介護度が重度になるにつれて家族が介護に関わる時間が増える
要支援では家族による介護はほとんど要しませんが、要介護になるとどんどん介護にかかる時間が増え続け、要介護5になると終日、半日介護を要するケースが6割を超えます。
これは、家族の心身面での疲労が蓄積される原因となります。
参考:要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合|厚生労働省
②外部のサービスを利用することによってプライバシーが守られにくい
特に訪問系のサービスを利用すると、介護職員が生活の場に加わることになります。
そのため、寝室やリビングなどの生活空間に他人が入ることに抵抗を感じる人も少なくはありません。
③緊急時の対応が不安
要介護4や5にもなると、重度の認知症や著しい筋力低下によって、想定外の出来事が起こる可能性があります。
認知症によって無断外出をし、警察のお世話になるケースも珍しくありません。
特に老老介護や認認介護の場合は、緊急時に適切な対応ができない不安があります。
④介護離職の可能性もある
家族が介護に加わることによって、それまで勤めていた仕事を退職しないといけない場合があります。
2017年時には年間で9万人(6割以上が女性)の方が介護離職をしています。
⑤住宅改修をする場合に面倒に感じる
身体状況に合わせて、生活しやすい環境にするために住宅改修(リフォーム)をおこなう場合がありますが、家族も含めて工事期間のあいだ生活が不自由になります。
施設介護の4つのメリット
施設介護では介護そのものを施設の職員に任せて、家族は見守ったり、連絡や報告を受けるだけになります。
在宅介護をなるべく頑張って、家族の限界が来る前に施設介護に移行するケースが多いです。
以下では、施設介護のメリットを解説します。
①24時間プロに任せられるので安心
介護をしていると心身状況に応じて臨機応変に対応しないといけません。
在宅介護では家族の生活リズムもあり、その臨機応変が難しいです。施設であればそれぞれの専門職が連携して24時間対応してくれるので安心できます。
②夜ゆっくり眠ることができるなど家族の身体的負担が軽減する
利用者に何かあった際には、施設から急な電話連絡が来る場合がありますが、基本的には夜中も眠ることができますので身体的に楽になります。
③距離を置くことで優しくしてあげられる
在宅介護だと多くの時間を家族と一緒に過ごすので、介護の疲れから優しく接してあげることが難しくなります。
しかし、施設に介護を依頼し、週に1回の面会となれば、その面会の際とても優しく接する余裕が出てきます。
家族にとっても利用者にとってもストレスがないことは重要です。
④急変時も安心
医師、看護師、薬剤師など医療スタッフとの連携により、感染症、疾患、事故による骨折等の際も安心して生活することができます。
施設介護の5つのデメリット
では、逆に施設介護のデメリットは何なのでしょうか。
それについて解説していきます。
①医療機関を選択する幅に限界がある
主治医を含め、施設が契約している病院と連携する場合が多いので、自分達の意見で病院を受診・往診することが難しくなります。
②利用者本人が精神的不安になりやすい
環境が変化することによって、認知症が進行し、そのまま改善せずに精神的に不安定になる場合もあります。
職員だけでは対応が出来ない場合は、家族への呼び出しをおこなう場合があります。
③個室でも集団生活となる部分があり100%自由な生活はできない
施設に入居するということは自宅とは違い、全ての物事は入居者のペースでは進みません。
例えば、汗をかいたといっても、自分だけのタイミングでシャワーを浴びることができないのです。
また、共有スペースの室温も自分一人の適温に調整することはできません。
④家族と一緒に生活ができない
施設に介護を依頼することで、施設での生活が主体となります。
もちろん、外泊や外出などにより自宅の戻ることもできますが、多くの施設では日数に制限があり、家族と離れて生活することになり少し寂しい気持ちになる可能性があります。
⑤食事の味が合わないことがある
味付に関しては、個別に対応できない施設が多いです。
同じ食事でも「薄い」と感じる人もいれば「濃い」と感じる人もいます。
在宅か施設かを決めるタイミングはいつ?
これまで在宅介護・施設介護のそれぞれのメリット、デメリットを見てきましたが、結局のところ、ご家族はどのように感じられた時が「在宅介護の限界」で、施設介護を考えた方がよいのでしょうか?
