「もう歳だから」と諦めていた高齢者に感動を与える 介護付旅行サービス「夢たび」とは
「まだ行きたい場所がある、まだ見たい景色がある───。」
でも、もう私は歳をとって介護が必要になっている。もう一人じゃ出かけられないし、そんな状態ではできることも少ない。ましてや旅行に行くなんて…。
その時感じるのは”諦め”の感情。
でも、もし介護が必要な方でも旅行に行けるとしたらどうでしょうか?
憧れていた場所に行き、みたい景色を見る。そのときに感じるのは純粋な”喜び”、そして彼、彼女はきっと笑顔でしょう。
必要なのは出かけたいという気持ちと、少しのきっかけです。
今回はお出かけしたいけど諦めている…そんな高齢の方や体の不自由な方がその夢を形にする介護付旅行サービス「夢たび」について株式会社秋吉さんにお話を伺いしました。
主に不動産事業を柱としながら、2010年には介護事業や保育事業を行う株式会社テイクケアライフを設立。現在は、新たに高齢者の旅行を支援する「介護付旅行サービス 夢たび」を展開し、活動の範囲を全国に広げている。
目次
諦めていた”夢”を叶える介護付旅行サービス「夢たび」
─── 御社で行われているサービスを教えて下さい。
株式会社秋吉が提供する「夢たび」では介助や介護を必要されている高齢の方やお身体の不自由な方でも安心してご旅行に参加いただけるよう、ご旅行中の介助・支援サービスを提供しております。
また旅行だけでなく、孫の結婚式に参加したい、お墓参りに行きたい、同窓会に参加したいなど、お出かけの際の外出サポートなども行っています。
旅行とは非日常の時間です。普段の生活から離れて非日常の時間を過ごすことで、癒やされ、明日への活力ともなります。それは介助や介護を必要とする高齢者や障がい者にとっても同じなのです。

提供:夢たび
─── どうしてこのようなサ-ビスを立ち上げられたのですか?
もともとは在宅介護支援サービスを提供していたのですが、ご利用者である高齢者の方とお話をしたときに「旅行に行きたい。でも一人では行けないし、家族に迷惑がかかってしまう。」というお話を聞きました。その高齢者の方の夢を叶えてあげたいという想いがきっかけで「夢たび」のサービスをスタートしました。
しかし最初は全く上手くいきませんでした。
旅行業の資格は取ったものの、そもそもどうやって旅行の企画や手配をするのか分からない…。いつもはバリアフリーの環境で仕事をしているけれど、一歩外に出たら段差だらけでどう介助してよいか分からない…。現場のシフトを回すのに精一杯で「夢たび」に同行できる人手に余裕なんてない…。
文字通り問題は山積みでした。
そんな時、あるご家族様からご相談を受けました。
「ALS(筋萎縮性側索硬化症)の夫の夢を叶えてほしい。」
その夢とは、「まだ小学生の息子さんのサッカーの試合を見に行きたい」というものでした。
しかし、喉には人口呼吸器もついており、かなり重度の方だったので十分な体制と安全を確保できず、私たちはその夢を叶えることができませんでした。
その時の「悔しさ」と「無力感」は今でも忘れません。しかし、その想いが今の私たちの原動力となっています。そこから「夢たび」は生まれ変わりました。
─── そんなエピソードがあったのですね…。では、そのように介助・介護が必要な方でも旅行していただくために、夢たびでは具体的にどのようなサービスを提供していただけるのでしょうか?
夢たびをご利用されるお客様のご要望やご体調は一人ひとり違います。
そこで夢たびでは、事前にご本人やご家族の方とお会いしてお客様のご希望やご体調などをお伺いしつつ、お客様に合った旅行プランの企画から介護旅行全般の手配、担当ヘルパーによるご旅行中の介助・支援まで、介護を必要とするお客様が安心してご旅行を楽しんでいただくための全面的なサポートをしております。
■「夢たび」の主なサービス
- 事前相談・面談 及び 旅行プランの作成
- 旅行に伴う手配(車両・宿泊先・レンタル備品・ヘルパー)
- 必要な介助すべて(移動・食事・更衣・排泄・入浴)
- 旅行手続きの代行
- 薬の服薬管理
- 夜間介助・同室介助
当日は要介護のお客様ひとりに対し、専門資格を持った「夢たびヘルパー」が1人以上同行し、ご旅行をエスコートいたします。
旅行やお出かけを実現させる「夢たびへルパー」の存在
─── 夢たびへルパーとは何ですか?
「夢たびヘルパー」はお客様の夢をカタチにする、ご旅行中のお客様のパートナーです。夢たびヘルパーは全員が介護福祉士や社会福祉士、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)などの介護の専門資格を持っており、現役で介護職に従事しておりますので、要介護の方でも安心して旅行を楽しんでいただけます。
さらに夢たびでは独自に「入浴」「外出支援」「接客接遇や旅行業の知識」などの専門研修をおこなっており、夢たびペルパーはそれらの研修を受けた者に限定しています。
実際のホテルの大浴場を使った入浴研修では、シャワーキャリーなどを活用しより安全に入浴していただく事はもちろん、他のお客様にも配慮し、お身体に負担のない介助方法を学んでいます。
また、外出支援の研修では高齢者になり変わる疑似体験セットを着用し、実際に外へ出て行います。いつもバリアフリーの環境で仕事をしている私たちにとっては大変気付きも多く、日々の介護現場でも活かされています。
そして、接客接遇や旅行業の知識を習得するための座学研修。介護業界と旅行業界では求められるサービスは違います。私たちは旅に同行するプロとしてその違いをしっかり理解し、お客様にご満足いただけるサービスをご提供します。

