不適切ケア防止で虐待を防ぐ!不適切ケアチェック表で確認しよう

テレビやネットのメディアでたびたび高齢者虐待のニュースを目にすることがあります。

介護をされている人が身近にいたり、自分が介護をする立場にある場合、知らず知らずのうちに不適切をおこなってしまっているのではないかと不安に感じることもあるのではないでしょうか。

ここでは、不適切なケアとはどのようなものなのかや、高齢者虐待につながらないようにチェックしておくポイントについてなどを解説していきます。

不適切ケアの定義は?

不適切ケアを根底とする虐待の概念図

出典:権利擁護研修会

不適切なケアとは、言葉の通り本来なら実施するべきではない不適切な介護のことを指し、介護を受ける方が嫌がっていることや心が傷つくような介護は不適切ケアとなってしまいます。

上記の図のように不適切ケアの延長線上には高齢者の虐待があり、虐待ではないけれどその手前にある介護が不適切ケアと呼ばれるものになります。介護を受ける方の感じ方による部分もあるため、一概に何が不適切ケアなのかを定義することは難しいのが現状です。

ニュースで報道されるような介護施設だけで不適切が行われているわけではなく、在宅介護においても、不適切なケアは存在します。例えば、「ばあちゃん、良く喋るけど少しは黙っといて~」「じいちゃん、同じことばかり繰り返しうるさいね~」などの発言などは不適切ケアとなってしまいます。

それでは、実際にどのような介護が不適切ケアとなってしまうのか、実際の事例を見ていきましょう。

不適切なケアの事例

虐待を拒否する高齢者

©Satjawat/stock.adobe.com

ここでは不適切ケアが行われやすい場面と事例をご紹介します。

不適切ケアは無意識のうちに行ってしまっているケースも多々ありますので、気にかけておくだけでも不適切ケアを早期に発見・帽子をすることができます。

排泄場面での事例

排泄はとても繊細な場面であり、生理現象であるため、一歩間違えれば不適切なケアになりやすい性質を持っています。

介護者は毎日の繰り返し行われる支援のなかで、ついつい介護の対象者(利用者)の気持ちに鈍感になってしまうケースも少なくはありません。

そのようなことから、以下のような点が排泄場面での不適切ケアとして挙げられます。

  • 排尿や排便感覚があるにも関わらず、トイレに座れないという理由だけでオムツを着用している。
  • オムツのサイズが合っていないものを着用している。
  • 排泄介助が本人主体でなく、全体の時間の流れのみでしか行なわれていない。

毎日のお仕事や生活の中で、なかなか手が回らず気づけば排泄の場面で不適切ケアを行ってしまう場合も多々あります。排泄は尊厳を守るためにもデリケートな問題なので、人一倍気を使って介護をする必要がある場面です。

入浴場面での事例

入浴は身体が全て露出するため、とても神経質になる場面でもあります。

高齢者は少し皮膚に圧がかかるだけで皮下出血がおきたり、冬場は浴室が寒くなり、風邪を引いてしまう可能性が高くなります。

そのため、これらの対策としてどうしても作業的な流れになりやすく、下記のような不適切ケアがおきてしまう傾向にあります。

  • 自分で身体を洗えるにも関わらず職員が行なう。
  • 陰部や脇、指先など細かい部分まで洗えていない。

本来なら、対象者(利用者)の全身状態を観察しながらも、自分でできることは自分でやってもらうという、『残存機能の活用』も支援できるとよいでしょう。

食事場面での事例

食事は人間の生命維持に不可欠なことでありながら、高齢になるとスムーズに摂取できず、忙しく働いている介護スタッフはストレスを感じることもあります。

食事介助を要する方のなかには、1時間近くかかるケースもあり、多忙な介助スタッフの時間を圧迫することも珍しくありません。

また、体重減少にある方や、栄養不良の方に対しては、なるべく提供された食事を食べてもらいたいと願うものです。

このようなことから、食事場面では以下のような不適切なケアが起こりやすいとされています。

  • 自分で食べることができるのに時間がかかるという理由で介助を行なっている。
  • 食事摂取をしてもらう気持ちが強すぎて、食事介助が無理に行なわれる。

食事の際にはなるべくご自身のペースに合わせてできる限りは自力で食べるようにできるとよいでしょう。

その他

日々の業務や生活が多忙なあまり、目の前にある介護にしか目が向かなくなってしまう可能性があります。

そのため、急を要しないケースに対しては、ついつい後回しになり、対象者(利用者)をないがしろな扱いにしてしまうこともあります。

結果として、以下のような不適切なケアが起こる可能性があります。

  • 車椅子の大きさが合っておらず、適切な座位が保てなくて転倒・連絡のリスクが高くなっている。
  • 「そんなことしないで」「それをするのはやめて」「一人で歩かないで」などのスピーチロックが行なわれている。

不適切ケアチェック表(介護者向け)

介護士たち

©ohayou!/stock.adobe.com

介護職は介護を受ける人に対してその人の尊厳を守るようにさまざまな配慮が必要となります。しかし、業務に追われていたり、なれあいが出てきたりするとあたかも介護を行う側が介護を受ける側よりも上の立場であるような言動を行うことがないとは言い切れません。

特に介護施設などの閉ざされた環境では外部の目も入りにくく、注意されにくいといえます。身内なら許せるような言動であっても、プロの集団の介護施設などでは虐待の前兆となりうると捉えるようにしましょう。

