老老介護の問題と対策、共倒れを防ぐための3つの解決策

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老老介護とは高齢者(65歳以上の方)が介護が必要な高齢者の介護の世話をすることをいいます。
老老介護をおこなっている方またはその家族の方のなかには「介護をする側の負担は大丈夫なのか」「いつまでこの生活が続けられるのか」と不安を持っている方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では老老介護の問題点を把握した後、老老介護を支えるための対策方法、老老介護が限界になってきた場合の選択肢をご紹介します。
目次
老老介護の割合と現状
核家族化や単独世帯の増加、医療の進展、健康寿命や平均寿命が伸びたことなどさまざまことが理由で老老介護を行う世帯が増加しています。
厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況 介護の状況」の『年齢別にみた同居の主な介護者と要介護者等の割合』をみると、60歳以上同士で介護している割合は年々増えており、老老介護をおこなう世帯は在宅介護をしている世帯の約半数を占めているのが老老介護の現状です。
また、要介護者と同居する主介護者が75歳以上の後期高齢者である割合も年々増加傾向であり、平成25年には約3割にもなっていることが分かります。
後期高齢者では持病の悪化や新たな病気などにより介護を必要とする状態になる人が増える年代です。そのため、介護をしていても体力的にも無理はきかないと考えられます。無理がたたれば共倒れになるリスクも抱えていると言えるでしょう。
老老介護の2つのパターン
平均寿命が男女ともに80歳を超えている我が国において、老老介護を行っている家族の形態には2つのパターンが見られます。それぞれのパターンによって抱えている課題や問題点などに違いがあることも特徴的です。

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夫婦・兄弟どうしの老老介護
「離れて暮らしている高齢の父に介護が必要となった。自分は仕事を休むことが出来ないから母が介護をしている」など、子供が仕事や家庭の都合で介護をすることができないために、高齢の両親や義父母が老老介護をおこなっているようなケースです。
あるいは、配偶者がいなかったり、既に亡くなっていたり、子どもがいないような方で兄弟が近くにいる場合には、高齢の兄弟が主介護者として介護を行わなければならないケースもあります。
このように主介護者が高齢の夫婦や兄弟の場合、介護を受ける人と同じ年代ということになるのです。
親子で高齢の老老介護
日本人の平均寿命は2018年の時点で女性が87.32歳、男性が81.25歳となっています。これは、女性が20歳の時に出産したと仮定すると、その子どもが65歳の高齢者になった時でも自分は85歳で生きているかも知れないということになります。つまり親子で高齢の老老介護を行わなければならない状況となるのです。
実際、「超高齢の両親の介護をしているけれど、自分も高齢になってきて介護を続けるのが厳しい」など、人の寿命が長くなったことで、介護が必要な方の子供も高齢者(65歳)以上となっており、老老介護をおこなっているというような世帯はとても多いのです。
また、子供はまだ高齢でないという場合でも、「子どもは会社勤めをしていて自分の家庭ももっているから介護を頼みづらい」と子どもの面倒になることに引け目を感じる方もいらっしゃいます。
老老介護の問題とは
社会問題にもなっている老老介護ですが、老老介護を続けていくとどのような危険があるのでしょうか?
老老介護を続けることの問題点は主に以下の2点です。
負担が大きい
在宅介護をおこなう場合、経済的・身体的・精神的にさまざまな負担がかかります。加えて、高齢になると社会参加の機会が少なくなり孤独を感じる方も多くなります。そのような中で老老介護をおこなう精神的な負担は計りしれません。
また、介護は思いのほか体力が必要とされます。高齢になり若い頃よりも体力が衰えると介護をする際にかかる身体的負担も大きいです。
このように介護する方が高齢者の場合、かかる負担はさまざまな面においてより大きくなります。
共倒れする可能性がある
介護の負担や持病などからこれまで介護をしていた方の体調が突然悪くなってしまった場合などに、そのまま暫く誰にも気づかれず共倒れしてしまう危険性があります。
また介護の負担が大きすぎて精神的に参ってしまい、「介護疲れ」「介護うつ」から心中を計るというような事件も増えてきています。
老老介護に向けた5つの対策

