老人ホームで行っている感染症対策とは

免疫力の低い小児や高齢者は様々な感染症に対してとても神経質になります。

冬期に流行する感染症といえばインフルエンザが代表的ですが、インフルエンザは小児から高齢者まで誰もが恐れる感染症で、過去に老人ホームで集団感染してしまい入居者がなくなってしまう事態もたびたび発生しています。

最近では新型肺炎としてコロナウイルスが報道され、世界的問題になっており、老人ホームなどで生活する高齢者にとっても脅威となることは間違いありません。

この記事では高齢者の方にとって非常に恐ろしい感染症に対して、老人ホームがどのような対策をとっているのかご紹介していきます。

老人ホームで集団感染が報告されている感染症とは

冒頭でも触れましたが高齢者は免疫力が低いため感染症に罹患しやすく、更に老人ホームなどの集団生活の場では集団感染しやすいと言えます。

ここでは、老人ホームで集団感染が報告されている代表的なものを解説します。

インフルエンザ

多くの老人ホームでインフルエンザの予防接種はしますが、毎年必ずどこかの老人ホームでは集団感染が発生したことが報道されます。

インフルエンザは飛沫感染しますので、自然に老人ホーム内から発生することはありません。

例えば、面会に来た家族、出入りの多いショートステイやデイサービス、スタッフなどが外部から持ち込んで、感染させてしまうことが考えられます。

ノロウイルス

ノロウイルスは冬場に美味しく食べることができる二枚貝などが原因です。

ノロウイルスの場合、激しい嘔吐下痢の症状があり、その嘔吐物や排泄物に触ると感染するリスクは高くなります。

老人ホームではスタッフが支援の一環として、嘔吐物などの処理もしますので、そこから一気に集団感染することもあります。

老人ホームの入居者がわずかでも感染すると、そこからスタッフが感染し媒介者になり別の利用者に感染させるようになり拡大していきます。

感冒

感冒とは一般的には風邪のことです。

「なんだ、ただの風邪かぁ…」と安易考えるのは大変危険です。

激しい咳などをする人の近くにいる人はすぐ感染しますし、集団感染もします。

繰り返しますが、高齢者は免疫力が低いので感染するのも早く、重度化しやすく肺炎などを併発します。

冬場はもちろん、夏場でも集団感染する可能性がありますので、決して油断はできないのです。

風邪が重度化し入院することも決して珍しくありません。

疥癬

疥癬(かいせん)はヒゼンダニという人間に寄生するダニの一種で、とにかく痒く、感染した高齢者は皮膚を掻きむしります。

皮膚の下にダニがトンネルを掘ってそこで過ごします。

脇、陰部、膝の裏、指の間など、皮膚と皮膚が触れて空気が通りにくい場所にダニが住みつきます。

飛沫感染や空気感染ではなく接触感染なので、集団感染するリスクは少ないと思われがちですが、感染力は強いので集団感染しやすいです。

白癬菌

白癬菌(はくせんきん)は水虫やたむしのことで、どの部位に発生するかで名称が変わります。

水虫と言えばイメージできやすいと思いますが、これも皮膚病の一種でカビです。

ご存じの通り、水虫は感染力が高く、感染者が使用したスリッパや入浴後の足拭きマットを使用するだけで感染します。

命に直結する感染症ではありませんが、重度化すると爪の中も感染してしまい、ボロボロになってしまいます。

感染予防のために老人ホームで行っていることとは

いままで見てきたように施設内での集団感染はリスクがとても高いため、施設としても厳重に対応しています。

日常的な手洗いうがい、清潔不潔の区別は当然のことながら、時期によって流行が予想される感染症については先手必勝で防止しています。

それでは老人ホームで実際にどんな予防対策が取られているのか、見ていきましょう。

高齢者に多い感染症の勉強

高齢者が罹患しやすい感染症は先ほど紹介した以外にもいくつかあり、MRSA・肺炎・結核・肝炎などが挙げられます。

これほどの感染症を発症しやすい高齢者ですが、それぞれの感染症にはどのような症状があるのか、どのようなルートで感染していくのかなどの知識がなければ対応ができません。

特に、介護スタッフは高齢者の通常時の様子を十分に把握し、感染した場合の異常にいち早く気付いて医療機関との迅速な対応が求められるのです。

コロナウイルスも例外ではなく、厚生労働省が発信している情報の確認し迅速に対応できる準備をしています。

厚生労働省のマニュアルを熟知する

施設での感染症対策として厚生労働省は「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」を公開しています。