そこで、普段の介護で気が付かないうちに不適切ケアを行っていないかをチェックしてみましょう。

利用者をあだ名やちゃんづけで呼んでいる
利用者に対して子どもに使うような言葉遣いをしている
利用者に対して威圧的な態度や命令口調(「〇〇して」「〇〇しないで」など)
で接している
十分な説明と同意を得ずに介助を行ったり、居室の私物に勝手に触ったりしている
利用者に対して「ちょっと待って」を乱用し、自分の都合を優先している
人前で他人に聞かれたくないこと(排泄に関することやプライバシーにかかわるようなこと)を聞いたりする
利用者のコールを無視したりならなくしたりしている
職員同士で業務に関係ない利用者の話題や悪口を言うことがある
職場の人間関係が悪く情報の共有が十分に出来ていない
他の職員のサービスを見聞きして問題があるケアを行っているのではないかと感じることがある

不適切ケアチェック表(利用者向け)

一般の人が不適切なケアかどうか判断するのは難しいでしょう。

そこで、以下の不適切ケアチェック表は何度か面会に行けばすぐに確認できるようなチェック表を作成しました。

一つでも該当すれば、不適切なケアが行なわれている可能性があります。

羞恥心に配慮されたケアになっていない
個々の心身状態に合った福祉用具等が使用されていない
入居者に合わせた支援でなくスタッフの都合に合わせた支援になっている
何かと人員不足のせいにしている
時間の流れでケアが行なわれている
環境整備・掃除ができておらず生活がしずらい
ケアプランの添ったケアがされていない
いつも整容ができていない
入居者の表情がいつも暗い

不適切ケアが行われて居た場合の対処方法

不適切ケアは知らず知らずのうちに行っている可能性があり、どのような施設でもその可能性ははらんでいます。

もしも入所している家族が面会に行った際、「不適切なケアではないか??」と感じた場合は、冷静にその場で職員に伝えることがベストです。

ただし伝えると言っても、単刀直入に言えばその後の関係がギクシャクする可能性があります。そのため、トイレに座れないという理由だけでオムツを着用しているのなら「自宅では家族2人で介助して便器に座らせていました」と伝えるなど、自分達ならどうするかを提案する形で伝えるようにするとよいでしょう。

不適切ケア改善のポイント

不適切ケアが生じている場合には早期に対処し、改善できるようにすることが大切です。実際に不適切ケアを行っている人がそれに気が付かないでいることも多く、個人に任せるだけではなく、組織として事業所全体で取り組むようにすると良いでしょう。

介護者の接遇マナーの向上

接遇は社会人として身につけておくべき最低限のマナーです。言葉遣いや身だしなみ、利用者に対する態度やふるまい、挨拶など介護現場にふさわしい接遇とはどのようなものかを理解し、実践できる接遇力をつけていくことが必要となります。

ひとりひとりの接遇力を上げていくことはもちろんですが、不適切ケアが認められるような場合には組織全体のどに部分に問題があるのかをチェックした上で、対策を講じて改善を行っていくようにしましょう。

研修の実施・組織運営の改善

介護現場でのコミュニケーションが取りにくいことで不適切ケアと感じられるような状況が相談できないような組織体制は改善しなければなりません。何でも相談し合えるような風通しの良い組織運営が不適切ケアを未然に防ぐためには大切です。

また、施設の理念や人権、高齢者の尊厳、介護職としての職業倫理など不適切ケアとならないような思考の基盤を作るため、施設内外の研修への参加の推進なども積極的に行っていきましょう。

介護・ケアのスキル改善

認知症の方へのケアにおいては不適切なケアが生じる危険性が大きくなります。

これは、利用者の行動が理解できずつい不適切な対応となってしまうばかりではなく、介護者のストレスを増強させて不適切ケアが常態化してしまっている場合もあります。

したがって、利用者の心身の状態を把握し適切なアセスメントが行えるようになることが大切です。症状に対する理解とケアのスキルの向上ができるような学習の機会を持てるようにします。

業務の見直し

介護施設では個別ケアやユニットケアが推奨されていますが、実際の介護現場ではこれらの実施が難しい場合も多くみられます。

その理由としては人員不足に加えて本来の介護の業務以外のことも行わなけらばならないなど時間的な余裕がないことが挙げられます。このような忙しい状況の中では声を荒げてしまったり、気持ちに焦りが出てしまいます。介護に専念できるように業務の見直しが出来ることがないかをチェックしてみてください。

「もしかして高齢者虐待?」…と感じた方へ

高齢者の手を支える介護士

©Farknot Architect/stock.adobe.com

不適切ケアがいきすぎると高齢者虐待にあたります。

「これは不適切ケアだろう」と油断していると既に高齢者虐待に発展していたということもあります。

そうならないためにも不適切ケアか高齢者虐待かを見極める必要があります。

多くの場合、『不適切ケアをやっている』という認識はありません。

長い仕事の経験や、その場の雰囲気、時間がない、人手が少ないなどの理由で結果としてなっている可能性が高いのです。

そして、新人職員や外部の人が現場でケアを目にする方が敏感になり、気が付くことがあります。

不適切ケアが行なわれている可能性があると感じたら、入居者はもちろん、施設のためにも先述した対処方法を参考に対処してみてください。

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監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。

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