家に居ながら授業を行う認知症対策の学習法「かぞくの教室」について取材
皆様は高齢者向けに学校のような授業を提供する介護施設をご存知でしょうか?
例えば、「国語」という教科では俳句を題材とし、書く力や朗読する力を身につけることができます。
また「算数」ではそろばんを使って計算をし、手先の訓練や計算力を身につけることができます。
これにより高齢者の認知症対策やコミュニケーションの活性化が見られたという効果もでています。
この介護施設は「おとなの学校」という施設で、この教育方法は他の介護施設へも広まっています。
そんなおとなの学校が、介護施設に入っていない方でも家庭で認知症予防・改善の教育が受けられる「かぞくの教室」というサービスをリリースしたとのことで代表取締役の大浦けいこ氏にインタビューしました。
「かぞくの教室」の内容や実際に使ってみた家族の声、代表が考える今後の社会などをご紹介していきたいと思います。
大浦けいこ…
(経歴)
1962年熊本市出生
久留米大学医学部卒業
熊本大学大学院にて医学研究科博士課程修了
2000年2月医療法人社団大浦会・社会福祉法人照敬会 理事長に就任
2006年に介護施設「おとなの学校」を創設
2020年に家庭用認知症対策教材「かぞくの教室」を開発
目次
家で行なう授業形式のコミュニケーション「かぞくの教室」について
─── 御社で行われているサービスを教えて下さい
弊社では認知症予防や認知症の改善を目的とした学校の授業形式の施設運営を行っています。
これによって認知症症状の改善が見られ自宅へ戻られた方も多数いらっしゃいます。
そこでこの教育方法を自宅でもできるようにと、教科書にまとめたものが「かぞくの教室」という教材です。
「かぞくの教室」は授業を受けられる方のご家族が先生となり、授業を行っていただきます。
─── どうしてこのようなサ-ビスを立ち上げられたのですか?
私が介護をしていた祖母との関係から、後悔したことや気づいたことをもとにかぞくの教室をつくらせていただきました。
当時ケアハウスに住んでいた祖母ですが、人に迷惑をかけず、料理以外の家事を全て自分でこなす完璧な人でした。
それゆえか通所リハビリには一向に行こうとせず「あんな年寄りばかりのところはいかない」と頑なに拒んでいました。
それから祖母が100歳を迎えた時、認知症の一つの症状である「物取られ妄想」があらわれ、私に出会うたびに「私のお金がないの」と言うようになりました。
それから祖母との会話は楽しい話は皆無、一方症状は進んでいき発する言葉は「死にたい」か「お金がない」といったようになっていきました。
しかしそんなある時、「お祖母ちゃんが孫と話す」ことによって認知症が改善するのでは?という考えが浮かび、私の祖母に「おばあちゃんの若い頃はどんな風だったの?」と興味本位で聞いてみました。
すると、自分が若かったころはいかに優秀な生徒だったか人気があったかを自慢げに話し始め、その後はすっきりした顔で「さ、あなたも忙しいでしょう。帰りなさい。」と部屋から見送ってくれました。
その時私は「どんな家族も、楽しい会話から関係をやり直せる!」ということに気が付いたのです。この後も祖母の楽しい会話を続けることで笑顔が増えていき、祖母は106歳になるまで楽しく過ごし天寿を全うしました。
そこで私達は介護施設ではなかなかできない「かぞくと話す」ということの些細な手助けを「かぞくの教室」を通して行なおうと考えています。
─── 具体的にはどのようなサービスを提供していただけるのでしょうか?
私たちが作成した認知症予防のための教科書を用いて、ご家族様に30分程度の授業を行っていただきます。
皆様のもとに届ける教科書は2冊ありまして、本人用とご家族用のものがあります。
それぞれの教科書の中は下の写真のようになっており、本人には見やすいイラストなどを使って問題を解いていただきます。
(教科書の一ページ)

提供:かぞくの教室
(先生用教科書の一ページ)

提供:かぞくの教室
また、ご家族様には行なっていただく授業の進め方や、解答が書いてある教科書を使って本人とコミュニケーションを取りながら授業を行っていただきます。
─── どのような機会にサービスを利用される方が多いですか?
要介護認定の結果が要介護3~要介護5など介護をするのが大変な親だけれど、どうしても在宅で面倒を見たいという方や、今までの在宅介護では納得ができていない部分があり新しい方法を模索されている方々に使っていただいています。
また、要介護にはなっていないけれど、今から介護予防のつもりで始めて家族の絆を深めたいという方もおられます。
─── 実際のお客様の声を教えていただけますか?

