在宅介護と施設介護の費用はどれくらい違う?介護にかかる「お金」の考え方

自宅で介護をするのか、それとも施設に依頼するのかを検討することもあるでしょう。

施設に入居するメリットはたくさんありますが、それに比例して費用もかかるのが一般的です。

介護施設の場合、24時間365日の介護はもちろんのこと、リハビリテーションの専門スタッフや歯科衛生士などから介護以外の支援も受けられるため、在宅介護よりも費用が高額になることは確かです。

この記事では、施設に入居した場合と自宅で介護した場合を比較した際に、どれほどの差が生じるのかを分かりやすく解説していきます。

今後施設への入居を考えている方は必見です。

※この記事では『家』以外の高齢者向け住宅も『施設』とした扱いにしています。

ブタ 費用の積み上がり
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介護にかかる「お金」について考える際のポイント

コスト
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介護と言えばお金に関する不安が先行しがちです。

しかし入居の際に発生するお金のことだけを先行して考えていると、あとあとになって「こんなことでもお金が発生すると思っていなかった・・・」と、経済的な計画が崩れる可能性もあるのです。

ここでは、入居時に発生する費用以外にも考えておかなければならないことについて解説していきます。

 

要介護者の経済状況(年金、貯金、資産など)を整理し、使える金額を把握しておく

介護にかかるお金は要介護者本人の年金や貯金などでまかなうのが理想です。

そこでまずは2ヶ月に一度支給される年金額の把握が大切です。

施設への支払いは1ヶ月に一度になりますので、2ヶ月に一度の年金を把握した上で計画的に支払いができるようにしておく必要があります。

年金だけでは月々の利用料金の支払いが出来ない場合や、高額な医療費や薬代が必要になる場合もあり、1割負担の医療費でも月々5,000円ほど必要となる方もいます。

そのような時はまず本人の預貯金を切り崩して支払いをすることになるので、全預貯金の把握を行い、通帳や印鑑がどこにあるかまでを押さえておきましょう。

あとは不動産収入や有価証券も把握しておく必要があります。

不動産収入については、主介護者に名義を変更しておくというのも方法のひとつです。

 

長期的な目線で考える

介護が必要な状態から最期を迎えるまでの期間はそれぞれ違います。

1年未満で最期を迎える人もいれば、10年を超えて介護生活をする人もいます。

子育てなら成長に応じて手がかかる年月が分かりますが、介護の場合先が見えません。

そのため、長期に渡り介護が必要になることを前提としておく方が安心です。

例えば、80代前半で介護が必要になり、残りの人生が少ないだろうと考えて所持金を短期間で使い果たすような考えは危険です。

80代前半なら100歳まで介護生活になることも十分考えられます。

胃から直接栄養を摂取する胃ろうとなっても、10年を超えてそのままの状態で介護を受け続けることもあるのです。

介護は10年を超えておこなわれることも想定して、バランス良くお金を使うようにしましょう。

出典:内閣府「高齢化の状況 高齢期の暮らしの動向」

 

経済面以外のことも考える

介護に対してお金のこと以外にも気をつけるべきところはあります。

例えば、家の近くに比較的安価に入居できるサービス付き高齢者向け住宅ができたからとすぐ入居した場合、要介護が上がるにつれて外部の介護サービスを利用する必要があり、結局費用が高くなってしまう・・・ということもあります。

お金のことを第一に考えるあまり、最終的に失敗してしまう事例もたくさんあります。

当然のことながら、施設での生活のなかで介護を受けて、それに対して『嬉しい』『優しい』『あの人は苦手』『介護の質が悪い』と実際に感じるのは利用者です。

介護を受ける利用者本人が親、兄弟・姉妹の場合は特に介護の質にも注目した計画をする必要があるでしょう。

 

在宅介護の場合、施設入所の場合にかかるそれぞれの費用の目安を比較

まずは最初に、ざっくりと費用の目安と内訳を把握していきましょう。

 

在宅介護でかかる費用の相場と内訳

ブタ 節約
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要介護1と要介護5では、介護サービスにかかる費用は変わってきます。

