介護離職で後悔しないために | 両立を支える2つの制度と3つの対策

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自分以外に介護する人がいないという方が「介護をしながら仕事を続けたい」と考えてはいても「両立しようとしたけど心身の負担が大きかった」「介護に時間を取られ、これまでの業務をこなせなくなった」と、結局仕事を辞めてしまうという方が多くなっています。

このように家族の介護や看護をするために仕事を辞めることを介護離職といいます。

労働人口が減少し人手不足が続く中、介護離職は今や政府をあげて取り組む社会課題となっています。

この記事ではそんな介護離職の現状と、介護離職を引き起こさないための対策についてまとめていきます。

現在、介護と仕事の両立で悩んでいる方は是非この記事を読んで介護離職しないための道を探していきましょう。

介護離職の現状

介護や看護を理由に仕事をやめる介護離職。

「介護しながらでも仕事は辞めたくない!」と思ってはいても、その生活に耐えられず介護離職をしている方は年間何人いるのでしょうか?実は驚くほど多くの人が介護を理由に仕事をやめているのです…。

介護離職者数の推移

介護離職者数は2009年以降上がり続け、5年間で約2倍にまで増加しています。そして、厚生労働省「雇用動向調査」によると2018 年には初めて介護離職者が10 万人を超えました

特に女性の介護離職が倍増し、女性の社会活躍の阻害要因の1つとしても懸念されています。

経済産業省によると、介護離職によって経済全体で生み出される新たな価値は1年当たり約6,500億円も損失していると言われています。

つまり日本は約6,500億円分の労働力を手放しているのが現状なのです。

介護離職者数の推移

出典:大和総研「介護離職の現状と課題」

正規雇用者の介護離職が増加

過去1年の間に介護離職をした方の人数は2012年で10万1000人、2017年で9万9100人と、毎年約10万人もの方々が介護離職をしています。加えて、近年は介護離職者のうち正規雇用の方の割合が増加しています。

つまり、正規雇用社員として働けるはずの方々が仕事と介護の両立に耐えられず、介護のために仕事をやめなければならなくなっているのが現状です。

介護・看護離職者数の推移

出典:大和総研「介護離職の現状と課題」

「介護のために仕事を辞めて後悔している」介護離職のリスクとは

毎年多くの方が介護離職をしているのが現状です。

介護離職をする理由として多いのが「介護しながらだと仕事できる時間がない」「職場に迷惑をかけてしまう」「介護も仕事もやっていると体がもたない」という理由です。

もちろんその全てが仕事を辞めざるを得ないほど大きな問題です。

ただ、介護離職したことにより仕事と介護を両立していた時よりも生活が楽になるとは限りませんし、後で後悔することにもなり得ます。

ここでは介護離職をすることによって引き起こされるリスクを紹介していきます。

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自分のために費やす時間が減る

介護離職とは言い換えれば、今まで自分が時間を費やしてきた仕事を辞め、キャリアに空白を作るまたはキャリアを手放すことであるとも言えます。

また仕事を辞め介護中心の生活となると、日々のほとんどの時間を介護に費やすことになり、自分の自由な時間はとても少なくなります。

仕事をしている間は仕事のストレスが大変だと感じていたけど、介護に専念するようになると、「実は仕事をすることがストレス解消だった」と感じる方もいらっしゃいます。

さらに、仕事を辞めることで人と関わる機会が減り、プライベートな時間も取りにくくなることで人間関係が狭くなることも懸念されます。

そうなると自分の時間を確保できないことへの精神的ストレスを抱えたまま、ゴールの見えない孤独な介護生活をおくることになる可能性があります。

「介護疲れ」の原因と8つの対策方法 | チェックシートで介護疲れをチェック!

経済的な悪循環に陥る

老人ホームに入居するとなると在宅介護よりもお金がかかります。

そのため「老人ホームに入居させるよりは、仕事をやめて在宅介護をし、介護にかかる費用を少しでも抑えよう」という考えから介護離職を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら介護離職が原因で経済的な悪循環に陥ることもあります。

というのも、介護離職後は生活費を自分の貯金や自分以外の家族の収入、親の年金などでまかなうことになります。

その結果、これまでの生活よりも支出は増えるのに収入が減り、家族が経済的に困窮してしまう方はとても多いのです。

また、介護で貯金を使い果たしてしまい、自分の将来のためのお金も使ってしまったというケースもよくあります。

仕事を辞めて在宅介護をし、一緒に過ごしながら介護をしてあげるのか、仕事を続けてお金を稼ぎ、親に少しでも良い暮らしをしてあげるのか、よく考える必要があります。

在宅介護と老人ホームのそれぞれにかかる費用について目安や内訳を知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。