提供:かぞくの教室
父:川上大勝さん(86歳) 娘:川上まきさん(56歳)
かぞくの教室開始月:2019年1月
娘「半年ほど前、要介護4の父を施設に預けたのですが、預けた先は、鉛筆も母の写真も置けない真っ白の部屋にベッドだけの牢屋のようなところでした。
父も意識がなくて一日中ぼーっとしている感じで、その姿を見ている私が辛くなってしまい、結局2ヵ月で自宅へ戻ることにしたのです。そのときに、自宅でも何かできることをと思い、かぞくの教室を始めました。
実際教材を使って授業を行ってみると、もう目の輝きが違って、体も前のめりになるのです。
父は戦時中を生きた人で、小学校しか行っていないので『私は学がないから』というのが口癖でした。
だからテキストを目の前にしたとき反応が違うのです。無反応だった人が、鉛筆を持って教科書に書き込んだり、自分の名前を書いたときにはびっくりしました。
勉強したかったという、知識欲が満たされているんだと思います。また、かぞくの教室を始めるように なってから、認知症のせいで書けなくなった日記を、再開できたのも嬉しかったです。」

提供:かぞくの教室
娘:中村みどりさん(50代)
かぞくの教室開始月:2020年2月
娘「本来なら昨年亡くなった実の母に、「かぞくの教室」を行なってみたかったのですが、残念ながら、教室を行う前に癌で他界してしまいました。
今、生徒になってくれているのは、義理の母ですが、一緒に授業をやって歌ったり、昔の話をしたり、手遊びをしたりして、実の母にできなかった思いを昇華している気がします。」
高齢者の方にどのように過ごして欲しいと考えていらっしゃいますか?

提供:かぞくの教室
高齢者は決して特別な人たちではないと考えています。
なので要介護になっても、皆さんと同じように「諦めることなく」青春時代のように前を向いて、未来を信じて自分の人生を生きていただきたいと思っています。
それを実現するための最重要な影響者は介護士ではなく、ご家族です。
介護をすること自体は介護士に任せてもいいけれど、思い出を紡ぐ会話は相手としてご家族が最もふさわしく、ご本人様の満足度も高めるのです。
また、たくさんの思い出話を一緒にすることで家族の絆も深まります。
自分のお母さんとお祖母さんが一緒に話している姿を見て、若い世代へとこのバトンがつながっていくのではないでしょうか。そうして高齢者には自分の子供たち孫たちと一緒に楽しく自分の人生を送っていただきたいと思っています。
─── 御社の今後のビジョンについて教えてください。

提供:かぞくの教室
この世界に親との関係で後悔する家庭をひとつでも少なくする、それが弊社の挑戦です。
今、社会には不安が渦巻いていますが、その一つが老後問題、介護問題です。それは老人ホーム・介護施設を増やせば解決できるものではありません。介護職の皆様の負担も半端ないものです。
その解決に「おとなの学校メソッド」はお役に立っていると自負しています。
また、介護施設にはまだ入られない家庭には、かぞくの教室を用いることで介護施設になるべく入らなくてもよくなるような社会にしたいと思っています。
人生の最期に、生きてきてよかったと思えるのは、家族の愛情を感じられる日々を送ることではないでしょうか。全ての人たちがそのような穏やかで充実した最期を迎えられる社会を目指します。
まとめ

提供:かぞくの教室
今回は家庭でも認知症対策、家族とのコミュニケーションを図れる「かぞくの教室」を発明された大浦けいこ氏にインタビューさせていただきました。
ご自身で介護施設に授業形式の介護方法を取り入れられたり、授業方法を他の施設へと展開されたり、更にその授業方法を家庭向けへとアレンジされたりと、とても行動家であるという印象をもたせていだきました。
介護という行為だけでなく、家族による会話の重要性を大事にされている大浦先生の「かぞくの教室」「おとなの学校」については以下のURLからご覧になれます。
体験版も取り寄せることができますので、気になった方は、一度確認してみて下さい。
- かぞくの教室:https://kazoku-k.com/
- おとなの学校:https://otona-gakkou.com/
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