老人ホームから退去勧告受ける可能性のある5つの理由とその対処法とは?

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有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅グループホームでは、要介護度が上がり自力での生活が難しくなった場合や、認知症が進行して他の入居者に危害を加えてしまうと判断された場合、施設では対応できない医療の処置が必要になった場合には入居者に退去勧告を出す場合があります。

この記事ではどのような状況になると退去勧告が出されるのか、退去勧告をされた際にどのように対応するべきかについて見ていきます。

老人ホームから退去勧告を受ける可能性のある5つのケース

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老人ホームからの退去勧告は施設ごとに定められている退去要件を参照して行われます。そのため一概に言えるわけではありませんが、よくある退去勧告を受けるケースを3つ見ていきましょう。

1.身体状況が変化し入居基準に該当しなくなった場合

入居中に認知症の進行や体が弱って要介護度が上がってしまった場合や、入居後のリハビリや機能訓練によって要介護度が下がり、施設の入居できる基準から外れてしまった場合には、退去しなければならない可能性があります。

例えば、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅のように基本的に自立~軽度の要介護者を対象にしている施設では、要介護度が上がった場合に退去しなければならないケースがあります。

また特別養護老人ホームでは入居条件が原則要介護3以上の方に限定されているため、要介護度が下がった場合には退去勧告を受ける可能性があります。このような場合には施設に併設されているショートステイを利用するか、特例入所と呼ばれる要介護3未満であっても、家庭の状況などにより特養に入居できる制度を使うことで入居し続けることができます。

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2.認知症の進行などの原因で他の入居者やスタッフに迷惑をかけてしまう場合

介護施設では共同生活が原則なので認知症が進行し、突然大声を出してしまう場合や、暴力行為、自傷行為など他の入居者に迷惑をかけたり、施設の体制ではケアすることが難しいと判断された場合には退去するように言われる可能性があります。

このような症状が出た場合に施設側は医師に相談して、できる限りの手を尽くしてくれますが、それでも難しい場合には退去という流れになります。

施設によっては職員の対応で認知症の症状を抑えたり、薬によってコントロールできれば退去する必要がない場合がありますので、入居の際に施設に相談しておくと良いでしょう。

3.入院などの理由により一定期間以上施設に戻らなかった場合

老人ホームでは入居中に一定期間以上の入院をした場合には退去しなければいけない施設があります。対象となる入院期間は3か月や6か月など施設によって異なります。

入院期間が長くなり老人ホームを退去したけれども、その後にしばらくして元気になったという場合にはまた新たに入居契約を結び直す必要があります。

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4.月額費用など必要な料金を滞納し続けた場合

施設の入居費用は毎月請求書が届き、指定の銀行口座から引き落としがされる場合がほとんどです。しかし、引き落としができず督促されたのもかかわらずその状況が継続すると退去勧告を受けることがあります。
退所の対象となりうる滞納期間は契約書に記載されていますが、多くの場合2~3か月となっていることが多いです。そのため、銀行口座の残高不足にならないように気をつけるとともに、万一引き落としがされなかった場合には、振り込みなどのほかの手段での入金が可能かを施設に確認するようにしましょう。

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5.施設への入居書類に虚偽の記載があった場合

施設入居時の書類に虚偽があったことが発覚した場合にも退所勧告を受けることがあります。施設では入居に際して申込書の内容で入居の優先度を決めることがあります。そのため、入居を有利にするような内容の虚偽の記載があった場合、不正な入居とされてしまうためです。また、入居者の既往歴や生活歴、保証人の情報などにも虚偽の記載があり惚れが発覚した場合などでも退去を勧告されるケースが見られます。入居者と施設とは信頼関係が重要ですので入居書類にはありのままの事実を記載するように注意しましょう。

実際に退去勧告を受けた例

それでは実際に老人ホームから退去勧告を受けた具体的な事例を見ていきましょう。

要介護度が改善し、入居基準から外れてしまったAさんのケース

ショートステイを利用しながら特養を待機していたAさん、85歳女性の例です。

要介護2から3になり、特養への入所資格を得ることができ、やかで順番が来て入所することができました。

特養での生活では機能訓練に励み、シルバーカーを押しての歩行がスムーズにできるようになり、要介護3から2に改善され、特養で生活を継続する資格を失ってしまったのです。

特養の生活相談員から退去するようにを告げられ、次の行き先をどこにするか支援を受けながら、生活の場所を変更しました。

幸いなことに、特養と同じ法人が運営するショートステイに空室があり、そちらに移り、ロングショートとして生活をすることになったのです。

特養とそのショートステイは繋がっており、著しく生活環境を変化させることはありませんでした。

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退院後の病状が安定して老健を退去することになったBさんのケース

