仕事と介護の両立は無理?介護離職で後悔しないためにできること

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高齢者が増加し、働き手が不足している現代において、

「仕事」と「介護」の両立は社会全体で考える課題となっています。

自分以外に介護する人がいないという方が「介護をしながら仕事を続けたい」と考えてはいても

「両立しようとしたけど心身の負担が大きかった」

「介護に時間を取られ、これまでの業務をこなせなくなった」

と、結局仕事を辞めてしまうという方が多くなっています。

このように介護や看護をするために仕事を辞めることを介護離職といいます。

では仕事を辞めずに介護を続けるためにはどのような対策方法があるのでしょうか?

この記事では介護離職のリスクをまとめたうえで、仕事をしながら介護を続けるためのポイントを整理していきます。

介護離職の現状

「介護しながらも仕事は辞めたくない!」と仕事と介護を両立できている方はどのような介護生活をおくっているのか、

その生活に耐えられず介護離職をしている方は年間何人いるのかについてみていきましょう。

介護をしながら仕事している人の介護日数

働きながら介護をしている方はどれくらい介護に時間を当てているのでしょうか?

介護をしながら「正規の職員・従業員」として働いている方の介護日数をみると、男性は「月に3日以内」、女性は「週に6日以上」の割合が最も高くなっています。

また、介護をしながら「非正規の職員・従業員」として働いている方の介護日数をみると、男性は「週に6日以上」が最も高く、女性は「週に6日以上」の割合が最も高くなっています。

つまり自宅で介護をおこなっている場合、女性は仕事の有無に関わらずほぼ毎日、男性は離職してからは毎日介護をしているということになります。

参考:雇用失業統計研究会

正規雇用者の介護離職が増加

過去1年の間に介護離職をした方の人数は2012年で10万1000人、2017年で9万9100人と、毎年約10万人もの方々が介護離職をしています。

加えて、近年は介護離職者のうち正規雇用の方の割合が増加しています。

つまり、正規雇用社員として働けるはずの方々が仕事と介護の両立に耐えられず、介護のために仕事をやめなければならなくなっているのが現状です。

雇用形態別、介護・看護離職者数の推移

出典:大和総研「介護離職の現状と課題」

「介護のために仕事を辞め後悔している」介護離職のリスクとは

毎年多くの方が介護離職をしているのが現状です。

ただ介護離職したことにより仕事と介護を両立していた時よりも生活が楽になるとは限りませんし、後で後悔することにもなり得ます。

ここでは介護離職をすることによって引き起こされるリスクを紹介していきます。

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自分のために費やす時間が減る

介護離職は言い換えれば、今まで自分が時間を費やしてきた仕事を辞め、キャリアに空白を作るまたは手放すことであるとも言えます。

また仕事を辞め介護中心の生活となると、日々のほとんどの時間を介護に費やすことになり、自分の自由な時間はとても少なくなります。

仕事をしている間は仕事のストレスが大変だと感じていたけど、介護に専念するようになると、実は仕事をすることがストレス解消だったと感じる方もいらっしゃいます。

さらに、仕事を辞めることで人と関わる機会が減り、プライベートな時間も取りにくくなることで人間関係が狭くなることも懸念されます。

そうなると自分の時間を確保できないことへの精神的ストレスを抱えたまま、ゴールの見えない孤独な介護生活をおくることになる可能性があります。

参考:「介護疲れ」の症状と原因は?早めの対策でストレスを解消しましょう

経済的な悪循環に陥る

老人ホームに入居するとなると在宅介護よりもお金がかかります。

そのため「老人ホームに入居させるよりは、仕事をやめて在宅介護をし、介護にかかる費用を少しでも抑えよう」という考えから介護離職を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかしながら介護離職が原因で経済的な悪循環に陥ることもあります。

というのも、介護離職後は生活費を自分の貯金や自分以外の家族の収入、親の年金などでまかなうことになります。

その結果、これまでの生活よりも支出は増えるのに収入が減り、家族が経済的に困窮してしまうというケースがよくみられます。

仕事を辞めて在宅介護をし、一緒に過ごしながら介護をしてあげるのか、仕事を続けてお金を稼ぎ、親に少しでも良い暮らしをしてあげるのか、よく考える必要があります。

在宅介護と老人ホームのそれぞれにかかる費用について目安や内訳を知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。

参考:在宅介護と施設では費用にいくら差がある?|介護にかかる「お金」の考え方

再就職するのが難しい

介護離職者の再就職率は良いとは言えません。

再就職を希望している方が就職活動を行っても、実際に再就職できたのはそのうち約4割となっています。

また再就職できた方のなかでも、正社員としての雇用はそのうち約2割です。

介護離職者の再就職状況

参考:大和総研「介護離職の現状と課題」

そのため「介護が落ち着いたからまた働きたい」と思っても再就職できなかったり、できたとしても自分の望む職種や雇用体系ではなく、以前と比べ収入が少なくなることが多いため、自分の老後のお金についての経済的不安も出てきてしまいます。