在宅介護と施設介護の費用はどれくらい違う?介護にかかる「お金」の考え方

再就職するのが難しい

介護離職者の再就職率は良いとは言えません。

再就職を希望している方が就職活動を行っても、実際に再就職できたのはそのうち約4割となっています。

また再就職できた方のなかでも、正社員としての雇用はそのうち約2割です。

つまり全体の8%の方しか正社員として再就職できていないということになります。

そのため「介護が落ち着いたからまた働きたい」と思っても再就職できなかったり、できたとしても自分の望む職種や雇用体系ではなく、以前と比べ収入が少なくなることが多いため、自分の老後のお金についての経済的不安も出てきてしまいます。

介護離職者の再就職状況

出典:大和総研「介護離職の現状と課題」

介護離職しないために利用したい2つの支援制度

どんなに介護と仕事の両立に限界を感じていても、なるべくなら介護離職せずに仕事と介護の両立を成立させたいと考えますよね。

ここでは、介護離職しないための対応策を2つご紹介します。

介護離職をしたほとんどの方は介護と仕事の両立を支援する制度の利用をしていなかったという調査があります。
今後の自分の将来と今の介護どちらにも向かいあうために、まずは積極的に制度を利用することが重要です。

介護休暇制度

介護休暇制度とは家族を介護する必要性がある場合に利用できる制度であり、病気や怪我などの理由によっても利用することができます。

そのため、要介護認定を受けておらず介護保険サービスを利用していない場合でも、親・兄弟・子供が病気や怪我になり介護が必要な方であれば利用の対象となるのです。

間違ってはいけないのは、有給休暇の扱いではなく、『介護休暇』として取得できるということです。

取得できる日数は最大で5日間です。この制度は、例えばいつもは歩けている親が急に歩けなくなり病院への受診をするときや、インフルエンザに感染しいつもの介護保険サービス事業所を利用できなくなったときなどの事態で利用できます。

介護休暇中は給与を支払われないことになっていますので、休暇中の給与の取扱いについては勤め先に確認しておきましょう。

申し出方法はそれぞれの職場によって違いますが、この制度の特性上、急遽休みを取得する必要があるケースもありますので、電話や口頭でも構いません。

介護休業制度

介護休業制度は介護休暇と同じく、家族を介護する必要性がある場合に利用できる制度であり、病気や怪我などの理由によっても利用することができます。

介護休暇と比べて長期に渡り介護が必要な場合に利用される制度で、1年につき合計93日を限度に3回までまとまった休みを取得することができます。

親が転倒し入院をするようになった際に、付き添いで1ヶ月のまとまった休暇が必要になった場合や、施設への入所が決まるまでの期間限定で3ヶ月ほど在宅介護を行なおうとする場合など、計画的に活用することをおすすめします。

介護休業中は職場から直接的に給与は支給されませんが、社会保険から給与の2/3が支給されることになっています。

申し出方法は原則、職場に必要書類を添えて提出します。

医師の診断書が必要になる場合もありますので、事前に調べておきましょう。

こちらのサイトでは必要事項を入力することにより、給付の概算を知ることができます。

介護休業制度の給付金シュミレーション

出典:keisan 介護給付金の計算

介護と仕事を両立するための3つの対策

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ここまでで、日本は仕事と介護の両立に対して制度を持って対応していることがわかりました。

しかしながら、どうしても介護離職を検討せざるを得ない状況になった場合には、以下の介護と仕事を両立させる3つのコツをご覧下さい。

相談機関を利用する

行政の窓口はもちろん、担当のケアマネジャーさんや地域包括支援センターに相談に行きましょう。

それまで、間違って解釈していたことが分かったり、考えもしなかった方法などを知るきっかけになります。

専門家と話すことによって、仕事と介護を両立させるヒントが見つかるかも知れません。

職場の理解を得て、制度を活用する

職場も退職させたくないと考えているでしょう。

介護を始めた段階で、職場には「プライベートでは介護をしている」という旨の話をしておいて、あらゆることを想定してもらうことも大切です。

そして介護休暇や介護休業などの制度を活用し、いざとなれば職場の理解・協力を得られるようにしておきましょう。

介護保険サービスを最大限活用する

社会保障のひとつである、介護保険制度を利用し、身近な介護保険サービスをどんどん使いましょう。

もちろん、経済的にたくさんのサービスを利用したり、早い段階で施設への入所を検討するのは難しいかもしれません。

しかし、日常生活のなかで『頼りどころ』をつくって行動するだけでも気持ちが楽になるものです。

 

また、以下の記事ではもっと具体的に介護と仕事を両立するための方法について紹介しています。

介護離職をしたくない方はぜひ一読することをおすすめします。

介護と仕事の両立は無理?両立するためにできる5つのこと

まとめ

これから団塊の世代に介護が必要となる時代が訪れて、団塊ジュニアと呼ばれる40代半ばの人たちは、仕事と介護の両立がより一層社会問題となるでしょう。

自分達の生活があるなかで、親の介護をすることはとても難しく、色々な人の協力と制度を活用しないといけない状況だといえます。

介護離職に至るまでの対応策はありますので、制度を理解して適切に活用できるように心掛けましょう。

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。

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