ぬめりが栄養満点!里いもがもつ栄養について管理栄養士がご紹介
里いもはじゃがいもやさつまいものように常時使われる食材ではなく、少しマイナーなイメージがあります。しかし、実は里いもには他のいも類にない栄養成分がたくさん詰まっているのをご存じでしたか?
今回は、里いも特有の栄養素を摂ることによって得られる効果や効能はもちろん、効率的に栄養素を摂取できる調理法や料理を紹介します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
里いもに含まれる栄養素・成分の効能とは
数あるいも類の中ではマイナーになってしまった里いもですが、日本での歴史は古く稲作以前の主食だったと推測されています。品種にもよりますが9月~1月が里いもの旬です。
いも類のため糖質が多いと思われがちですが、他のいも類に比べると少なくなっています。また、「たんぱく質」や、代謝を円滑にしてくれる「ビタミンB群」、高血圧や浮腫みが気になる方におすすめしたい「カリウム」など身体に嬉しい栄養素が多く含まれています。
さらに、里いものぬめりの成分である、ムチンやガラクタンには生活習慣病予防なども期待できる効果がたくさんあります。これらを詳しく紹介します。
カリウム
「カリウム」はいも類にたくさん含まれている栄養素ですが、100gあたり410mg~470mg含むじゃがいもやさつまいもに比べ、里いもは100gあたり640mgという含有量で、いも類の中でも特に多く含まれていると言えます。
カリウムは細胞の正常な活動をサポートしてくれる重要な役割をしていて、ナトリウムと作用しあいながら細胞の浸透圧を維持してくれます。そのため、余分なナトリウムを体外に排出する作用もあり、高血圧の予防が期待出来ます。
また、体内の水分保持の調節もしてくれるため、むくみが気になる方にはおすすめです。
ムチン
「ムチン」は里いもに含まれる水溶性の食物繊維のことで、ぬめりの原因でもありますが、私たちにとって嬉しい効能がたくさんあります。
1つ目は、肥満や糖尿病の予防する効果です。糖質の多い食事などをして急激に血糖値が上がってしまうと、上がった血糖値をもとに戻そうとインスリンというホルモンが大量に分泌されます。
インスリンには余った糖分を中性脂肪に変えて体内に蓄える作用があるため、太りやすくなってしまいます。しかし、ムチンには糖質の吸収を抑える働きがあるため血糖値の急激な上昇を防ぎ、肥満や糖尿病の予防する効果が期待できます。
2つ目は、粘膜を保護する効果です。ムチンは食べ物だけでなく、人間の体内にも存在している成分であり、消化器の粘膜や鼻や口など呼吸器の粘膜にもムチンが含まれています。これによりウイルスや花粉などの侵入を防いで、風邪や花粉症を防いでくれます。
3つ目は、水溶性の食物繊維なので善玉菌のエサとなり、便を柔らかくする効果です。便秘解消が期待出来ます。
ガラクタン
「ガラクタン」とは、炭水化物とたんぱく質の複合体で、私たち人間にとって健康を維持するための嬉しい効果を発揮してくれます。1つ目は、肥満予防効果です。人間の消化酵素はガラクタンを分解することが出来ないため、脂肪にならずに体外へ排出されます。
2つ目はコレステロールを下げる効果です。血中のコレステロールの付着を防ぐことで、血管内にコレステロールが溜まり血管が硬くなることで引き起こされる動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などを防ぐ効果もあります。
3つ目は、脳細胞を活性化させる働きです。老化を防いだり、免疫力を高めたりする作用もあるので感染症や風邪予防の効果も期待できます。
リグナン
「リグナン」は、里いもの皮付近に含まれているポリフェノールの一種です。ポリフェノールに分類されるリグナンは高酸化力が高く、身体の酸化を防ぎ、脈硬化などの生活習慣病を予防する効果もあります。
また、大豆イソフラボンと同様に、女性ホルモンと同じ働きをすることから、抜け毛予防なども期待されています。
里いもに含まれる栄養成分を効率的に摂取するには
里いもには、たくさんの栄養素が含まれていて私たちに嬉しい効果がたくさんあることがわかりました。しかし、これらの栄養素も調理の仕方によって効果が薄れてしまいます。