老人ホームなど高齢者介護施設において、入居者を感染症から守り QOL の向上につながる支援を促進することを目的とし、感染症対策に関する最新の動向や知見を踏まえて改訂版が2019年3月に発表されました。

内容は委員会の設置に関することや職員の健康管理指導など、多岐に渡るマニュアルになっており、施設の担当者はもしもの時にはこのマニュアルに沿って行動できるよう熟知しています。

予防接種を受ける

老人ホームがそれぞれの入居者に対して各種予防接種を受けてもらう強制力はありませんが、事情を説明してお願いすることはできます。

特に、インフルエンザの予防接種は感染しても症状が軽度で済むので、本人のためものなるでしょう。

高齢者の場合、交付負担で予防接種を受けられるので、費用もそれほどかかりません。

また施設によってはスタッフに対して予防接種を推奨し、感染の経路を遮断すべく取り組んでいます。

排泄介助での配慮

様々な感染症の防止になるのが排泄介助での配慮です。

排泄は、尿と便が体内から排泄されますので清潔と不潔を考えながら対応しなくてはなりません。

家庭から老人ホームに来た高齢者の中には、十分な検査をしていない人は少なくはありませんので万が一に備える必要があり本人や家族も分かっていない菌を保有している場合もあるのです。

素手でオムツ交換をすることはなく、オムツ交換をした手で居室内の照明スイッチやドアノブを触ることはしません。

食事介助での配慮

排泄介助でいくら十分な配慮をしても、口から体内に入る食事介助の配慮が不十分ならあまり意味はないでしょう。

オムツ交換をした服でそのまま食事介助をすることはなく、エプロンをするなどして清潔に食事ができる支援をするのです。

食事前の手洗いは基本的なことですね。

手洗いとその後にふき取りは入念に

感染症予防と言えば手洗いが代表的なことはお分かりだと思いますが、介護施設である老人ホームなどではかなり入念に行われています。

手を洗う時の水道は蛇口を触らないでいいように、手をかざすと水がでる自動流水を取り入れている施設が多いです。

手洗いは、肘の少し下まで洗い、自分専用の爪用ブラシで爪も洗います。

ふき取りはハンカチは使用しせず、常に清潔なペーパータオルを使います。

ペーパータオルの向きも配慮しており、家庭で使うティッシュペーパーのようにペーパーが上を向いて空気上の菌がペーパーに触れないように、専用のケースに入れて使用します。

もし入居者が感染してしまった場合の対処法とは

まず、感染症の可能性があれば医師に伝え、往診や受診を受けます。

肺炎などは画像検査をしないとはっきり分からない場合もありますが、インフルエンザなどは簡単な検査でも分かります。

その後診断されたら、看護師と医師が連携して、集団感染しないように感染症の種類に合わせて対応していきます。

隔離するケースが多い

空気感染、飛沫感染する感染症は隔離して過ごしてもらいます。

隔離といっても近年の老人ホームは個室が増えていますので、自分の部屋の中から出ないように伝えたり、食事は自室で食べてもらうようにします。

認知症の影響で意思の疎通ができない場合は、自分でホールまで出てこられることもありますが、何度もお願いするしかありません。

薬の処方を受ける

医師の診察を受けることによって、多くの場合に薬が処方されます。

医師が指示した用量、時間を守り、発熱の際には解熱剤が頓服として投薬することもあります。

例えば認知症の方に対して吸入の薬を投薬することは難しいので、その方が上手く薬を体内に取り入れることができかどうか医師に判断してもらうために、老人ホームのスタッフが普段の状態を伝えることも大切です。

面会等を禁止する

冬場のインフルエンザが流行する時期に全国の老人ホームでよく見かける対応策です。

先述しましたが、感染症の多くは外部から持ち込まれて感染します。

そこで働くスタッフは入居者との接触を禁止することはできませんが、面会者や業者への関りを絶つことで感染拡大を予防できます。

例えば、1階で感染者が出たら、2階の入居者を1階に降りないように制限したりもします。

「老人ホームの面会が不安…」面会時間、頻度、差し入れなど些細な疑問を解決しよう

まとめ

命に直結する感染症に対して、老人ホームはかなり慎重に対応しています。

それでも完全に防ぐことができず、集団感染してしまうケースもあります。

必要以上に気にすることはないと思いますが、家族が協力できることは施設と一体となり取り組んでいきましょう。

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。

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