「介護しながら稼ぎたい」仕事と介護を両立する方法

仕事と介護を両立するとなれば、やらなければいけないことが増える分、自分の時間を確保することが難しくなります。

また、仕事の疲れに加わり、日々の介護による介護疲れも溜まってしまいます。

そのため少しでも仕事と介護それぞれの負担を減らすためのポイントを押さえ抑えましょう。

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家族や親類など周りの人に仕事を続けたいと伝える

仕事と介護を1人で両立することはとても難しく、家族や親類をはじめ周りの人の理解や協力がとても重要になってきます。

家族や親類で時間に余裕のある方がいれば協力を求めてみましょう。

例えば家族で各自担当を決め、負担が1人に集中しないようにしたり、週に1日親類の方に協力してもらったりするだけでも両立しやすい環境になるでしょう。

ケアマネジャーや地域包括支援センターなど介護の専門家に相談する

「ずっと仕事をしてきたけれど親がいきなり倒れ、突然介護を始めることになった」

という場合など、そもそも何をどうすればいいか分からないという方はお近くの地域包括センターでケアマネジャーを紹介して貰いましょう。ケアマネジャーは介護についての専門家です。

そしてケアマネジャーを紹介してもらえたら、在宅介護でも仕事を続けたいという旨をケアマネジャーさんに伝えておきましょう。

そして、仕事をしながらでもできるだけ介護が楽になるようなサービスの利用計画をしてもらいましょう。

職場に相談し、働き方を変える

介護をしながら仕事を続ける場合、どうしてもこれまでどおりに仕事ができなくなることが多くなってしまいます。

そこで職場に自分が介護をしていることを伝えているかが大切になってきます。

近年は相談次第でフレックス制度、始業・就業時刻の繰り上げ・繰り下げ、在宅勤務・テレワーク、短時間正社員制度などの選択ができる企業も増えてきています。

またそのように大幅に勤務体制を変えられなくても、出張や夜勤勤務などがある方はその数をを減らすだけでも楽になるでしょう。

仕事と介護を両立したいと考えているのであれば、まずは職場の上司や人事担当に相談してみましょう。

仕事と介護の両立を支援する制度を利用する

仕事と介護の両立を支援するために政府は介護休業法としてさまざまな支援措置制度を用意しています。

支援措置

介護休業 雇用期間が1年以上の場合、当該対象家族1人につき93日間介護のために休業することができる。3回まで分割取得も可能。
介護休暇 当該対象家族1人につき1年間で5労働日を限度として介護のために休暇を取得することができる(2人以上対象者がいる場合は10労働日)。半日単位でも取得可能。
所定外労働の制限 当該対象家族を介護するために一定の期間(1ヶ月以上1年未満)所定労働時間を超える労働をしないことを請求することができる。
介護休業とは別に、利用開始から3年間で2回以上の取得が可能。
時間外労働の制限 当該対象家族を介護する方は一定の期間(同上)制限時間(1 月につき24 時間、1 年につき 150 時間まで)を超えて労働時間を延長しないことを請求することができる。

参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

参考:改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要

ただ、以上のような措置制度があるものの、

「自分の仕事を変わってくれる人がいなかった」

「介護休業等の制度を利用しにくい雰囲気がある」

などの理由から介護をしている雇用者の9割は両立支援制度を利用していません。

そして利用しないまま介護離職をしていきます。

仕事と介護を両立するのであればこのような介護支援制度をどんどん利用していくようにしましょう。

補足事項:介護休業給付

介護休業を取得した方のうち、以下の条件を満たす方は介護休業給付の対象となります。

  • 家族を介護するための休業をした被保険者で、介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月(過去に基本手当の受給資格の決定を受けたことがある方については、基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けた後のものに限る。)が12か月以上ある方
  • 介護休業期間中の各1か月毎に休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと
  • 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間)ごとに10日以下であること(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)

引用:雇用継続給付

対象の方は介護休業中にそれぞれの賃金月額に応じて介護休業給付を受けることができます。(賃金月額は500,100円が上限、75,000円が下限になります。)

支給額の計算方法は以下のとおりです。

休業開始時の賃金日額×支給日数×67%

参考:大和総研「介護離職の現状と課題」

参考:厚生労働省「介護で仕事を辞める前にご相談ください! 介護休業制度等の概要」

介護サービスを最大限活用する

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在宅介護では主に訪問サービスや通所サービス、短期入所サービスなどを利用することができ、これらには介護保険が適用されます。

参考:介護保険が適用されるサービスの種類|利用する際に抑えたいポイントとは?

介護サービスをどれだけ使うことができるかは仕事をしながら在宅介護をおこなううえで重要になってきます。

例えば共働きで子供はまだ学生なので日中の介護は家族でまかなうことができないというような場合もあります。ただ、日中ずっと要介護者を放っておくわけにはいきません。

ご家族が誰もいない日はできる限り介護サービスを利用していきましょう。

家族の誰かが家にいて見守りができるという場合でも、常に家族だけで要介護者の世話をするとなると家族の疲れも溜まってしまうかもしれません。

家族の負担を減らすレスパイトケア(休息)としても介護サービスの利用は重要です。

参考:介護には休息も必要!在宅介護を支えるレスパイトケアとは?

