老健とは?費用やサービス、入居条件まで徹底解説

老健とは正式には介護老人保健施設と呼ばれ、要介護認定を受けた方のうち病状が安定しており、入院治療の必要がない方が再び家庭で生活をおくれる(在宅復帰)ように支援する介護保険施設です。

そのため、医療的な支援やリハビリテーションをおこないながら、同時に介護もおこないます。

この記事ではそんな老健のサービスの特徴やメリット・デメリット、特養(特別養護老人ホーム)との違いなどをまとめていきます。

介護老人保健施設でのリハビリ
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老健の役割とは

老健の役割は 要介護認定 を受けた方のうち、病状が安定している方に医療的な支援やリハビリを行い、在宅での生活ができるようにサポートをするという病院から自宅への経由地点のような役割をしています。 

医療的な支援を行うために、常勤の医師や看護師が配置されており、他の介護施設と比較すると医療面でのケア体制が整っているという特徴があります。

そのため、老健の運営主体は医療法人が約73%、次いで社会福祉法人が約16%となっており、主に非営利法人(公益法人)により介護サービスが提供されている介護施設になります。

老健で受けられるサービス

老健では「家庭での日常生活」への復帰を目指すためのサービスを中心に提供しています。

具体的には食事・入浴・栄養管理などの日常的な支援のほか、老健の医師や看護師による医療的な支援や理学療養士などによるリハビリテーションなどです。

老健の特徴とも言える、リハビリテーションと医療・看護ケアについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

リハビリテーションサービス

老健にはリハビリテーションを提供するため、理学療法士などの専門資格を持ったスタッフが在籍しています。

老健に入ってリハビリを行うために、専門家が入居者を観察・情報収集し課題を分析し、そのうえで個々に合わせた機能訓練を行うことになりますので、その人その人に合わせたリハビリメニューが作成されます。

例えば、上肢の関節可動域に制限があれば、それ範囲を広げる関節可動域訓練を行い、嚥下機能に問題があり、スムーズに食事ができなければ嚥下訓練なども行います。

さらに、個別で行う機能訓練以外に、集団機能訓練も実施される場合もあります。

これは、ある程度同じレベルの心身機能の入居者を集めて、集団で体操などを行うのです。

ただ、リハビリテーションの専門職は少ない人数で行っているため、一人当たりがリハビリを行うことができるのは平均すると2/週ほどになります。リハビリテーションに力を入れている施設であっても、毎日機能訓練を受けられることはありませんので注意しておきましょう。

医師・看護師による医療・看護ケア

老健では医師は必ず常勤として勤務しているので、日常的に入居者の健康管理・診察・薬の処方や、転倒・転落などの事故に関してもある程度の対応が可能です。

看護師も配置されているため、介護スタッフで実施できない医療行為を医師の指示を受けて実施できます。具体的には健康管理(バイタルサインの測定)、投薬介助、怪我の治療などに加えて、注射、点滴、重度の褥瘡の処置、胃ろうへの栄養注入などが挙げられます。

看護師が多いため医療行為を提供できるということに加えて、一人の入居者をアセスメントする場合、医療的視点から詳しく見ることができるメリットもあるのです。

老健の入所期間

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ここまで読んでいただければ分かる通り、老健はあくまで在宅復帰を目指す施設です。

そのため老健は長期入所を想定しておらず、「在宅復帰できるかどうか」について3ヶ月ごとに入所判定をおこないます。

入居可能な期間は原則3ヶ月~長くて1年程度であると想定しておきましょう。  

しかし、老健は全国的に長期入所となっている傾向にあります。

その一番の理由として、老健を退所したあと、生活を十分フォローできるだけの支援を受けることができないことがあります。

例えば、在宅での生活が可能なレベルまでの回復が難しかった場合、在宅→病院→老健→特養というコースが想定されますが、特養になかなか入所することができず、そのまま長期に渡り老健を利用することになるのです。

また、利用者本人は心身ともに在宅復帰できるまでのレベルに達していても、それを支援する家族が高齢であったり、病弱であるために在宅復帰に至らないケースも珍しくありません。

