介護療養型医療施設でかかる費用とは?減額ができる制度や特養や老健との費用比較まとめ
介護療養型医療施設とは、慢性的な症状を抱え長期療養を必要をしている要介護1以上の方が、介護や機能訓練(リハビリテーション)とともに長期的な医療行為を受けることができる病院です。
同じ介護保険の対象である特養や老健と比べてそれほど聞き馴染みはありません、多床室もあり比較的費用を安く抑えられるため、医療行為を必要としている要介護者にとって重要な医療施設となっています。
そこでこの記事では介護療養型医療施設に入ることを検討しているという人に向けて、介護療養型医療施設でかかる費用について詳しく解説していきます。
といった疑問を解説していきます。
目次
介護療養型医療施設でかかる費用と内訳

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介護療養型医療施設は医療法人や地方公共団体等が設置する公的な病院であり、入院一時金などの初期費用は一切かかりません。
月額の費用に関しても目安は約7.5~14万円となっており、民間その他の老人ホームと比べて費用は安くなっています。
介護療養型医療施設に入院した際に月々必要となる費用の内訳は以下のとおりです。
- 介護保険サービス費(施設介護サービスの基本費用+サービス加算)
- 居住費
- 食費
- その他費用(病衣のレンタル費用、医療費、日常生活費、娯楽費、雑費など)
また、これに加えて装具などの購入が必要な場合があります。
装具は、機能訓練で使用されるものであり、特養などに比べると購入の必要性が高いです。
装具の費用はどのような種類か、保険等に該当するかどうかなどによって金額は大きく変わってきます。しかし、通常全て自己負担で数万円もかかるということはないでしょう。
そのため費用の構成は下記の画像のように、介護保険サービスの1~3割の自己負担の金額と、居住費、食費、装具などのその他の費用が月額費用となります。
介護保険を利用できる費用はどれくらい?

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介護保険は施設の介護サービス費用に適用されます。
介護療養型医療施設では病院のサービス計画に基づいて、介護や機能訓練(リハビリテーション)、看護、療養上の管理・支援を受けることができますがこれらは介護保険が適用され、入院者が支払う費用(自己負担額)は1~3割となります。施設介護サービスの基本費用にはおむつ代も含まれています。
施設介護サービスの基本費用はどのくらい?費用と計算方法を解説
介護療養型医療施設で受けられる病院介護サービスにかかる費用の目安は月々約2.3~4万円です。
ただし、病院介護サービスの基本費用は病院や居室のタイプ、入院者の要介護度によって変わります。
というのも、介護療養型医療施設には重篤・身体合併認知症の患者やターミナルケアを必要とする患者の割合などによって「療養機能強化型A・B・その他」に分類されており、それぞれ分類された病院のタイプによって病院介護サービスの基本費用は異なります。
以下、1日当たりにかかる病院介護サービス費用の一覧表になります。
療養機能強化型A
個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護1 | 669円 | 778円 | 795円 | 795円 |
要介護2 | 777円 | 886円 | 903円 | 903円 |
要介護3 | 1,010円 | 1,119円 | 1,136円 | 1,136円 |
要介護4 | 1,109円 | 1,218円 | 1,235円 | 1,235円 |
要介護5 | 1,198円 | 1,307円 | 1,324円 | 1,324円 |
療養機能強化型B
個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護1 | 659円 | 766円 | 785円 | 785円 |
要介護2 | 765円 | 873円 | 891円 | 891円 |
要介護3 | 995円 | 1,102円 | 1,121円 | 1,121円 |
要介護4 | 1,092円 | 1,199円 | 1,218円 | 1,218円 |
要介護5 | 1,180円 | 1,287円 | 1,306円 | 1,306円 |
その他
個室 | 多床室 | ユニット型個室 | ユニット型個室的多床室 | |
要介護1 | 641円 | 745円 | 767円 | 767円 |
要介護2 | 744円 | 848円 | 870円 | 870円 |
要介護3 | 967円 | 1,071円 | 1,093円 | 1,093円 |
要介護4 | 1,062円 | 1,166円 | 1,188円 | 1,188円 |
要介護5 | 1,147円 | 1,251円 | 1,273円 | 1,273円 |
参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 介護療養型医療施設」
一例を挙げると、要介護3の方が療養機能強化型Aの個室に入院した場合にかかる費用の計算方法は下記のようになります。
1,010円×1ヶ月間(30日間)=30,300円
基本費用に加算されるサービスにかかる追加費用は?
介護療養型医療施設では上で説明した病院介護サービスの基本費用に加えて、病院によって実施しているサービスに対して費用が加算される場合があります。
このことを『加算が算定される』といいます。
サービス加算として算定される項目にはさまざまなものがありますので、以下で主なサービスをご紹介します。
- 排せつ支援加算(100円/1日)
排せつに介護が必要な患者に対して、多職種のスタッフが共同で排せつ支援を計画、実施しています。 - 療養食加算(6円/1食)
患者は年齢や心身の状況などを考慮して管理栄養士や栄養士により適切に管理された療養食の提供を受けることができます。 - 栄養マネジメント加算(14円/日)
患者の栄養状態を保つため、管理栄養士による栄養マネジメントや栄養改善サービスを実施しています。 - 認知症ケア加算(76円/1日)
認知症ケアに必要な病院・設備基準を満たしており、認知症高齢者に対して適切な介護や機能訓練(リハビリテーション)などのサービスを提供しています。
介護療養型医療施設ではこの他にも病院によってさまざまなサービスが実施され、加算が算定されています。
介護保険サービスは施設介護サービスの基本費用だけではありません。
入院する前に介護療養型医療施設ではどのとうなサービス実施されており、どれくらい費用が追加されているのかを確認しておきましょう。
また、入院後に新たにサービスが実施されることで費用が多少上がる場合があるということも認識しておきましょう。
介護療養型医療施設でかかる介護保険適用外の費用とは