今回は、里いもに含まれる栄養素を無駄なく食べるためにどのように工夫すれば良いのか、3つのポイントを挙げました。調理の際の参考にしてくださいね。
ぬめりを落とさずに食べる
里いも特有のぬめり成分は、調理する際のふきこぼれの原因になるほか、味がしみこみにくく、口当たりが悪いといった欠点もあります。
しかし、このぬめりをきれいに取り除いてしまうことで、前述した通り、ムチンがもつ肥満や糖尿病予防、コレステロールを下げる効果、免疫力を高める効果などが薄れてしまいます。
そのため、下処理するときは、熱湯を使用して湯がくよりも電子レンジを使用したほうが良いでしょう。
水と触れ合わない調理法にする
里いもに含まれるカリウムやリグナンは水溶性の栄養素のため、下茹での際など水と触れ合うことで、水分に栄養素が流れてしまいます。
そのため、下処理はなるべく電子レンジを使用したり、スープや汁ものなど、汁ごと食べる方法で調理したりすると水溶性の栄養素を無駄なく摂り入れることが出来ます。調理法にも注意してみましょう。
調理の際に手が痒くなったときは酢で防ぐ
里いもの皮をむいていると手が痒くなることはありませんか?そのように感じるのは、里いもの皮付近に多く含まれるシュウ酸カルシウムが原因です。
シュウ酸カルシウムは、いわゆるアクで、針のようにとがった結晶のため、肌に触れることで皮膚が刺激を受けてかゆみや痛みとなります。また、かゆみなどを感じたからといって掻けばかくほど、結晶が深く刺さるため治りも時間がかかってしまいます。
このかゆみは、酸と結合して分解されやすくなるため手に酢を付けることで防ぐことが出来ます。
里いもを使ったおすすめ料理3選
これまでに里いもに含まれる栄養素や、これらの栄養素を効率よく摂るための調理法についてご紹介してきました。
最後に、これらの栄養素をたくさん摂取できる料理を3品紹介します。どれも手軽にできる料理ですので、ぜひ今後の食事作りの参考にしてみてください。
里いもと根菜のけんちん汁
里いも以外にも、にんじんやごぼうなどの根菜がたっぷり入ったけんちん汁は食物繊維も豊富で、お腹の調子を整えてくれます。また、里いものうま味も汁に凝縮され、汁に溶け出た水溶性の栄養素も摂取することが出来ます。
一緒に豚肉や鶏肉、豆腐などを入れることでたんぱく質も一緒に摂れるため、主菜や副菜を準備する時間がない忙しい日でもご飯とけんちん汁だけでバランスの整った食事になります。
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里芋のコロッケ
マッシュした里いもに、みじん切りの玉ねぎやひき肉を混ぜ合わせて、調味料で味を整えます。里いもはご紹介した通り、他のいも類に比べてカロリーや糖質量も低く、ガラクタンは体内で分解されないので脂肪にならずに排泄されます。
そのため「揚げ物を食べたいけど、脂肪が気になる・・・」という方には、おすすめの1品です。また、油で揚げずに予熱したオーブンで焼くことで余分な油をカットすることもできます。
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里いもとイカの煮物
里いもの定番料理でもある煮物は、下準備でぬめりを取りすぎるとぬめり成分に含まれる効果が半減してしまうので調理の際には注意しましょう。
また、イカには「タウリン」というアミノ酸が含まれています。タウリンにはコレステロールを下げる効果や血液を正常に保つ効果、心臓の機能を高める効果があるので、里いもと一緒に食べることで生活習慣病を予防する効果がアップすることも期待できる組み合わせです。
まとめ
里芋は、年中スーパーで見かけるいも類の一つですが、手に取る回数は少ないかもしれません。しかし、たくさんの栄養素とともに、私たちの健康に役立つ栄養素が含まれていることが分かりました。
里いもは品種が多く、時期によっても出回る種類が変わってくるので、いろいろな種類の里いもを楽しむのもよさそうですね。
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