このような理由で、老健が特養のような利用をされるケースもあるのです。

看取りまでおこなっている施設もある

老健はリハビリテーションや医療的な支援をおこなうことで入居者の在宅復帰を目指す施設であるため、看取りは原則おこなっていません。

しかしながら、現在64%の老健は終末期に入った入所者に対して看取りを行っていると回答しています。

これは民間の老人ホームには費用が高くて入れないが、特養も入居待ちをしているという現状から、老健で看取りまでおこなうという需要が高まっているからだと考えられます。

また「ターミナル加算」が認められたことにより、施設によっては看取りをおこなうことを前提として入居者を受け入れている場合もあります。

参考: 「平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」   

老健の入居条件

老健に入居するためには、以下のような条件があります。

  • 原則65歳以上の方(16種類の特定疾患により介護認定を受けている場合は40歳以上で入居可能)
  • 要介護度1以上を受けている方
  • 機能回復を目的としているため、短期の入居でも可能な方
  • 施設によっては「感染症」「病状」「入院治療の必要性」も判定基準に

ただし、「看取り」を前提とした入居者を受け入れている場合などの例外もありますので、各施設ごとに確認する必要があります。

また、老健には認知症であっても入居は可能ですが、 以下のような認知症の症状がある場合は断られることもあります。

  •  職員や他の利用者を危険にさらす可能性がある
  •  認知症に対して専門的な治療の必要性が高い
  •  別の利用者の認知症を悪化させるような行動がある(精神的に不安定な人に対して大声を出すなど)

認知症のない人と、ある人が混合して同じ空間(同じ棟)で生活する施設もあれば、認知症の人だけを同じ空間で生活してもらうスタイルにしている施設もあります。

どちらの方がいいのかは、その人の性格や特性によりますので、実際にその空間に入ってみなければ分からない部分があります。

老健の費用

老健は介護保険が適用される施設であり、入居にかかる費用は比較的安い費用となっております。

ここでは老健の入居にかかる費用についてみていきしょう。

ぶたの貯金箱

初期費用はなし

老健は公的な機関によって運営される介護保険施設であるため、初期費用はかかりません。

「介護施設に入りたいけどまとまったお金がない」

という方でも安心して入居することができます。

月額費用の目安

居室の形態によって値段は変動するものの、月額費用は7~13万と比較的安いものになっています。

この費用には投薬や注射、採血検査など日常的な医療行為の費用も含まれています。

これに加えて、施設のリハビリテーション設備・体制や介護サービスによっては月額費用に加算されることがあります。

またその他洗濯代、日用品、電話代などの生活費を実費で負担する場合もあります。

ただ、所得や貯金額によっては食費と住宅費を公費で負担してくれる「介護保険負担限度額認定証」の交付を受け、費用をおさえることができます。利用には申請が必要なので注意しましょう。  

老健に入居した際の具体的な費用イメージや減免制度についてもっと詳しく知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。

老健の人員配置とは

老健では入所者の在宅復帰を実現するために必要な人員を配置する義務を負っており、様々な専門家が協力し合っています。

例えば簡易的な医療・看護ケアをするために医師や看護師が常勤していたり、リハビリテーションをするために理学療法士などの専門家も配置が義務付けられています。

老健に配置されている職種とその役割をそれぞれ見ていきましょう。

医師

老健の施設長(管理者)は医師で、必ずひとりは配置する必要があります。

医師は施設全体の利用者の健康状態を把握して、看護師、介護スタッフ、機能訓練指導員等と情報を共有するようにつとめます。

また、多職種で構成されるカンファレンスにも参加して、医療的観点での助言などを行ってくれます。

もちろん、お薬の処方についても常勤の医師が行います。

看護師・介護職員

入居者3名に対して、介護・看護スタッフは1名以上は必要です。

さらに、 看護職員の割合は、介護職員に対して7分の2である必要があるため、特養と比較して看護ケアが手厚いといえるでしょう。

介護職員は 主に、日常的なケアを行い、食事・入浴・排泄介助、レクリエーション支援、生活リハビリ(生活のなかでの機能訓練)などを行います。

看護師に関しては、医療行為を行うとこもあり、IVHや胃ろうの管理、嚥下困難者への食事介助、インスリン注射、点滴、白癬菌爪の対応、摘便、浣腸なども実施します。

施設によっては、介護と介護の役割をはっきりと分けていて、ユニフォームも違う場合もあります。

しかし、最近ではあまり職務を分けず、医療行為だけは看護師が必ず行うようにするとことが増えています。

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士

リハビリテーションの専門家である理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、入居者100名に対して1名以上は配置しなければなりません。