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老介護を支えるためにはどうすれば良いでしょうか?ポイントを押さえていきましょう。
1.家族を含めて早めに計画を立てておく
両親や義父母と離れて暮らしている場合、近くにいるよりも介護に疎くなってしまうため事前に話し合いをしておくことが大切です。
介護をしている方が倒れてしまったらどうするのか、介護にかかる費用は誰が払うのか、親族の中で介護ができる人がいるのかなどについてきちんと確認しておきましょう。
また、自分が高齢で親が超高齢の場合ば若い人で介護を頼める方が周りにいないかを確認しておく必要があります。
2.家族で協力する
共倒れの危険性を考えると、家族として老老介護の親を放って置くわけにはいきません。
きちんと生活ができているかどうかをちょくちょく確認しに行く必要があります。
家庭を持っている方であれば、場合によっては配偶者や自分の子どもなどの協力を得ながら老老介護を支えていきましょう。
3.近隣住民を頼る
老老介護をおこなっている両親や義父母と同居していない場合、もしも介護をしている方が倒れてしまったら危険です。
両者共倒れし、そのまま気づかれない…という事態を引き起こしかねません。
特に老老介護の場合、周囲との関係が薄くなってしまうことが多いです。
そのため日頃から近くに住む住民の方々に見守ってもらう必要があります。日頃から気にかけてもらえるようにお願いしておき、友好な関係をつくっておくようにしましょう。
そうすることで「いつも散歩しているのに今日はいないな…」というような少しの違和感から安否を確認して貰えるかもしれません。
特に親しい人には緊急連絡先も交換しておくようにしましょう。
4.介護の相談窓口や支援サービスを利用する
介護の悩みは1人で抱えてしまう方が多いです。特に高齢になるほど社会との関係が薄くなってしまいがち。そのため介護に関する悩みを相談できる場所を確保しておくことはとても重要です。親を孤独にさせないためにも窓口への相談を勧めましょう。
また介護支援の一環として、訪問や電話、配食サービスなどによる見守り支援活動をおこなっている地域も多いです。地域包括ケアセンターや自治体の介護相談窓口で相談し見守り体制をつくっておくことが重要です。もし地域でおこなっていないという場合には民間の見守りサービスを利用することもできます。親の周りに頼れる人がいないという場合にはこのような支援サービスを利用し、もしもの事態に備えておきましょう。
5.介護サービスを利用する
高齢者のみで介護をしていくのは身体的・精神的・経済的など全てにおいて負担が大きくなりがちです。そのため老老介護の場合は極力介護をしなくてすむのが理想です。
共倒れを防ぐため、レスパイトケアとしても積極的にサービスを取り入れていきましょう。
自宅で老老介護をおこなう際に利用したい介護サービスは以下のとおりです。
- 訪問サービス
介護スタッフが自宅に訪問して介護をおこなってくれるサービスです。食事、入浴、排泄などの介護や、夜間の安否訪問などを受けることが出来ます。
デイサービス・デイケア利用者が施設に通って介護を受けるサービスです。家から施設などの送迎もしてもらえます。 - ショートステイ
施設に短期間入所し、その間施設のスタッフから介護を受けられるサービスです。
利用者本人が介護を受けられるだけでなく、利用者の家族も休息(レスパイト)を時間を確保することができます。 - 福祉用具の貸与・購入
日々の介護を楽にするための福祉用具を貸与・購入するサービスです。
貸与の対象となる福祉用具が13種類、購入の対象となる福祉用具が5種類あります。 - 住宅改修
高齢者がより自宅で暮らしやすくするために住宅の一部を改修するサービスです。
段差の解消や手すりの取付け、床又は通路面の材料の変更など6つの項目に該当する改修が対象となります。
各サービスについてより詳しく知りたい方は都度こちらの記事を参考にしてください。
いよいよ老老介護が限界になった場合の3つの選択

