老人ホームのトラブル事例4選!家族ができる対処方法と相談先を詳しく紹介

介護保険施設をはじめ、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの増加にともなって、老人ホームの入居者やその家族から各相談窓口に寄せられる苦情や相談は年々増加しています。

「毎月の費用がなぜか今月から増えているけど、理由が分からない。施設からも特に事前説明を受けていないし、どうなっているの?」

「突然老人ホームから退去するように言われた!契約の解約予告をされたけど、2週間以内に退居してほしいって…。そんなにすぐ次の老人ホームをみつけるなんてできない。

それに、結構な額の前払金を払ったのに、返還金も戻ってこない…。」

せっかく老人ホームを選んで契約手続きをして入居したのに、こんなトラブルが発生してしまうなんてことは起こってほしくないですよね。

なぜこのようなトラブルが発生してしまうのでしょうか。

この記事では老人ホームで起こりやすいトラブルの原因をまとめ、さらにトラブルが起こった場合に対処する方法をご紹介します。

 

老人ホームで起こりやすいトラブルは主に4つ

©ohayou!/stock.adobe.com

老人ホームに寄せられる苦情や相談。その内容は4つに分けることができます。

その4つのトラブルとは以下のとおりです。

  • 契約の内容に関するトラブル
  • 接遇に関するトラブル
  • 価格・料金に関するトラブル
  • 入居者間のトラブル

では、それぞれのトラブルがなぜ引き起こされてしまうか、何に気をつけるべきかを確認していきましょう。

 

契約に関するトラブル

©takasu/stock.adobe.com

実は老人ホームで起こるトラブルのなかでも特に多いのが「契約」についてのトラブルだと言われています。

老人ホームで発生したトラブルの割合

出典:公益社団法人 全国消費者生活相談員協会「老人ホーム関連トラブル110番報告書」

そして契約に関するトラブルには、「契約内容に対して発生するトラブル」「契約を解約した時に発生するトラブル」があります。

契約に関するトラブルは、大概が契約前のスタッフによる説明が不十分、もしくは契約者(サービスを受ける側)の知識不足や勘違いによって引き起こされます。

 

契約内容に対して発生するトラブル

「契約内容に対して発生するトラブル」は契約内容についてスタッフと入居者(または入居者の家族)との間に理解の差があることによって引き起こされるトラブルです。

トラブルの例

・「当初説明されていた月額費用で受けられるサービスの他に、いくつも有料サービスがあるなんて知らなかった。はじめにもっと追加費用を説明してくれたらよかったのに。」

・「無料だと思って参加していたイベントが本当は有料だった。毎月の予算より2万円もか高くなってしまった。」

特に注意したいのが、追加オプションや施設行事の参加にともなう追加費用について、入居者(入居者家族)が理解できているかという点です。

事業所によってはこれらのサービスを重要事項説明書において「利用者の個別的な選択によるサービス利用費」「その他の費用」という項目として説明しています。

月々にかかる固定の費用ばかりに目が行きがちですが、それ以外のところでどのような追加費用が設定されているのかをしっかりと確認しておきましょう。

契約の解約時に発生するトラブル

「契約の解約時に発生するトラブル」とは、退居時や契約の解約時に発生する月額費用の精算、費用の返還、原状回復費用などに関するものです。

トラブルの例

・「前払金として400万を払って入居したけどあんまり合わないと感じたので1週間で解約した。それなのに全くお金が返ってこない!」
・「生涯面倒をみてもらえると聞いたので入居したのに、閉所することになったと言われてしかたなく退居した。でも、経営者とは連絡がとれないし、お金も返ってこない。」

トラブルが発生する理由としては、スタッフの説明が不十分であったために入居者(入居者家族)の理解が出来ていなかったことや、双方の認識の行き違いがあります。

また、十分説明していたとしても説明の量が多く、契約者の頭に入らず、「そんなこと言いましたっけ?」となってしまうこともあります。

施設によっては、重要な契約内容を噛み砕いて別紙で説明してくれている場合もあるので契約内容をできる限り把握するよに意識しましょう。

解約時の手続きや返還金の計算方法については重要事項説明書に記載してあります。

とても重要な項目であるため、本来であれスタッフは入居者(入居者家族)に十分な説明をしなければなりません。入居者が説明を受ける際はトラブルを防ぐためにも細心の注意を払いましょう。

入居一時金の支払いが必要な施設においては、まれに原状回復の範囲が国交省の定める「原状回復ガイドライン」の指導指針から大きく外れている場合や、返還金の計算方法が違法である場合などがあります。