介護のきっかけは人それぞれですが、介護にかかる介護にかかる時間が短く家族の生活に支障がでない間は、在宅介護からおこなうのが一般的です。
これは、介護保険制度での指針にもあるように、在宅介護を重視し、住み慣れた地域でいつまでも生活することを目指している「地域包括ケアシステム」の構築があるからです。
団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるものです。
今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、地域包括ケアシスムは重要になります。
人口が横ばいで75歳以上人口が急増する大都市部、75歳以上人口の増加は緩やかだが人口は減少する町村部等、高齢化の進展状況には大きな地域差が生じています。
多くの人は、経済的なことも考えてなるべく在宅で介護をおこないたいと思っている人が多いですが、在宅介護はまず、介護者(家族)の心身状況が健康でなければ難しいです。
家族は24時間一日中、利用者本人のことを気にかけております。
そのため、介護者(家族)は、どのような事態になっても介護ができるぐらいの心と体の余裕がないと続けていけません。
介護者の限界が来てから「いよいよ施設でお世話になろうか」と思ったときには遅いのが現状です。
それは、すぐに入居可能の施設を見つけることが難しいからです。
中には、特養に入居申込をしておきながら、順番が来た時に「もう少し頑張ってみます」とおっしゃられる人もいます。
しかし、後から介護者が急に不健康になり「あのとき声を掛けてくれたのですが…」とお話をされても、その時施設が空いているとは限りません。
在宅介護から施設介護に切るかえるタイミングは「介護者の誰かが病気やケガをしたら在宅介護ができない」という状況になった時が一番最適です。
施設に入居させたいが、お金がなくて困っている方へ
在宅介護から施設介護に切り替えたいけれど、それにかかる費用がなくて困っている人も少なくはないでしょう。
施設介護になると、1ヶ月10万円前後かかりますので、年金だけでは十分でない人も決して珍しくありません。
ここでは、経済的な理由から施設介護に切り替えることができない人に対して、解決への手がかりになればと思います。

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世帯分離をおこない負担限度額認定を利用する
所得の低い方に対して、利用者負担額の軽減措置をおこなっています。
特養や老健、ショートステイなどが対象となり、食費と居住費が段階的に負担する金額が軽減されます。
負担限度額認定についてはこちらから詳細がご覧になれます。
参考:特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)|厚生労働省
グループホームは対象になりませんので注意が必要ですが、特養や老健への入居を考えた場合、事前に申請しておくことをおすすめします。
もし、対象外になった場合、入居先の施設に住所を移すことにより世帯分離になりますので、この制度の対象になることもあります。
社会福祉法人等による利用者負担軽減制度を利用する
低所得で生計が困難な方について、介護保険サービスの提供をおこなう社会福祉法人等が、利用者負担を軽減することにより、介護保険サービスの利用促進を図ることを目的とするものです。
食費と居住費の部分が対象になりますが、全ての社会福祉法人が行政に申請しているとは限りません。
対象になるかどうかは、直接希望する施設や行政に尋ねましょう。
詳しくは以下の資料から詳細がご覧になれます。
生活保護受給の申請をしてみる
心身状態や家庭の環境を考えた場合、どうしても施設介護でないと難しいけれど経済的に不安が残るという場合は、生活保護受給の申請をしてみるといいでしょう。
生活保護受給の申請をすると、必ず適用されるとは限りませんが、結果は申請してみないと分かりません。
また、生活保護受給の対象にはならなくても、その一歩手前として扱われる『境界層措置』というものもあります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
参考:境界層措置ってなんだ?|社会福祉士 大川裕子のオフィシャルサイト
施設に直接交渉してみる
利用者の負担分(1割~3割)と、居住費と食事代については、制度の規定により決まっていますので値下げ交渉はできません。
しかし、施設が独自に設定している管理費については、交渉により値下げをしてくれる場合もあります。
自分達の生活の実態を施設長などの管理者に伝えることで、値下げが実現する可能性もあるのです。
ちなみに2万円の管理費が1万円になったというケースもあるようです。
家族で足りない費用を負担する
自営業など国民年金のみの受給なら、利用料が足りないというケースは決して珍しくありません。
例えば、利用料として12万円が必要として、年金が月に7万円しかない場合は、残りの5万円を子供たちが分担して負担することをする方もいらっしゃいます。
子供たちも生活がありますので、無理はできませんが、このような方法をとっている家庭は多いのです。
まとめ
在宅介護は心身ともに非常に辛く、いつまで続く分からない不安や経済的な心配をする人が多いです。
在宅介護は比較的、要介護度が軽い状態では有効的ですが、認知症が重度になったり、寝たきり状態になるなどし、重度になれば施設介護に切り替えるタイミングを図るようにすればいいでしょう。
ポイントは、在宅介護で限界を感じる一歩手前で施設介護に切り替えることです。
限界が来てからでは、介助者である家族が動けなくなり、共倒れする可能性が高いのです。
本文中で解説した方法などを参考にしつつ、心配がある際は無理せず施設介護を利用するというのも選択肢の一つです。
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