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いつまでも老老介護をし続けることは困難です。数年は乗り切ったとしても、負担が大きい、持病が悪化したなどの理由で介護をおこなう高齢者の体調に不具合が生じてしまい、老老介護に限界を迎えることが多くなっています。
特に介護をする側と介護を受ける側の年齢にあまり差がない場合、今は大丈夫でも、いつ両者とも介護が必要な状態になるかわかりません。
では、いよいよ老老介護が限界になった場合、家族としてできることは何があるでしょうか?
1.ケアマネジャーに相談する
もう少し老老介護のまま頑張ってもらうという場合はケアマネジャーを最大限頼りましょう。
親のケアプランをつくってくれているケアマネジャーと日々信頼関係を築いておくことが大切です。
親の状態を把握してもらい、介護する側、介護を受ける側の双方ができるだけ楽になるようなサービス計画を立ててもらいましょう。
ケアマネジャーさんと話す機会をできるだけ多くつくり、介護について感じている不安やこれからのことについて相談しながら、家族として何ができるかを考えていきましょう。
2.親迎同居して在宅介護をおこなう

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親しい家族と一緒に住める、若い人に介護を任せられるということは両親や義父母にとって嬉しいことでしょう。家族としてもそばにいてあげられる安心感があります。
在宅介護では訪問、通所、短期入所などさまざまな介護サービスを組み合わせて利用することができ、レスパイトケアをうまく利用することができれば家族の時間を確保しながら介護をおこなえる可能性もあります。
ただし、これまで老老介護をおこなっていた両親や義父母と同居するということは、すぐに在宅介護をおこなう必要があるということです。さらに両者とも介護が必要になったから同居することになったという場合、家族にかかる介護の負担はいっきに重くなります。それに伴って家族それぞれが生活リズムを変える必要がでてきます。
また、老老介護は親の世代だけの問題ではありません。
平均寿命が伸びたことに伴って、介護をする世代も高齢化がすすんでいます。
そのため親子で老老介護となる場合もあります。その場合はまた老老介護の問題が発生してしまうことになりかねません。
家族は要介護者を受け入れられる環境にあるかを考え、環境が整っていない場合には福祉用具の貸与・購入、住宅改修などをおこなったうえで介護サービスを積極的に利用していきましょう。
3.老人ホームを利用する
老老介護はもう限界、でも要介護者を自宅で受け入れることも難しいという場合には老人ホームの利用を検討しましょう。
老老介護から老人ホームに移る場合には2通りの選択があります。
「介護が必要な方だけ老人ホームに入居する場合」と「介護をしていた方も一緒に入居する場合」です。
介護が必要な方だけ老人ホームに入居する場合
介護が必要な方(要介護者)の場合、介護保険施設と高齢者向け住宅のどちらかに入居することができます。しかしこれまで夫婦のみの世帯であった場合、介護を必要としていない方は一人暮らしになってしまいます。
高齢者の一人暮らしはとても危険です。介護が必要な方だけ老人ホームに入居するのであれば、その機会に介護を必要としていない方は親類と一緒に同居するなど一人にならないよう対策をしましょう。
また、老人ホームに入居された方がどのような様子かを定期的に確認するためにも、できるかげり老人ホームへ面会に行くようにしましょう。
介護をしていた方も一緒に入居する場合
高齢者向け住宅であればまだ介護を必要としていない方でも入居できるホームが数多くあります。
そのため「老老介護は限界だけど、まだ一方はそこまで介護を必要としていない。」という場合にも対応しており、夫婦2人で同時に入居することができます。
ただし特定施設入居者生活介護に指定されていない高齢者向け住宅の場合は外部の介護サービスを利用する必要があります。
とはいえ老人ホームであれば施設のスタッフから毎日安否確認をしてもらうことができるため万が一の場合に備えることが出来、「共倒れ」を防ぐことが出来ます。
まとめ
老老介護には「共倒れ」という大きなリスクがあります。
そのためできるだけ早い段階で状況を変える必要があります。
老老介護ではもう限界だと感じた際、子どもとしては「同居して在宅介護をおこなう」か「老人ホームに入居する」が主な選択肢となるでしょう。
どちらを選ぶかは自由ですが、自分と親それぞれの生活を大切することを考えて選ぶよう心がけましょう。
在宅介護と施設どちらがいいの?と思われる方は以下の記事を参考にしてみてください。
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