提供:夢たび
─── 家族も一緒に参加できますか?
もちろんです。お客様のなかには家族での旅行の際に「夢たび」をご利用される方が多くいらっしゃいます。
「旅行を楽しむ」ことは高齢者や障がい者、そして家族にとっても喜びです。
特に普段在宅で介護をしており、なかなか家から離れられないご家族様は、夢たびを利用することにより旅行先で日頃の介護疲れをリセットされ心身ともに元気になられます。
その結果、在宅での介護生活が継続され、介護が必要なお客様にとっても大好きなご自宅でより長く生活することができているようです。
旅行プランはお客様の数だけ
-旅行プランにはどのようなものがあるのですか?
株式会社秋吉は北海道を拠点に活動しておりますので、北海道在住のお客様に対する道内および道外への旅行支援が中心でしたが、関東圏や関西圏のお客様からのお問い合わせを多くいただくようになり、現在は道外での夢たびヘルパーの増員および配置や旅行プランを用意しております。
今回は夢たびで提供している関東圏のモデルコースをいくつかご紹介させていただきます。
■世界の建造物/所要時間6時間30分
ご自宅(都内23区)⇒東京カテドラル聖マリア大聖堂(50分)⇒築地本願寺(50分)⇒昼食:築地場外(80分)⇒東京ジャーミィー・トルコセンター(50分)⇒ご自宅(都内23区) ■文学と芸術/所要時間6時間 ご自宅(都内23区)⇒相田みつを美術館(60分)⇒国立西洋美術館(120分:昼食含む)⇒根津美術館(60分)⇒ご自宅(都内23区) ■花と動物/所要時間6時間30分 ご自宅(都内23区)⇒新宿御苑(70分)⇒吉祥寺周辺ホテルにてランチバイキング(90分)⇒井の頭自然文化園(動物園)(60分)⇒ご自宅(都内23区) |
旅行プランをつくる際にはできるだけお客様のご負担にならないよう、移動の距離や時間、観光地での車いすトイレやバリアフリー環境、移動中のトイレ休憩の回数などにもこだわっています。
また、天候によってサービスの質ができるだけ左右されないよう、雨天でもあまり影響のないコース設定をしています。
─── プランにあるコース以外で希望する場所に旅行することはできますか?
こちらでご用意しているプランにない場所であっても、発着が国内であれば、全国どこへでも旅行することが可能です。
夢たび専属の旅行プランナーがお客様の想いに耳を傾け、電話やメールもしくはFAXでやり取りをし、お客様の希望をできる限り実現できるよう旅行計画を作成します。
しかしご希望のところが必ずしもバリアフリー対応されているとは限りません。また、バリアフリー対応といっても実際は手すりが片方にしかなかったり、スロープがあっても急すぎて一人もしくは力のない介助者だけでは上れないケースもあります。
そのため、車を降りてから目的地までの移動距離、道が舗装されているか、段差の高さ、スロープの傾斜角度、湯船のタイプ(脚を上げて入るタイプか脚を下げて入るタイプか)や高さなど細かい部分まで事前に調査し、どの程度介助・介護が必要なのかを把握したうえで、お客様に無理なく楽しんでいただけるよう、できる限りの配慮をしています。
「生きててよかった」70年ぶりに故郷を訪れた宮城県在住・80歳男性の声
─── 実際のお客様の声を教えていただけますか?
昨年の年末に、宮城県在住のお父様・娘様の「横須賀・鎌倉1泊2日の家族旅行」をご支援しました。
ご依頼いただいたのは、8月の中旬。「約70年ぶりに故郷である横須賀に行きたい」とのお父様の気持ちを娘様が叶えてあげたいという想いからはじまりました。
お父様は戦争による疎開で横須賀を離れなくてはならず、それからお戻りになっていないとのことでした。
その時はまだお考えはざっくりとしたものでしたが、事前の面談を重ねていくなかで次第にご要望が固まり、ご納得いただきながら進めていき、当日を迎えました。
1日目は東京駅の新幹線ホームにて夢たびヘルパーとお待ち合わせをし、そこから介護タクシーで横須賀へ向けご出発。横須賀にご到着後、まずは『どぶ板通り』を散策。続いて戦艦三笠が記念艦として保存されている『三笠公園』へと向かいます。
お父様が小学生の時に戦艦三笠の清掃をしていたとのことで、車椅子から杖歩行に変え、しっかりとご自身の足で歩かれて、非常に感慨深げにご覧になっていました。
お父様は大変お喜びになり、何枚も記念撮影されていました。

