介護療養型医療施設と老健の費用や入居条件などの違いをわかりやすく比較!
「うちの親は体に麻痺が残っているからリハビリを受けさせながら介護施設のお世話になりたい」「24時間の点滴が必要なのだけど、介護施設に入居できるのかしら?」
など、医療ケアを受けながら介護施設を利用したい方もいらっしゃると思います。
そのような場合、介護保険施設である介護老人保健施設(老健)や介護療養型医療施設(療養病床)、介護医療院(2018年創設)が入居の候補にあがるでしょう。
しかし、ここで問題点となるのが3種類の施設の違い(提供される介護サービスや費用など)が分かりづらいということです。
そこでこの記事では介護療養型医療施設と老健の費用や提供されるサービス、入居条件などの違いについて簡単に説明させていただきます。

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目次
介護療養型医療施設と老健で提供されるサービスの違い
厚生労働省の定める療養病床と老健の両施設の概要は以下のようになっています。
介護療養型医療施設(療養病床) | 介護老人保健施設(老健) |
病院・診療所の病床のうち、長期療養を必要とする要介護者に対し、医学的管理の下における介護、必要な医療等を提供する施設 | 要介護者にリハビリ等を提供し、在宅復帰を目指す施設 |
上記の表をもとにそれぞれ提供しているサービスの違いについて説明させていただきます。
介護療養型医療施設で提供されている介護サービス
療養病床で提供されている介護サービスは日常の介護に加えて、医療の提供など病院に近いサービスを展開しています。
例えば、24時間の点滴、悪化した褥瘡の切開(軽度なものに限る)、在宅酸素の管理、頻度の多い喀痰吸引、重度の糖尿病の患者の対応、インシュリンなどの注射などがあげられます。

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老健で提供されている介護サービス
一方、老健は在宅復帰を目指した介護施設であるために日常生活での介護に加えて、機能訓練(リハビリ)が充実していることが特徴として挙げられます。
提供される介護サービスの例としては、個々の身体状況に応じたプログラムを計画しておこなわれる理学・作業療法士による週2~のリハビリ、看護師による健康管理や投薬、介護職員による24時間の見守りなどをおこなっています。