退院後、老健に移り生活をしていたBさん、90歳女性の例です。

老健では状態が安定すれば退去しなけれならないことは、家族は事前に説明を受け理解をしていました。

入居して1年が経過しようとしたとき、施設から一本の電話連絡が家族の元に入り、担当者サービス会議をすることになったのです。

その会議で各専門家の視点から意見が出され、最終的にBさんは心身状況が安定したため、老健で継続する必要性がなくなり、退去を促されたのです。

次の生活の場所を見つけるため、老健の支援相談員からのアドバイスなどを受け、老健から10キロほど離れてグループホームに移ることになりました。

10キロも離れて、家族の家からの距離も長くなりましたが、老健の近くで継続して生活できる場所がなかったため、渋々移動することになったのでした。

粗暴行為により特養を退去せざるを得なくなってしまったCさんのケース

認知症で精神状態が不安定になった、特養で生活するCさん、75歳男性の例です。

入居前から認知症があり、環境に馴染めない場合には粗暴行為があることをスタッフは理解していました。

特養に入居後、環境の変化からすぐに、スタッフへの介護抵抗、叩く、蹴る、大声を出すなどの迷惑ともとれる行為が現れ出したのです。

夜間は女性スタッフが一人で対応することもできず、男性スタッフが代わりに入ることもありました。

そんなある日、とうとうCさんが女性スタッフに対しても手を上げ、怪我をさせてしまったのです。

管理者はこのままではいけないと思い、Cさんの家族に連絡して特養を退去してもらい、精神科専門の病院を勧めたのです。

しかし、家族だけではどのような病院があるのか、どんなところがCさんに適しているか分からないため、特養の生活相談員の支援やアドバイスを受けながら、入院設備のある精神科病院を受診することになったのです。

受診後、入院が必要と診断されて、特養を退去して認知症の治療に専念することにしたのでした。

退去勧告を受けてから実際に退去するまでの期間はおよそ90日間

施設に退去するよう言われたとしても、すぐに退去しなければいけないということはありません。

一般的には90日の期間を設けていて、その間に次の施設を探したり、自宅での在宅介護の体制を整えることができます。実情として一方的に退去してほしいといわれることは少なく、施設の生活相談員が次に入居する施設や在宅サービスを受けるために必要なケアマネジャーを紹介してくれるケースが多いです。そのため、困ったことがあれば、まずは施設に相談することがおすすめです。

90日の間に新しい施設が見つからないまま、施設を退去しなくてはいけない場合にはショートステイを行っている施設に一時的に入居するか、ケアマネジャーに相談してケアプランを作成し、介護保険サービスを利用しながら自宅に戻って施設を探す必要があります。

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退去勧告に強制力はある?

診断をしている場面

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老人ホームからの退去勧告に強制力があるかどうかは、退去の理由が入居時に説明を受ける、「重要事項説明書」の退去要件に該当するかどうかによって異なります。

重要事項説明書に記載がある理由による退去勧告は強制力があるため従う必要があり、契約書に書いてある内容に該当するかどうか判断が難しく、退去に納得がいかない場合には裁判所に申し立てをすることや、契約時に渡される「重要事項説明書」に記載されている第三者の対応窓口に相談することができます。

主に相談窓口となるのは、自治体の介護保険の相談窓口や都道府県の国民健康保険団体連合が該当しますが、相談した場合でも裁判でも調査に時間がかかることは留意しておきましょう。

このような状況になるのを避けるためにも入居時には退去要件をよく確認しておく必要があります。

入居一時金は償却しきっていなければ返還される

高額な入居金を支払って有料老人ホームやグループホームなどの老人ホームに入居したのに、入居後すぐに介護度の変化などを理由に退去勧告を受け、退去せざるを得ないケースもあるかと思います。

そのような場合には退去する際にその入居一時金の一部が返却される可能性があります。

入居一時金は施設ごとに償却期間が定められており、施設に入居している期間が長ければ長いほど償却されていきますが、退去する際に未償却の金額がある場合には返還する制度があります。施設によって償却制度は異なるため、契約書や重要事項説明書を確認してみましょう。

入居一時金で返還される未償却の金額を計算する方法は以下の通りです。

返還金=入居一時金×(1-初期償却率)÷償却期間(償却期間×入居期間)

まとめ

もし介護施設から退去勧告を出されたとしても、すぐに退去しなければならないわけではありません。

ただし、どの老人ホームも終身利用できるとは限らず、退去しなければならない可能性はあります。入居の際には必ず退去要件を確認しておきましょう。

もし退去しなければならない状況になってしまったら下の記事で、現在の状況別に入居が可能な施設を紹介していますので、ご覧ください。

入居可能な老人ホームを身体状況別にご紹介します

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。

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