提供:夢たび
そこから隣接の三笠桟橋よりフェリーで『猿島』へ向かいます。
その後、お父様が幼少期に泳いでいたという馬堀海岸から長浦港を車で回り、鎌倉のホテルへご到着。
2日目はホテルよりご出発し『鎌倉大仏殿高徳院』・『鶴岡八幡宮』を訪れ、おみくじやお土産購入、記念撮影をされました。
昼食は江の島へ移動し、バリアフリー対応の店内にて、金目鯛の煮付定食をお召し上りになりました。

提供:夢たび
最後は東京駅にて新幹線車内の座席まで誘導をし、ご挨拶させていただき同行終了でした。
ご旅行後、娘様から『大変満足しております。サポートの、素晴らしさに感動しております。
本人は「生きていて良かった!」と、話しておりました。何ものにも変えがたい時間でした。ありがとうございました。感謝します。』とのお声を頂きました。
最近のご様子を伺うと、お父様は早くも「次はここに行きたい」とおっしゃられていて、気持ちがとても前向きになっているとのことでした。
夢たびの存在意義を凝縮したようなお言葉をいただいたことに、夢たびスタッフ一同、非常に嬉しい限りです。
想いを叶えるお手伝いができたことに、私共の方こそ「ありがとうございました」と申し上げたいです。

提供:夢たび
超高齢社会で「夢たび」が描く高齢者の今後の未来
─── 夢たび様は高齢者の方にどう過ごして欲しいと考えていらっしゃいますか?
歳をとるといろんなことに対して億劫になってしまう方が多くいらっしゃいます。
特に70代以降になると身体的な機能の低下が目立ち、旅行に行く方が減り、旅行に行く回数が減ります。
しかし夢たびは年老いていくことによっていろんなことを我慢し諦める人生ではなく、歳を重ねるからこそワクワクする、そんな明るい未来を過ごしていただきたいと思っています。
そのために、我々はその夢の実現に向けて全力でサポートさせていただきます。
─── 夢たび様の今後のビジョンについて教えてください。
夢たびは2020年2月27日に大阪にて開催された「第九回介護甲子園の決勝大会」では、全国7671事業所のうち在宅部門で最優秀賞(日本一)に輝きました。
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提供:夢たび
この大会にエントリーした目的は、我々の活動や想いを皆さまに知っていただきたいという事は勿論ですが、それ以上に「こんなサービスがあるんだ、これならウチの事業所でもできるかもしれない」と共感してくれる仲間が全国にもっともっとたくさん増えたらいいなと思ったからです。
そしてそれは、全国で介護旅行に携わっている方々と協力し、誰もが安心して行きたい時に行きたい場所に行ける世の中を早く創りたいと考えているためです。
そのために、まずは北海道から関東・関西へ、そして全国へと夢たびの拠点を拡げていこうと考えています。
また、ゆくゆくは海外の介助や介護が必要な方々も安心して日本観光を楽しめるように受け入れ体制を整えていきたいと思っています。
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今回は高齢者が「旅行したい」「お出かけしたい」という夢を諦めなくていい、歳を重ねるからこそワクワクできる、そんな将来の実現に向けて介護付旅行サービスを提供していらっしゃる株式会社秋吉さんをインタビューしました。
高齢や障害により旅行やお出かけを諦めざるを得なかった方、そんな家族を旅行に連れて行ってあげたいと考えている方。
もう一度言いましょう。必要なのは出かけたいという気持ちと、少しのきっかけです。
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