そして、その他にも連動して必要になるお金もあります。

ここでは在宅介護でかかる様々な費用の内訳をご説明します。

  • 介護にかかる費用
    要介護1の場合なら月々2万円程で、要介護5になると4万円程になります。
  • 衣類に関する費用
    要介護1、2の間はそれまで着用していた衣類で大丈夫ですが、要介護3以上になると身体状況の合わせた衣類でないと難しい場合があり、新しく購入する必要性があります。
    例えばおむつ交換をしやすいズボンは高額で、一着5,000円ほどします。
  • 食事に関する費用
    手作りの食事だけだと、作る家族は大変です。
    そのような場合には、配食サービスなどを依頼するのがよいでしょう。ただし一食500円~600円はしますので、1ヶ月頼むと15,000円以上の費用になります。
  • 雑費にかかる費用など
    介護を快適におこないやすい環境にするために必要な雑費になります。例えば、麻痺の人でも使えるスプーン、介護用のテーブル、オムツ収納棚、トロミ剤、食事用のエプロン、お尻拭き(ウエットティシュ)などです。
    介護保険の対象として購入できるものもありますが、適用外のものもありますので、そのつもりでいましょう。
    月々2,000~3,000円程は予算として考えておきましょう。

これらのことを総合して、在宅介護を10年継続した場合、500万~600万は最低必要になってくるでしょう。

一ヶ月に換算すると5万円~になりますが、要介護度によっては倍程度になることもあります。

 

施設入所でかかる費用の相場と内訳

お金と施設のバランス
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ここでは施設に入る場合に、実際にどれぐらいの費用が必要になるかを解説していきます。

 

特別養護老人ホームなどの介護保険施設の場合

  • 施設に直接支払う費用
    利用者負担額(1~3割)と居住費、食事代が合わせて請求されます。要介護5の場合だと13万円程かかります。
  • 管理費や余暇活動にかかる費用
    徴収されない場合もありますが、多くのところで必要になっています。
    個別に実費を徴収される施設もあれば、全員一律で2万円を徴収される施設もあります。
  • 医療費
    薬代、往診料など月々2,500円程かかるのが平均です。
    難病や癌など特別な病気がある場合はそれに加えて月々5,000円が余分にいるでしょう。ただし、難病しての疾患なら公費負担で免除される部分もあります。
  • 衣類にかかる費用
    自宅にあるものをそのまま使うケースがほとんどですので、特別かかることはありません。
    もし、寝たきりになれば、施設から浴衣の購入を勧められる場合がありますが、一着2,000円ほどで購入ができます。

すべてトータルで考えた場合月々15~16万円程度になります。

10年間継続した場合には2,000万程度必要になります。

 

有料老人ホームなどの高齢者向け住宅の場合

一時金(前払金)として、数百万円かかる施設もありますし、数十万円ほどで入居できる施設もあります。
この金額はサービスの内容や、設備、立地条件などによって違ってきます。都市部では高級老人ホームとして、高額な一時金(前払金)を払う施設が多いですが、地方では比較的安価な施設が多くなっています。

  • 月々の支払いについて
    月々の支払いは、20万円~30万円が平均的です。食事は別途請求される場合もあり、月々3~5万円程度でしょう。
  • 医療費について
    薬代、往診料など月々2,500円程度かかるのが平均的です。難病や癌など特別な病気がある場合はそれに加えて月々5,000円が余分にいるでしょう。ただし、難病しての疾患なら公費負担で免除される部分もあります。病院が遠方であるなら、タクシー代などの交通費も考えておく必要があります。
  • 交際費や趣味にかかる費用
    比較的元気な方も入居される高齢者向け住宅なら、部屋でテレビを観るだけではないでしょう。
    同じ施設内の仲間と遊びに出かけたり、趣味についても費用を考えておかなければなりません。
  • 介護保険サービス料
    特定施設入居者生活介護に指定されている施設の場合は要介護度によって介護保険適用サービスを受けることができます。
    一方、介護保険サービス適用外の施設の場合、自分達で別料金を支払いサービスを受けることになります。要介護5などの重度ではなく、要支援1程度の軽度を想定した場合、月々2万円は必要になります。