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介護療養型医療施設と老健の費用の違い
介護保健施設を利用した際に発生する介護サービス費以外の費用についてまとめたものが以下になります。
図を見てもわかるように、介護サービス費以外に発生する費用については両施設で変わりません。
一方、一日で発生する大まかな介護サービス費は以下の通りです。(1単位=10円が目安)
要介護1 | 778単位/日 |
要介護2 | 886単位/日 |
要介護3 | 1,119単位/日 |
要介護4 | 1,218単位/日 |
要介護5 | 1,307単位/日 |
要介護1 | 768単位/日 |
要介護2 | 816単位/日 |
要介護3 | 887単位/日 |
要介護4 | 928単位/日 |
要介護5 | 981単位/日 |
参考:介護老人保健施設
例えば要介護4(自己負担1割)の方が1カ月施設を利用すると、介護療養型医療施設の場合、
1,218単位×10円(1単位=10円が目安)×30.4日(一月分)×0.1(自己負担額)=37,027円/月
よって発生する介護サービス費は37,027円/月です。
老健の場合は、
928単位×10円(1単位=10円が目安)×30.4日(一月分)×0.1(自己負担額)=28,211円/月
よって発生する介護サービス費は28,211円/月です。
差額は約8,816円/月となり、老健よりも介護療養型医療施設の方が介護サービス費が高くなる傾向があります。
もちろん上記は参考なので、両施設とも、上記以上に高くなることがあります。また、月額費用に十数万円も払えない、という方向けに負担限度額認定制度というものもあります。
介護療養型医療施設と老健入居条件は同じ?
介護療養型医療施設、老健ともに介護保険施設ですので入居に制限があります。
両施設の入居条件は以下のようになっています。
介護療養型医療施設(療養病床) | 介護老人保健施設(老健) |
65歳以上の要介護1以上の方 (40~64歳の特定疾病に罹っている方) |
65歳以上の要介護1以上の方 (40~64歳の特定疾病に罹っている方) |
両施設とも要介護度による入居条件は変わらないのですが、施設ごとに設けられている入居判定会議によって入居の可否が決まります。
入居判定会議では希望者の入居を、各施設の施設長や専門職の方が
「容態が安定しているか?」
「感染症にかかっていないか?」
などの視点から、要介護度も含め総合的に判断します。
一概には言えませんが参考までに、入居判定を通りやすい(可決されやすい)方の容態をご紹介させていただきます。
療養病床の場合…急変の可能性はあるが容態は安定しており、脳卒中の後遺症などによって長期の治療が必要な要介護3~5の方(感染症に罹患している場合でも可能)
老健の場合…容態が安定しており、歩行訓練などリハビリによって身体機能回復、在宅復帰の見込みがある要介護1~5の方。
施設の人員配置や施設設備の違い
両施設とも医療ケアが充実していることはお分かりになられたでしょう。
次は両施設の人員配置や施設設備を比較していきます。
上記は人員配置を比較した図です。
介護療養型医療施設の方が病院的な性質を持つため、医師や看護職員の配置の割合が高くなっています。
また、こちらの図は両施設の施設設備を比較したものになっています。
老健は在宅復帰を目指す施設だけあり、入居者の活動するスペース(食堂や機能訓練室)は広くなってます。
それぞれどのような方が入居されているか?
ここまでご説明させていただきましたが、意外と違いがわかりづらい介護療養型医療施設と老健。
さらに両施設の要介護度による入居条件は要介護1以上に関わらず、介護療養型医療施設の入居者の9割が要介護3以上、老健の入居者の8割が要介護3以上となっており、介護保険法によって定められている数字だけでは実態がつかみにくくなっています。
そこでここでは実際にどのような方が入居されているのかをご紹介させていただきます。
今、ご家族の入居を検討されている方は、例をもとに入居施設を決めるご参考にしてください。
介護療養型医療施設に入院されるケース
何らかの病気により大きな総合病院に運ばれ、急性期を過ぎた後に転院される方が多いです。
例えば、脳梗塞を発症した後に総合病院に運ばれて手術される方がいます。
術後は、介護より医療が重視されているので引き続き機能回復に向けてのリハビリテーションが行なわれたり、脳梗塞の経過を医療的視点から観察していただきます。
そして、数日間の急性期が経過するのを待ち、容態がある程度落ち着いた後に介護療養型医療施設に入院されることになります。

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老健に入居されるケース
全面的な介護支援よりも少しだけ医療的な支援が必要な方が入居される方が多いです。
例えば、先ほどの脳梗塞の方が在宅復帰に意欲を見せるようになった場合、その家族が高齢であるなどの理由から身の回りのことが十分できるか不安な際に、一時的に老健を入居されるケースがあります。
老健で在宅復帰の見通しがつけば、そのまま自宅に戻られたり、在宅復帰は難しいと感じた際には施設所属のメディカルソーシャルワーカー(MSW)に聞いてみましょう。
MSWはお近くの特養やグループホームを調べ、移動の手助けをしてくれます。

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介護療養型医療施設は廃止が決定しています
2019年現在、介護療養型医療施設は2023年までに全棟廃止、介護療養型老人保健施設や介護医療院への転換が決まっています。
本来であれば「介護医療院と老健の違い」を取り上げるべきなのですが、介護医療院についての詳しい情報が、まだ収集できてないので今回は「(前身である)介護療養型医療施設と老健の違い」について記事を書かせていただきました。
介護医療院について詳しくしりたい方は、老健との違いについても少し触れていますので、ぜひ以下の記事をご覧ください。
まとめ
介護療養型医療施設と老健の違いについてまとめさせていただきました。
病院的な性質を持つ介護療養型医療施設と介護施設の性質を持つ老健ですが、実際はどちらも社会的入院をする入居者が増えています。
そこで療養病床では、医療ニーズの高い患者に看取りやターミナルケアを中心とした長期療養を行う「療養機能強化型療養病床」を創設したり、老健では在宅復帰に力を入れる「強化型老健」を創設し、それぞれの施設の役割を明確にしていく取り組みを始めています。
療養病床が今後、介護医療院や介護療養型老人保健施設に変わるのもその一環と言えるでしょう。