そのような場合は市区町村の相談窓口や消費生活センターなどに相談しましょう。

 

価格・料金に関するトラブル

©photobyphotoboy/stock.adobe.com

「契約」に関するトラブルに次いで多いトラブルは「価格・料金」に関するトラブルです。

この価格・料金に関するトラブルは「契約」に関するトラブルと重複している場合が多いです。

また、月額費用の一部が値上げなどに伴う金銭的な不安が原因となっているトラブルもあります。

トラブルの例

・「入居したら、最初に提示された金額よりも高く請求されて支払が出来なくなった。」
・「キャンペーン中に応募した人はずっと月々の費用を割引してくれると言われたから選んだのに、結局割引前の費用を請求された!」
・その他、契約の中でも費用に関するトラブル

これらのトラブルは契約前のスタッフによる説明が不十分であったことや事前説明とは異なる対応が取られたことによって引き起こされます。

金銭的な不安に悩まされないためにも契約時に支払い方式や入居一時金額、初期償却期間及び償却期間の設定、月額費用が値上げする場合などをきちんと把握し納得しておくことが大切です。

また、老人ホームに入居する前にあらかじめ予算の見通しを立てておき、少し余裕のある程度の料金設定をして施設を選ぶようにしましょう。

 

接遇に関するトラブル

©sebra/stock.adobe.com

3番目は接遇に関するものです。

これはつまりスタッフの態度や対応、サービスへの不満からおこるトラブルです。

入居者本人にとっても入居者の家族にとっても、その施設で働くスタッフがどのような人であるかというのはとても重要なポイントですよね。

トラブルの例

・「おむつを交換している最中にプライベートカーテンを開けたままスタッフ同士で会話された。不快だ!」
・「居室やベッド周辺が汚れたままになっていて、入居者本人もいつも汚れた服を着ている。」
・「スタッフが置時計等の物品を誤って壊したが、謝罪や弁償がない。」
・「面会に行っても挨拶をすることなく通り過ぎたり、わざと会わないように避けたりされる。入居者の状況についてスタッフに尋ねた際には言葉遣いも悪く、横柄な態度を取られた。」

争点としては、契約したサービスがきちんと提供されていない、ケアプランの内容自体が合っていない、認知症ケアをおこなってくれない、看取りをおこなってくれないなどがあります。また、スタッフによる入居者への暴力や介護ネグレクトなどの高齢者虐待もこれにあたります。

上記の1つ目の例のよう接遇は「不適切ケア」と言われ、これが酷くなると虐待にもつながります。

これらのトラブルは契約時の説明不足に加え、スタッフの不親切な対応により引き起こされています。

入居者家族からすれば入居者が施設のスタッフからより良いサービスを受けてほしいと思うことは当然ですよね。

しかしながら施設によってはサービスの質が担保されておらず、理想と実際のサービスに差がある場合があります。

トラブルの原因を避けるためにも、入居者や入居者家族が納得できるようなサービスを施設のスタッフがきちんと提供しているのかどうかを入居する前に確認する必要があります。

入居前にはできるだけ複数の老人ホームで見学や体験入居などをおこない、スタッフの対応やサービスがしっかり納得できる程度であるかを確認し、施設全体の雰囲気を確認しておきましょう。

 

入居者トラブル

©motortion/stock.adobe.com

老人ホームでのトラブルは何も老人ホームと入居者の間で起こるものだけではありません。

トラブルは「入居者同士」でも発生します。

トラブルの例
・「他の入居者さん同士で悪口を言われており、施設で生活しづらい…。」
・「隣のベッド方が夜間にずっとラジオを聞いていて夜寝られない。なんとかしてほしい。」
・「入居者間で喧嘩が発生。その時に一方が突き飛ばし、相手を怪我させてしまった。」

認知症の有無や要介護の程度などによって老人ホームにもさまざまな特性があり、それぞれの対象となっている方が集まっているとはいえ、入居者はそれぞれ性格も考え方も違うのはあたりまえです。入居者同士での合う合わないなども当然出てくるでしょう。

そのため同室者への不満がつのったり、それが発展して入居者同士での陰口やいじめにつながってしまう、喧嘩した際にどちらかが怪我をしてしまうなどのトラブルが発生することがあります。

また、認知症でない方が認知症の方と必要以上に距離を置いて、利用者間の雰囲気が悪くなりトラブルに発展するケースもあります。

老人ホームを選ぶ際には見学や体験入居をおこない、その施設にどのような方が入居されているのかを確認すると同時に、ホームがどのような対応をしてくれるのかも確認しておきましょう。