すべてトータルで考えた場合、月々40万~50万程度かかるでしょう。

もちろん、富裕層をターゲットにした施設ならそれ以上かかる場合もあります。

10年間継続した場合には5,000万円程度必要になります。

※一時金(前払金)は含みません。

これらの金額はあくまでも目安です。

厳密な金額を知りたい場合は直接施設等に問い合わせるといいでしょう。

在宅で介護をするのと、施設などのお世話になるのとでは、これほど差があり、施設に入居した場合が高額であることが分かります。

ただし、実際には施設に入居する段階で持ち家を売却する方が多いので、その分を月々の費用として支払うケースもあります。

介護が必要になり重度になると、それに比例して費用も高額になるということを押さえておきましょう。

 

それぞれのメリットとは?

メリット
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お金のことだけ考えると在宅での介護の方が安価です。

しかし、家族はその分心身面で負担が大きいです。

特別養護老人ホームなどの介護保険施設に依頼することによって、家族の負担は随分軽減できるでしょう。

 

在宅介護の費用に関するメリット

在宅で介護をすることは、多少なりとも家族の支援が必要ですが、とにかく費用を安価に抑えることができるのが最大のメリットです。

家族に介護経験があれば、サービスを利用せずに更に費用を安価に抑えることもできます。

 

施設入所の費用に関するメリット

施設に入所するのはそれなりに費用がかかります。

しかし、逆に言えばそれだけのサービスを受けられるということです。

「とにかくお金のことは気にしない」「良いサービスを受けて老後を楽しみたい」と考える人にとっては、高額な費用を払ってもそれ自体がメリットになります。

 

老人ホームに入るための費用が支払えない場合には?

瓶に入ったお金
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例えば、老人ホームへの入居を希望していても、経済的な理由で月々の費用が払えそうにない場合があるでしょう。

そんなときは、なんとかして経済的な負担を少なくする方法もあります。

すべての人が該当するわけではありませんが、いくつかその方法をご提示させて頂きます。

 

家族ができることは家族でおこなう

老人ホームに支払う毎月の費用は仕方がないとします。

そうした場合、節約できる部分というのは、衣類や余暇活動にかかる費用です。

衣類の場合、施設で一括購入する場合もありますが、「自分で購入して持参します」と言って安く購入したり、既に持っているものを自宅からどんどん持参するといいでしょう。

余暇活動についても、はっきり「お金がないので不要です」と言えば、その分の支払いはしなくてもいいでしょう。

 

条件を変えて老人ホームを選ぶ

例えば特別養護老人ホームの場合だと、複数の人が同じ部屋を利用する『多床室』と、一人一部屋の『個室』があります。

個室の場合だと月々10万円を超えますが、多床室であれば7~8万円で入居できる施設もあります。

老人ホームの立地についても重要です。

物価が高い都市部でなく少し離れた地方で探したり、最寄の駅から少し離れた老人ホームを探すことによって、少しでも費用を抑えることができるでしょう。

 

減免制度を利用する

利用者本人の経済状況に応じて減免制度を受けられる場合もあります。

その代表的なものとして、『負担限度額認定制度』『社会福祉法人等による利用者負担軽減制度』があります。

現在、在宅介護から施設への入居を考えているけれど、経済的な理由でなかなか決断できないでいる方は、以下のサイトをご覧下さい。更に詳しく、お金に関する不安を少しでも軽減できる方法を書いてあります。

在宅介護はもう限界…施設介護を利用するタイミングはいつ?メリット・デメリットも徹底比較!

 

まとめ

高齢者と家族の手
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「とにかく安い方がいい」という気持ちも分かります。

しかし、費用だけを考えてもデメリットももちろんあります。

預貯金と受給される年金をある程度把握した上で、3年後、5年後、10年後の介護生活についてイメージを膨らませて、在宅介護から施設への入居へと切り替える選択肢も考えておくことをおすすめします。

老人ホームを探してみる

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。