介護保険サービスを利用するためにはまず要介護認定を受ける必要があります。

介護保険の被保険者の方であれば申請することができますので、まずウェブ上またはお住まいの近くの地域包括センター、居宅事業所などで介護保険申請書をもらいましょう。

介護保険サービスを利用するまでの手順について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

参考:【図解】介護保険の申請方法まとめ【要介護申請からサービス利用まで】

「もっと仕事がしたいけど限界かも…」という方

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「仕事と介護の両立がいよいよ限界になってきたけど、仕事は続けたい!」という方はどうすればいいでしょうか。

老人ホームへの入居を検討してみましょう

これまで積み上げてきたキャリアを手放したくないという方や仕事と介護を両立してきたけどもう限界だ…という方は老人ホームへの入居を視野に入れてみましょう。

「つらくても自分が面倒をみる義務がある」

「老人ホームに預けたら周りから良く思われないかも」

老人ホームへ預けることを躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。

しかし近年では「介護は家族の義務」という考えから「介護はプロに任せる」という考えに変わりつつあります。

在宅介護を続けることが難しくなってきた場合は介護保険施設や高齢者向け住宅などの老人ホームに入居させるということも検討してみましょう。

参考:在宅介護はもう限界…施設介護を利用するタイミングはいつ?メリット・デメリットも徹底比較!

「老人ホームに預ける=冷たい」ではありません。自分の生活を第一として考えましょう

老人ホームを預けることに対して少なからず罪悪感を持つ方はたくさんいらっしゃいます。

罪悪感をもってしまう1つの理由として、昔は介護保険制度ではなく、すべて税金で面倒を見てもらう措置制度であったことがあります。

しかし現在は介護保険制度が設けられ措置制度ではなくなりました。

そのため今の50代、60代の方はこのような考えの人はだいぶ減ってきています。

老人ホームに預けることは決して要介護者の方を見放すことではありません。

自分の生活を第一に仕事を続けることで、老人ホームの入居費用を支払って安心して介護をプロに任せ、自分はキャリアを継続させることができます。

これまで距離が近すぎて余裕が持てなかった、優しくなれなかったという方は関係を修復させられる可能性もあります。

老人ホームへ入居させた場合は無理のない頻度で面会に行き、家族の絆を深めましょう。

参考:介護スタッフが答える|老人ホームへの面会に関する疑問をスッキリ解決

老人ホームへの入居を他の家族に反対されるときは…

「自分は老人ホームに入居させたいけど、他の家族が在宅介護でいいと話を聞いてくれない」という状況にある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

このようなケースのほとんどは、実際に介護をおこなっている方以外の家族がその本人の現状を理解していないということが理由となっています。

遠方に住んでいて要介護者と同居していない家族や親類などは実際の様子をしっかり把握することが難しいために施設への入居について反対することが多くなります。

そのためいくら自分たちだけで介護し続けることが限界であると伝えても、反対されることになります。

また、施設に依頼することに反対する方は、実際に介護をおこなっている方よりも強い立場にある方が多いです。

例えば、三男の嫁が要介護者を施設に入居させたいと思っていても、義理のお兄さん達に強く言えないのが現状です。

しかも、それを押し切って施設に入れた場合、何かあれば「それ見たことか!」と嫌味を言われるケースがたくさんあります。

そのような事態を防ぐためにも、限界だから施設に依頼したいと考える前に、普段から他の家族に近況報告をして、介護生活が大変であることを伝えておく必要があります。

そして、遠方の家族であっても定期的に会いに来てもらい、現状を理解してもらうようにしましょう。

それでも家族だけでは現状を上手く伝えられないという場合は、ケアマネジャーさんに協力をお願いし、どれだけ介護が大変かを客観的な立場から説明してもらいましょう。

身内だけでは上手く話がまとまらないことも、客観的立場の第三者が介入することで、上手く話がまとまる場合もあります。

まとめ

「自分の仕事を続けること」「親を大切にすること」もどちらも大切です。

ただし、自分の生活を確保できないまま介護し続け、精神も身体も壊してしまっては元も子もありません。

さまざまな支援制度やサービスをできるだけ使って仕事と介護を両立しつつ、限界だと感じたときには自分と家族の将来にとって1番良いと思える決断をしていきましょう。

 

監修者:陽田 裕也

監修者:陽田 裕也監修者:陽田 裕也

資格:社会福祉士 生活相談員 介護福祉士 介護支援専門員
2001年介護福祉士の養成校を卒業と同時に介護福祉士を取得、翌年には社会福祉主事任用資格も取得した。 2002年から特別養護老人ホームで介護職員として勤務しており、その後、同一施設内で生活相談員や施設ケアマネジャーなどを経験しながら社会福祉士の国家試験に合格した。 現在は副施設長を兼任し生活相談員として相談援助に携わっている。 今後は権利擁護への知見を広げるため、成年後見人養成研修にも参加予定である。