【徹底取材】障がい者や高齢者でも当たり前に運動できる社会を創出する!ユニバーサルトレーニングセンターとは!?
「障がいや高齢による体の不具合があっても体は必ず良くなる─────。」
病院での診断後、申告される「もう歩くことは難しいかもしれない」、「3ヶ月間リハビリを行って回復の兆しが無ければあきらめた方がいい」という言葉は本当なのでしょうか?
本当に回復の見込みがなく、寝たきりや車椅子での生活をし続けなければいけないのでしょうか?
今回はそんな疑問を解消しようと、専門的なリハビリで障がい者や高齢者の機能改善に努めるユニバーサルトレーニングセンターの菅原さんにお話を伺いました。
卒業と同時に、米国NATA公認アスレチックトレーナー資格(ATC) 取得。
その後米国プロサッカーチーム スポルティングカンザスシティーのトレーナーとして活動し、チームを優勝に導く経験をする。
日本に帰国後、脊髄損傷者向けにトレーニング指導を行ない、2016年にはリオパラリンピックの日本選手団HPSC トレーニング部門の指導員として活動。
その後2019年にユニバーサルトレーニングセンターを設立。
目次
機能改善を目的としたリハビリトレーニング
─── 御社で行っている取り組み(サービス)を教えてください。
ユニーバーサルトレーニングセンターでは、障がい者や高齢者へトレーニングを行い、機能改善を目指しています。
世の中には健常者向けの運動やトレーニングというのは非常に多いですが、障がい者や体力の落ちている高齢者向けのサービスはほとんどありません。
そのような方達こそ本来は機能改善のために運動が必須になるのですが、中には「車椅子の方や障がい者のご利用はお断り」のようなトレーニング施設も多くあります。
そこで我々は障がいがあっても健常者と同じ条件で運動ができる機会を提供することにしました。
─── リハビリや運動というと、病院が提供している印象があるのですが…
病院や老健(介護老人保健施設)では受け入れ人数が多い関係でどうしても「3ヶ月という時間の中で回復の見込みがあるか?」という基準でリハビリを行うかどうかが決められます。
また、病院や老健だと週40分くらいのリハビリを行なっているところが多いですが、40分だけだと機能維持はできても改善まではできないことが多いです。
その為我々は、50分、90分、120分のトレーニングコースを用意し、重点的かつ長期的にトレーニングできる運動機会を提供しています。
利用者はそれぞれ全く異なる障がいや運動機能をお持ちですので、全ての人が「補助なしで歩けるようになる」といった同じ目標を掲げていただくのではなく、利用者様それぞれの目標に対して一緒にリハビリしていくようにしています。
プロスポーツ選手並みに運動に励んでいる人々への気付き
─── なぜ、このサービスを立ち上げようと思ったのですか?
もともと私は米国のスポーツチームのトレーナーとして活動していたのですが、日本に帰ってきた際にプロスポーツ選手並みにトレーニングに一生懸命励んでいる方がいらっしゃることに気が付きました。それは障がいのある方々でした。
そのことに気づいてから「何か自分でもできることはないか?」と考え、様々な現場で経験を積み、スポーツ科学の視点とリハビリの観点の両方から障がい者を長期的にケアしていきたいと考えて、ユニバーサルトレーニングセンターを設立しました。
─── 確かに近年パラリンピックなどもTVなどで注目されていますものね。
パラリンピックなどで障がい者の活躍や成果に注目されることは前より多くなりましたが、実はパラアスリートではない方にとっては逆に世間からの風当たりが悪くなるということもあります。
障がい者にとってパラスポーツというのは、特殊な存在なのです。
健常者にとってのスポーツは一般的に余暇のスポーツとトップレベルのスポーツという2種類に分けられます。
しかし、障がい者にとってはリハビリでのスポーツ、余暇のスポーツ、そしてトップレベルのスポーツと3種類になります。
そしてリハビリでのスポーツとトップレベルのスポーツは次元が全く違うのにも関わらず、一般の方の多くはパラスポーツというとリハビリの一環であると勘違いをしてしまうのです。
これが大きなギャップにつながります。
パラリンピックばかりが注目されたことにより「パラの選手がこれだけ頑張っているんだから、あなたもやればできるでしょ。」と言ったような間違った認識をもたれることが多くなってしまいます。
障がいの状態はそれぞれ異なる為、それぞれの状況に合わせたトレーニングや対応が必要になのです。
高齢者でも機能改善への意欲が驚くほど高い
─── サービスを受けられている方の年齢層はどのようになっていますか?
今は主にウェブサイトと口コミで集客を行っており、弊社のトレーニングを利用されている方は30代~40代の方が多いですね。
ただ高齢による体力低下や脳卒中などの後遺症で運動障がいがある方々が多くなってきているので60代~80代の高齢の利用者も増えてきています。
─── 現在サービスを受けられている方の最高齢はおいくつですか?