ただし、3つの有資格者を1名ずつ配置するのではく、どれかひとつの資格保持者で構いません。

下肢筋力アップのために老健を選んだにも関わらず、実際には言語や嚥下に関する『言語聴覚士』しか配置されていないということにならないよう、事前になにを専門とした機能訓練スタッフが在籍しているか調べておいて、自分が希望する機能訓練ができるようにすることで、より専門的なリハビリテーションが受けられるでしょう。

介護支援専門員(ケアマネジャー)

ケアマネジャーは入居者100名に対して1名以上は配置することが定められており、主に老健内で生活する入居者に対してケアプランを作成・提案します。

ケアプランと言えば、居宅で生活する人を対象にしたものを連想する人が多いと思いますが、実は施設内でもケアプランの作成は行われて、それに沿った支援を行うのです。

例えば、頻回にトイレに行きたいと訴える入居者に対して観察・情報収集(アセスメント)をします。そして、それを解決するための目標を設定して、具体的に取り組む内容を考えて現場で実行されるようにプランを立てるのです。

プランには期間を設けて(通常3ケ月)、実際に実施してみてどうだったか反省(モニタリング)を行っていきます。

相談員

相談員は入居者100名に対して1名以上は配置しなければなりません。

管理者の方針により、100名に満たない場合でも2名の相談員が配置されている施設もあります。

主な役割として、入居者と家族が円滑に生活するための支援(相談)、入退所に関すること、レクリエーション支援などがあります。

このなかでも、入退所に関しては、稼働率を高めるために苦労をするとことです。

退所の支援であれば、本人の心身状況と家族の介護力を基本にして、経済状況まで関して次の行き先を探さないといけません。

入所の支援であれば、入所前の心身状況の把握、現場への連絡、家族や本人の生活の意向まで調整して受け入れることになります。

老健の施設分類とは

老健は平成30年の介護報酬改定によって施設類型が大きく再編され、下記の表のように施設でおこなわれているサービスや、入居者の在宅復帰率、人員配置によって 「超強化型」「在宅強化型」「加算型」「基本型」「その他型」 の5つに分類されています。

 

超強化型

在宅強化型

加算型

基本型

その他

在宅復帰・在宅療養支援等指標

70以上

60以上

40以上

20以上

要件を満たさない

退所時指導等

要件あり

要件あり

要件あり

要件あり

左記の要件を見たさない

リハビリテーションマネージメント

要件あり

要件あり

要件あり

要件あり

地域貢献活動

要件あり

要件あり

要件あり

要件なし

充実したリハビリテ―ション

要件あり

要件あり

要件なし

要件なし

参照: 株式会社 南日本情報処理センター 在宅復帰・在宅療養支援機能に対する評価

指標で示されている点数の合計値が高く、「要件あり」となっている施設の方が設備やサービスが整っており、自宅への復帰率も高いということになります。

つまり「超強化型」老健が在宅復帰率が高くサービスが充実している老健ということになります。

ご希望の老健がどの型に分類されているのかも、施設を選ぶひとつの基準になるのではないでしょうか。

老健のメリット・デメリット

老健はどのような方に適しているのでしょうか。

ここまで老健についてみてきたことを踏まえて、メリット・デメリットをまとめてみました。

メリット

血圧計、薬などの医療体制

医療支援を提供する環境が整っている

老健は「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」によって以下のような人員配置をすることが義務付けられており、24時間看護師または介護職員を常駐している施設です。

  • 医師、介護支援専門員(ケアマネジャー)を入居者100人に対し1人以上
  • 栄養管理士を入居者100人以上の場合1人以上
  • 看護、介護職員を入居者3人に対し1人以上

そのため入居者はいつでも健康管理や応急処置程度の医療行為が受けられる体制の下で生活することができます。  

リハビリテーションの体制が整っている

老健は「生活習慣の維持」「日常生活動作の維持・改善」のための機能訓練の実施が義務付けられています。

その規定に沿って、理学療法士(または作業療法士・言語聴覚士)などのリハビリテーションの専門職員が入居者100人に対して1人以上常駐し、サービス計画書(入居者ひとりひとりに合わせた施設での目標)に基いて短期集中的なリハビリテーションを実施しています。

またリハビリテーション設備が充実、リハビリテーションを目的としたレクリエーションの実施など施設での生活全体が生活訓練を促すものになっています。  

さらに、介護職員までリハビリテーションへの考えが徹底されているケースが多く、普段の生活のなかでも、筋力維持・低下を意識した介護(生活リハビリ)が行なわれています。

在宅復帰を目指せる

老健の基本方針は「入所者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにすることとともに、その者の居宅における生活への復帰を目指す」ことです。