特に多床室やユニット型個室など、他の入居者との距離が近い場合には注意が必要です。

もしも喧嘩により怪我が発生した場合には、怪我をさせた入居者側が慰謝料を払うとともに、場合によってはスタッフを含めた施設が注意義務違反に該当し法的損害賠償問題に発展してしまうこともあります。

入居した後にはできるだけ入居者家族は入居者の話を聞き、トラブルを回避していきましょう。そして、実際に入居者間でトラブルが発生しそう、または発生してしまった際にはまずは施設のスタッフにトラブルの内容を伝え、公平・公正な対応をしてもらえるよう促しましょう。

参考:利用者間のトラブルに対する施設の対応について

 

トラブルを起こさないためにおこなう5つのこと

©tamayura39/stock.adobe.com

ここまでは老人ホームで発生することが多い4つのトラブルについてみてきました。

しかしながらそれ以外が原因となっているトラブルもあります。

老人ホームへの入居後に発生するトラブルを防ぐために、おこなっておくべき5つのことをご紹介いたします。

入居者本人だけでなく、トラブルを防ぐためには家族がしっかりと老人ホームや入居者の状況の把握を行うことが大切です。

 

1.契約内容について十分な説明を受け、納得する

トラブルを引き起こす最大にして共通の原因は「契約内容の説明不足」といっても過言ではありません。これまでに見てきた4つのトラブルもここの確認がしっかりおこなえていれば防げた可能性が高いものがたくさんあります。

特に「費用に関すること」「解約・退居条件」については特に注意して確認しておくことが必要です。

入居前に契約内容について十分に確認しきれなかったと感じる場合にはトラブルが発生する前に契約書類(入居申込書、重要事項説明書、管理規定)をしっかりと再読し、疑問におもった項目に関しては面会などで施設に訪れる際にスタッフに確認しておきましょう。

2.契約内容が悪質でないかを確認する

契約内容は紛れもなく事業所が作成したものですが、悪質な施設のなかには、利用者側に不利な契約内容を設けている施設もあります。

しかし、一般の人にとって「自分に不利である」と気がつくことは難しいです。

そのため、契約をおこなう前に契約書や重要事項説明書を貰っておいて、担当のケアマネジャーに確認してもらったり、少しでも「おかしい…」と感じた場合は、自治体に確認してみるのもいいでしょう。

契約をする前段階から、慎重に動くということもトラブルを未然に防ぐ方法です。

3.見学や体験入居をおこない、実際にサービスを把握する

契約内容はよく理解したし納得できたという場合でも、書面だけでは実際にサービスがどのようなスタッフによってどの程度の質でおこなわれているかを把握することはできません。

それでは理想と現実の生活に差があった場合、入居後のトラブルが発生してしまう可能性が高くなってしまいます。

スタッフや他の入居者はどのような人たちかを把握し施設の雰囲気を掴むことで、入居後の日常生活のイメージを持つことができます。

サービスやスタッフの配置などは実際にうまくまわっているかなど現場の状況を確認しましょう。

信頼できるスタッフを見つけておくことも大切です。

例えば特養の場合は多くの施設で担当制でスタッフが付いています。このように担当がついている老人ホームでは担当のスタッフとの信頼関係を築くように心がけておきましょう。

施設の検討をおこなう際には、1つの老人ホームだけではなく、複数の老人ホームで見学・体験入居をおこない、施設の良さや悪さをはっきりと掴んだうえで選ぶようにしましょう。

4.施設に任せっきりにしない

トラブルを起こさないためには、施設にまかせっきりにしないことも重要です。

例えば、家族から連絡することはなく、施設からの連絡だけしか受けないなどの事態は避けましょう。連携もうまくいかないだけでなく、施設のスタッフもいい気分はしませんよね。

施設で開催される行事などにも案内があれば積極的に参加するようにしましょう。

また、職員への優しい声かけや気遣いも大切です。

「いつもありがとうございます」

「うちの母が迷惑かけます」

「皆さん、暑いのにお疲れ様です」

など、入居者、入居者家族、施設スタッフなどみんなが気持ちよく過ごせるように心がけましょう。

5.契約書等は契約終了時まで保管しておく

入居前に確認した契約内容と違う事態が発生した場合、実際に説明された契約内容が記載されている書類は重要な根拠となります。

そのため、入居後も都度契約内容を確認し、契約内容をしっかり把握するだけではなく、トラブルがおきても対処できるように最低でも施設を退居するまでは保管するようにしましょう。