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介護療養型医療施設の入院費用として全額自己負担が必要であるものは大きく居住費、食費、その他費用の3つに分かれます。
- 居住費は病院の滞在費や水道光熱費などを含む費用で、多床室であれば比較的費用は安く抑えられ、個室にすると費用は上がっていきます。食費は3食分の食費が1380円と決められているため、一律でその費用が発生します。
- その他にかかる費用は日常生活費や娯楽費、理容費、洋服代、雑費などで、病院では提供されないものが多いため必要な場合は自分で準備する必要があります。
介護療養型医療施設の費用を減額できる制度
介護療養型医療施設では、所得や資産額、支払った費用の合計額などによって「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」や「高額介護サービス費用」、「医療費控除制度」などの費用を減額できる制度を利用できる場合があります。
それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)
介護療養型医療施設に入院した場合、所得や貯金額などによっては通常は全額自己負担となる「居住費」「食費」を公費で負担して貰える「特定入所者介護サービス費(負担限度額認定)」を利用することができます。
一定の条件によって対象者は区分され、その区分に応じて1日あたりの食費と居住費の負担限度額が決められています。対象者の区分は下記の表のように1~4段階に分かれており、第1段階が負担限度額が小さく設定されているため費用が安くなる傾向になります。。
設定区分 | 対象者 |
第1段階 | 生活保護者など。 世帯全体が市町村民税非課税で老齢福祉年金を受給している |
第2段階 | 世帯全体が市町村民税非課税で本人の公的年金額+合計所得が80万円以下 |
第3段階 | 世帯全体が市町村民税非課税で第2段階の条件に当てはまらない方 |
第4段階 | 上記第1段階から第3段階に当てはまらない方 |
第4段階の方の食費が一日当たり1,380円であるのに対して、第1段階に該当する方の食費は300円、第2段階は390円、第3段階は650円となっています。
居住費に関しても下記の表のように第1段階は一日当たりの負担額が少なくなっており、段階的に上限額が上がっています。
高額介護サービス費用
介護療養型医療施設は介護保険証を使うため、医療保険による高額医療費の対象とはなりませんが、その代りに「高額介護サービス費用」の対象となります。
この制度は、介護療養型医療施設のように介護保険が適用されるサービスを利用した際に支払った負担額の合計が自己負担額の上限額を超えた場合、「高額介護サービス費用」として申請することで超えた分の費用の支給を受けることができるという制度です。
自己負担額の上限額は下記の表のようになっています。
所得区分 | 上限額 (月額) |
現役並所得者(課税所得145万円以上)に該当者がいる世帯の方 | 44,400円(世帯) |
世帯のどなたかが市民税を課税されている方 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市民慈恵を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
世帯の全員が市民税を課税されていない方のうち
・老齢福祉年金を受給している方 ・前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額※3」の合計が年間80万円以下の方 |
24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護等を受給されている方 | 15,000円(個人) |
療費控除制度
医療費控除制度とは生計を一にする家族のために支払った医療費(医療控除の対象になる費用を含む)が10万円を超えた場合には、確定申告の際に税務署に申告すると支払った費用の一定額(税金)が戻ってくるという制度です。
介護療養型医療施設などの介護保険制度下で入院してサービスを受けれられる病院では、病院サービス(介護保険サービス費用+食費+居住費)が医療控除の対象となります。
参考:国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での施設サービスの対価」
介護療養型医療施設の費用と特養や老健の費用の差は?
医療行為に対応していることや長期的な利用が可能であることなどにより、介護療養型医療施設は特養や老健と比べると少し費用が上がります。
以下の表は実際に介護療養型医療施設、特養、老健の1ヶ月(30日間)にかかる病院介護サービスの基本費用を比較したものになります。
介護療養型医療施設・特養・老健の費用比較(多床室の場合)
介護療養型医療施設A型 | 特養 | 老健 | |
要介護3 | 33,570円 | 20,850円 | 26,310円 |
要介護4 | 36,540円 | 22,890円 | 27,840円 |
要介護5 | 39,210円 | 24,870円 | 29,430円 |
費用だけをみれば介護保険病院のなかでは若干高くなるものの、介護療養型医療施設は慢性的な医療・看護が必要な方を対象にしているなどそれぞれの病院によって特性があります。
介護療養型医療施設に入院する場合、ケアマネジャーなどから提案された療養型のなかから選ぶことが多くなりますので、ケアマネジャーと相談して患者にあった病院に入院しましょう。
特養と老健の費用についてもっと詳しく知りたい方は以下を参考にしてください。
まとめ
ここまで介護療養型医療施設の費用についてまとめてきました。
介護療養型医療施設は同じく医療行為が受けられる老健と比べて費用は少し上がるものの、長期の利用が可能で医療行為もより専門的に受けられる病院になります。
ただし、介護療養型医療施設は2023年に全面撤廃が決まっており、その代わりとして介護医療院が設立されています。
介護療養型医療施設として使われた病院が介護医療院として開設される場合でも、一旦病院を離れて移動する必要がでてきます。
病院主体が転居先を探して提案してくれることも多いですが、これから介護療養型医療施設に入られる方も既に入院されている方も、早めに移動先の老人ホームを探しておくことをおすすめします。