施設はこの方針に従って入居者に対し状況に合わせたサービスを計画する他、住宅改修をはじめとする家庭環境の相談をおこなうなど、在宅復帰後まで見据えたサポートをします。

また、加算型・強化型の老健においては退去後も8割以上が状況確認を実施しフォローを行うなど、退去後も家庭での日常生活を支援します。  

比較的安価で利用可能

老健は入居時の初期費用がかかりません。

また、特養に比べると若干値段はあがるものの、介護をうけられる居住施設のなかでは比較的利用料が安いのが特徴です。

参考:社保審-介護給付費分科会「介護老人保健施設」  

デメリット

カレンダー
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短期間の滞在が原則

あくまで在宅復帰を目指した支援をおこなう施設であるので、短期滞在を想定しており、入居時には退所の時期も伝えられることもあります。

入所判定も3ヶ月ごとにあり入居可能期間も決められているため、基本的に長期間利用することはできません。

実際には、老健の平均在所日数は311日と原則(3ヶ月~6ヶ月)より長くなってはいるものの、特養の平均在所日数1,405日と比べると利用目的の違いがわかるでしょう。

退所を迫られることもある

老健に入所している際に長期入院をすることになれば施設側が医療費を払わなければいけません。

そこで施設側は利用者に対し退所手続きと医療機関への移動を促されることになります。

また、在宅強化型老健のなかには、上記で紹介した「在宅復帰・在宅療養支援等指標」の数値要件を上回るために半強制的に退所を迫る施設もあります。

個室が少ない

多床室が84%(特養 62%)を占めており、個室がとても少ないです。 そのため個室がいい場合でも空きがないことが多く、利用できた場合でも基本料金が高くなります。

参考:全国老人保健施設協会「介護保険と老健施設」  

生活支援が手薄

食事・入浴・排泄などの身体介護は提供されますが、洗濯については家族に持ち帰っていただくか業者への依頼が必要となります。

持ち帰る場合は、平均週に1~2回は行くようになるので、家族の負担が考えられます。

業者への依頼は、予め老健が指定しているところがありますので、安い業者を選べるような選択肢はないでしょう。

また、買い物代行をおこなっていない施設もありますので支援が必要な場合には入居前に調べておく必要があります。 

医療保険の適用が受けられない

老健においては介護保険の範疇で医師からの診断・薬の処方などの日常的な医療サービスが行われており、医療機関での受診を受けたい場合は施設と契約している医療機関を利用することになっています。

老健に入居したまま他の医療機関を受診した場合、医療保険が適用されないこともあります。

そのため入居施設を決める際には、主治医と相談して施設選びをしましょう。  

老健での1日の過ごし方とは?スケジュール例を紹介

一般的な施設のスケジュールを参考に一日の流れをご紹介します。

スケジュールの例

  • 6:00~ 起床
  • 7:30~ 朝食・健康チェック・口腔ケア
  • 9:00~ 個別リハビリテーション・入浴
  • 12:00~ 昼食
  • 13:00~ レクリエーション・集団リハビリテーション
  • 15:00~ おやつ
  • 18:00~ 夜食・口腔ケア
  • 20:00~ 就寝

このように、入浴・食事といった介護サービスに加えて、1日を通してリハビリテーションやリハビリテーションを目的としたレクリエーションが行われていることがわかります。  

参考:1日の流れ | 入所のご案内 | 介護老人保健施設 加瀬ウェルネスタウン

参考:一日のスケジュール | 一日のスケジュール | 米津老人保健施設 

老健と特養の違い

施設の目的が異なります。

老健は身体の機能維持・回復を図り入所者の在宅復帰を目指す施設です。

対して、特養は入居者が可能なかぎり在宅復帰できることを念頭におきつつ、すぐ在宅へ戻ることに不安を感じる入居者に対して、生活全般の介護を提供する施設となっています。

そのため、さまざまな項目で違いがあります。 特養と老健の違いについてもっと詳しく知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。

まとめ

老健は日常的な医療ケアやリハビリテーションのサービスが受けられます。

ただし病院ではないので専門的な医療治療はおこなえません。

長期の入院が見込まれる場合や病床の悪化した場合には退所勧告が出されることもあります。

また入居希望者が多い施設であるため、だんだん満床になり入りにくくなっていますので、老健への入居待ちをしている間にはいれるような有料老人ホームなども候補に入れて調べておきましょう。

 

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。