 

老人ホームでトラブルが起きた時の相談場所・対処方法

©hikastock/stock.adobe.com

 

気をつけていてもトラブルが発生してしまうことはあります。

ここでは実際にトラブルが起きた場合におこなうべき対処方法をまとめます。

トラブルが起きた背景を把握する

施設としても訴訟沙汰になることを考えて、記録などはしっかり残しています。

そのため、施設はトラブルが起きる前後の出来事をなるべく詳しく記録したものが残っていることが多いです。

例)5月4日13:30に●●さんにトラブルについて相談した。相談の内容は~~。

これらの記憶を確認し、トラブルが発生した経緯や当時の状況を確認するようにしましょう。

契約内容を確認する

まずはトラブルの原因となった項目について契約書でどのように説明されているか確認しましょう。契約内容に規定されており、そのとおりの対応がされている場合(説明不足)と契約内容に規定されている対応とは異なる対応がなされている場合(契約違反)があります。

そのトラブルはどのように発生したのかをきちんと把握しておきましょう。

施設スタッフに相談する

施設のスタッフに相談、問い合わせをおこないましょう。

入居者同士でのトラブルが発生した場合はもちろん、特定のスタッフとの間で「接遇に関するトラブル」が発生した場合も信頼できるスタッフに相談してみましょう。

ただし、相談をする相手を選ぶ際には少し注意が必要です。

通常はソーシャルワーカー(施設のスタッフである生活相談員など)に相談すれば大丈夫です。

もしもいきなり施設長などの管理者に訴えてしまうと、施設側は不快に感じてしまいます。しっかり順を追って、円滑に対応することが大切です。

入居者同士でのトラブルであった場合は、トラブルが発生している入居者同士の距離を離す、部屋を移動するなどの配慮をおこなってもらえる可能性があります。

特定のスタッフとの間で発生した「接遇に関するトラブル」であった場合は、入居者(入居者家族)に謝罪する、スタッフ内でミーティングを実施し事態の改善をおこなうなどによりトラブルが解決する可能性があります。

各窓口で相談する

契約内容をしっかり確認したりスタッフに相談するなどしても契約内容に納得ができない場合や施設による適切な対応がなかった場合には、まずはその施設の苦情相談窓口を確認し、実際に相談してみましょう。

相談窓口がわからない場合は、最寄りの消費生活センター自治体の介護保険の担当者などに相談しましょう。

入居している老人ホームが介護保険制度の対象である施設である場合は、各都道府県に設置されている国民健康保険団体連合会(国保連)に相談することもできます。

入居する老人ホームを変える

「どうしてもトラブルが解決しない」

「トラブルは解決したけどこれ以上この施設で暮らしたくない」

という場合は違う施設へ入居し直すことも1つの選択肢です。

ただ、新しい居住環境で生活をするということは高齢者にとっては負担にもなり得ます。そのため住み替えを何度も繰り返すことはあまり良いとは言えません。

それでも今後長く老人ホームを利用しようと考えている場合は、より安心して過ごせる施設に住み替えるのもいいではないでしょうか。

新たに老人ホームを探す際はさまざまな施設を比較検討し、契約内容をしっかりと確認しましょう。

 

まとめ

老人ホームでトラブルが発生してしまった場合でも慌てず対処していくが大切です。

まずは「確認」、そして「相談・問い合わせ」です。老人ホームと入居者間で解決できるトラブルであれば良いですが、トラブルに対する施設側の対応が悪い場合には各窓口に相談したり、よりよい老人ホームを探してみてはいかがでしょうか。

「親の介護費用が足りるか心配」「介護をしない兄弟がいる」「介護のために仕事を辞めようか考えている」など、介護に関する悩みをお持ちではありませんか?

「親の介護」特集ページでは、在宅介護にまつわるお悩みの解決策をケアマネジャーが解説した記事を紹介していますので、ぜひご覧になってみてください。

当サイトでは、介護に関する情報以外にも、終活や健康、定年・子育て後の再就職について、役に立つ情報を毎週発信中!
「新着記事をいち早くチェックしたい!」「終活や老後の楽しみ方について、情報収集したい」という方にむけ、LINEアカウントでは新着記事の情報や充実したセカンドライフに役立つ記事を定期的に配信していますので、ぜひチェックしてみてくださいね! 友だち追加はこちらから。

LINE友だち追加はこちら 新着記事をいち早くお届け!

監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。

関連する記事

記事のカテゴリ