今、最高齢の利用者様は71歳の方ですね。
高齢になって転倒されて足を悪くしてしまう、脊髄損傷してしまい下半身が麻痺しまうといった方が多いです。
高齢者はあまり回復の見込みがないと思われている方も多いのですが、むしろモチベーションの高い高齢者も多く、回復は同じように期待できます。
というのも、高齢の方が我々のサービスを利用する時に「自分が動けないことによって家族に迷惑をかけたくない」「娘に迷惑をかけないように、ひとりで歩けるようになりたい」という理由をもっている方が多いのですよね。
その分「早く治したい」という思いが大きいので、一生懸命に長くトレーニングされる方が多いように思えます。
また高齢になり脳卒中など罹患して、半身麻痺などになってしまう方もいらっしゃいますが、回復の度合いは人それぞれですが、しっかりトレーニングを行っていけば必ず機能改善はします。
プロチームのトレーナーよりも今の仕事の方が達成感がある
─── 一番印象に残っている患者さんの話を伺えますか?
どの方も印象に残っていて、一番というのは難しいですね…
病院退院後に弊社のサービスを利用された65歳の方も結構印象的でしたね。
その方は両足に麻痺を患っていまして、担当医師には「もう歩くことはもちろん、立つことさえ難しい」と診断されていたようです。
私が始めて看させていただいた時も足を全く動かすことはできませんでした。しかしながら、自宅で一生懸命トレーニングを重ねる内に、補助ありですが立つことができるようになったのです。

その後、補助なしで手すりを使って立つことができるようになり、現在では立つ事だけでなく、補助なしで歩くことが出来る様になりました。
今では30m程歩くことができるようになって、その時に仰っていた「先生のおかげで歩くことができた。こんなことができるようになるなんて夢にも思わなかった。」という台詞は、僕にとって最高の喜びでしたね。サッカーチームのトレーナー時代とは比べ物にならないくらいの達成感を味わえましたよ。

これからは障がい者や高齢者が働きやすい環境を整えなければならない
─── これからの社会は、どのように対策していくべきだとお考えですか?
高齢化の影響もあり、今より多くの高齢者・障がい者が増えてくると思います。そのうえ少子化によって、支える人はどんどん少なっていきます。
その解決策として、まず高齢者や障がい者でも、働いて会社の戦力になるような仕組みを国や企業がつくっていかなければいけないと考えています。
現在国や地方公共団体では2.5%以上の民間企業では2.2%以上の障がいのある方の雇用を障がい者雇用率制度によって義務付けています。2021年には更に0.1%増え、民間企業では2.3%の雇用が義務つけられます。
しかし、せっかく雇用しても障がいに対する理解やケアが不十分で退職されてしまう方が多くいらっしゃるのが現状です。
そこで国や民間企業は、高齢者や障がい者のために福利厚生の一部として専門的なフィットネスを提供し、障がいがあっても働きやすい労働環境、働きやすい身体作りができる環境を作るべきだと考えています。そうすることで障がい者をただ雇用し雇用率の基準を満たすだけでなく、障がい者の戦力化、そして業績の向上に貢献することも可能だと考えています。
─── 確かに御社のような考え方が広まれば社会の人手不足も解消できそうですね。
我々は決して特別なことは考えていないですし、行っておりません。
ただ、障がい者が健常者同様の機会が与えられることだけ、人権として当たり前の事だけを望んでいます。
近年、健康経営は従業員の生産性を上げるため、けがや病気かからず健やかに長く働けるために唱えられている「健康経営」という考え方があります。
企業で働く方が、社員向けのトレーニング施設を利用できたり、産業医に定期的な面談を受けられたりなど、様々な運動機会や健康に働けるための環境が提供されるなど、さまざまな運動機会という福利厚生があります。
しかし高齢者や障がい者に対して、身体ケアを充実させ生産性を高めよう、長く居続けられる環境を作っていこうとする動きがほとんどありません。
そこで、企業が産業医と提携するように、今後の日本では我々のような専門的なトレーナーがもっと企業と提携していく必要があると考えています。
************
今回は、障がい者に運動機会を提供しようと努める菅原さんにインタビューさせていただきました。
今後は老人ホームなどで働く支援者向けのスポーツトレーナー経験から考える体を壊さない介助方法や、障がい者が企業で働きやすくなる労働環境改善などの講演も行なっていきたいと、菅原さんは考えていらっしゃいます。
ユニバーサルトレーニングセンターは去年設立したにもかかわらず多くの方が利用されており、医者に動かないと言われていた四肢を動かせるようになったという利用者様も多数いらっしゃいます。
「健常者でも障がい者でも、同じように運動機会があるべきだし、同じように活躍機会があるべきだと思っています。」と語っていた菅原さんはとても充実感にあふれ、楽しそうに働いていらっしゃいました。
↑フェイスブック登録はこちらから